ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代の眺望と人類の課題85

2008-12-22 12:58:16 | 歴史
●日米欧を結ぶ三極委員会の設立

 ここでCFRとアメリカ歴代政権の話から離れて、日米欧三極委員会(TC:Trilateral Commission)について述べたい。TCは、1973年(昭和48年)ニクソン政権の時代に設立された。RIIA、CFR、ビルダーバーグ・クラブとともに、現代の国際社会で強い影響力を持つ国際組織である。とりわけわが国にとっては、重要である。

 TCは、日本・北米・ヨーロッパなどからの参加者が会談する私的組織であり、民間における非営利の政策協議グループである。目的は、先進国共通の国内・国際問題等について共同研究及び討議を行い、政府及び民間の指導者に政策提言を行うことである。当初は日本名を「日米欧三極委員会」と称したが、現在は「三極委員会」という。設立時点は、欧米以外からは日本のみが参加したが、現在はわが国以外のアジア諸国も参加しており、単に「三極委員会」と訳すことになったものである。
 TCは、アジア・太平洋、北米、ヨーロッパに設けられた三つの委員会によって、総会が運営される。参加国は委員会の規定では「先進工業民主主義国」とされている。経済問題が協議の中心を占めている。

 TCはニクソン政権時代の1973年、北米、西欧、日本の実業界、金融界、政界の指導者たちで構成された。
 TCの提唱者は、デヴィッド・ロックフェラーである。政治家の道を歩んだネルソンとは対照的にデヴィッド・ロックフェラーは、銀行家の道を歩み、チェース・マンハッタン銀行(当時)の会長となった。この銀行は、1955年(昭和30年)ロックフェラー系のチェース銀行と、クーン・ローブ商会のマンハッタン銀行が合併したものである。1970年代から80年代にかけてはデヴィッドが会長を務めた。その後、2000年(平成12年)にJPモルガン銀行と合併し、現在はJPモルガン・チェース銀行となっている。
 デヴィッドは70~80年代、チェース・マンハッタン銀行の会長として、CFRやビルダーバーグ・クラブで影響力を振るい、またTCを設立して、世界的に活躍した。
 デヴィッドはTC創設時の議長になった。創設に助力したブレジンスキーが北米支部の創立時委員長を務めた。北米支部のメンバーの大半はCFRメンバーでもあった。

●グローバリスト、デヴィッド・ロックフェラーの時代へ

 デヴィッドは、代表的なグローバリストである。すなわち、世界資本主義的な地球統一主義者である。巨大国際金融資本家の立場から、国連・IMF・世界銀行等の国際機関を高く評価しており、これらを資金的・人材的に支援してきた。また彼は1970年(昭和45年)からCFRの議長の座にあり、またビルダーバーグ・クラブは創立時からの常連である。
 1970年代に入り、国際社会で日本が台頭し、欧米だけでは世界を牛耳っていけない情勢になった。そこで、デヴィッドは、アメリカが主導してアジアを取り込み、先進国の共同体を作って世界の支配体制を維持・拡大しようと考えた。そして、ビルダーバーグ・クラブに、経済成長を遂げた日本も加えたらどうかと提案した。しかし、欧州側の一部メンバーから猛反発を受けた。それならば、と独自に設立したのが、TCである。

 当時、デヴィッド・ロックフェラーは、CFRの議長の座にあった。アメリカではCFRへの批判が高まった。それをかわしながらグローバリズムを推進するため、デヴィッドは、自ら新たな国際機関を設立した。それがTCである。欧米志向の排他クラブ的な組織であるビルダーバーグ・クラブに対して、日本を含むのが、TCの特徴である。TCは、欧米の連携だけでなく、日本さらにアジアを取り込み、アメリカ主導で新たな世界秩序を形成しようとするデヴィッドの構想の産物である。
 バリー・ゴールドウォーター上院議員は、著書“With No Apologies”のなかで、TCを「デヴィッド・ロックフェラーの最新の国際密謀団」と呼び、「それは合衆国の政治体制を牛耳ることで、商業及び銀行業一族の多国籍合同の手段にしようとする意図である」と言った。
 次にTCの主なメンバーを挙げておきたい。デヴィッド・ロックフェラー、ブレジンスキー以外には、エドモン・ド・ロスチャイルド、ヒース(英国元首相)、バー(フランス元首相)、キッシンジャー、カーター、ヴァンス、シュルツ、ブラウン等、米欧の有力政治家・銀行家・企業家・マスコミ人が並ぶ。国際政治学者のサミュエル・ハンチントンもTCのメンバーであり、文書編集者を務めた。日本側のメンバーについては、後に触れることにする。

 次回に続く。


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