ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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イスラム過激組織のテロから日本を守れ5

2015-02-20 08:57:05 | 国際関係
●日本人人質事件で日本に協力したヨルダンの事情

 ISILのテロリストは、2月1日「どこであろうとおまえの国民が発見されれば殺戮を続けるだろう。日本にとっての悪夢の始まりだ」と、日本国民を脅迫した。現在、海外で生活している長期滞在の邦人は約84万人、うち中東とアフリカ地域に滞在する邦人は約1万5千人いる。次のテロが、中東に限らず、海外の日本人のいるところで行われる可能性がある。また日本国内で行われる可能性もある。日本国民は、ISILからテロ攻撃宣言を受けた。日本人は自らがこうした状況にあることを認識し、団結してテロへの対応を行う必要がある。そこで、ISILを取り巻く中東諸国の事情について、知識を深める必要がある。ISILが勢力を広げる当事国のイラク、シリアについては、別の機会に書いたので、他の国と民族について書く。
 わが国は、ISILによる日本人人質殺害事件で、ヨルダンの協力を得た。ヨルダンについて、中東現代史が専門の臼杵陽(うすき・あきら)・日本女子大教授は、2月4日カサスベ中尉が焼殺された映像が公開された後、次のように述べている。
 「イスラム国が、中尉の拘束をもとに本格的な攻撃対象にした穏健親米国のヨルダンが崩れれば、次にイスラム国はイスラエルへの攻勢を強めるはずだ。イスラエルまで巻き込まれる事態に陥ると、中東地域の更なる混乱、長期にわたる不安定化につながる。ヨルダンは、イスラム国の攻勢を食い止める『最後の砦』であり、国際社会は支援を強化する必要がある」と。
 ISILにとって、彼らの戦いは米欧の西洋文明に対する戦いとして、アラブ諸国をはじめ世界各国のイスラム教徒の一部に共感を呼んできた点がある。だが、今やアラブ諸国の多くが米国をはじめとする有志連合に加わり、ISILは劣勢に陥っている。カサスベ中尉の焼殺は、多くのイスラム教徒の反感を買った。こうした状況でISILがもう一度イスラム教徒の共感を起こし得るとすれば、イスラエルへの反感を呼び起こすことだろう。そのために、今後、ISILがイスラエルへの攻撃を行い、イスラエルを挑発して、アラブ対イスラエルという対立構図を生み出そうとする可能性はあると思う。
 ここで注目されるのが、臼杵氏のいうところのヨルダンの重要性である。ヨルダンは、イスラエル、パレスチナ暫定自治区、サウジアラビア、イラク、シリアと隣接しており、中東の心臓部ともいえる地政学的位置にある。首都はアンマンである。中東の国ではあるが、石油は少量しか産出していない。経済は、リン鉱石やカリ鉱石の輸出、海外からの送金等に多くを負っており、米国・日本・EU等の財政支援なしには、国力を維持できない。最大の援助国である米国の意向を無視することはできない。
 山之内昌之氏によると、ヨルダン国家の住民は、4つの要素から成っている。第1は、ハーシム家の伝統的な藩屏たるヒジャーズ出身のアラブ人とチェルケス人などカフカース出身者。第2は、ヨルダン王国の建設以来、ハーシム家に忠実なヨルダン川東岸の部族に由来する住民。第3は、人口の7割に近いパレスチナ人。第4は、イラク人難民40万に加え70万のシリア人難民である。
 「特にパレスチナ人と難民の存在が、人口630万の国に相当数の難民が流入し、王国の設立に利益のなかったパレスチナ人が多数を占める国家統合の難しさは、アブドラ国王ならずとも想像を超えるものだ。死活なのは、国内で民主化要求を強めるパレスチナ人の圧力を宥めながら、『次はリヤド』と呼号していたISの戦略的目標を『次はアンマン』と言わせないために内政を安定させることだ」と山之内氏は言う。
 リヤドは、サウジアラビアの首都である。ISILは内政不安定な国を狙って戦略的にテロを行っている。ヨルダンの首都アンマンはISILの戦略的目標とされかねない。こうした事情にある国、ヨルダンがISILへの空爆に参加し、空爆への報復としてカサスベ中尉を焼殺され、これに対して復讐の空爆を行うという深刻な関係になっているのである。

 次回に続く。

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2 コメント

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ISIL (dontasu)
2015-02-20 21:27:05
ISILは、モサドが造ってサポートしているという話があります。
現在の状況はモサドにとって好ましい状況です。ISILが、イスラエルを攻撃することは無いと思います。あったとしてもフェイクと思います。
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>dontasuさん (ほそかわ)
2015-02-21 09:48:42
そういう説があることは知っています。スノーデンが言っていますね。発言の真偽はわかりませんが、反政府運動を育成・支援することはアングロ=サクソン・ユダヤ勢力の常套手段です。その育てた組織が独自の意思で動くようになり、コントロールできなくなることもまたしばしば起こることです。
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