ほそかわ・かずひこの BLOG

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戦略論37~ジョミニの「戦いの原則」と軍事政策

2022-08-03 10:15:19 | 戦略論
●ジョミニ(続き)

◆思想(続き)

#戦いの原則
 ジョミニは、戦争に勝利するための不変の原理の探究に努めた。その過程で、戦場における幾何学的な戦力の相対的な配置と各々の戦力が持つ後方連絡線の意義について考察した。そして、優れた作戦を立案するに当たって、必ず準拠しなければならない「戦いの原則」があるとして、次の4点を掲げた。

(1)我の後方を掩護しながらも、その戦域の決定的地点または敵後方に対して、我の軍主力を戦略機動によって可能な限り継続的に指向すること。
(2)我の主力が敵の一部と交戦するように機動すること。
(3)戦場において敵を打破するために最も重要な決定的地点または前線の部分に対して主力を投じること。
(4)単に決定的地点に対して我の主力を投じるだけではなく、適当な時期に十分な戦力で交戦する準備を整えること。

 ジョミニの「戦いの原則」の要諦は、内線作戦にある。内戦作戦とは、軍隊が敵に包囲され、または挟撃されるような位置にあって、我が方の全力を以って決勝点に対して単刀直入に攻撃し、速戦即決により各個撃破する作戦である。これと逆の外線作戦は、軍隊が敵を包囲し、または挟撃するような位置にあって作戦することである。内線作戦の原則は、包囲される側が内線作戦で戦力を集中させて、包囲する側の外線部隊を各個撃破したナポレオンの作戦戦略を理論化したものである。
 ジョミニの「戦いの原則」は、その後、多くの軍事理論家によって研究され、20世紀初め、ジョン・フラーによって体系化された。(後に、フラーの項目に書く)

#軍事政策
 ジョミニは、単なる軍事の専門家ではなく、軍事と政治を結ぶ軍事政策について考察し、提案をしている。彼のいう軍事政策は、外交と戦略に含まれない一切を含むもので、国家総合戦略と軍事戦略を連携するものである。彼が望ましいと考えた軍事政策とは、次のようなものである。

(1)国家の指導者は政治と軍事の両方について学識が与えられていること。
(2)また、彼自身が軍を指揮しない場合、その能力に最も優れた将軍を見出すことができること。
(3)常備軍の規模は必要に応じて予備によって倍加できるようにしていること。
(4)戦争に必要な装備や物資を武器庫や補給処に十分に確保し、他国の技術開発の成果も積極的に活用すること。
(5)軍事学の研究を推奨、表彰し、その分野の研究団体に敬意を払わせることで、優秀な人材を確保すること。
(6)平時の幕僚はあらゆる事態に備えて平素から計画を立案し、関係する歴史、統計、地理、理論について研究させておくこと。
(7)攻撃または防御を行う相手国の軍事的能力を判断するための研究に、優秀な士官を充てて、成果があればこれを表彰すること。
(8)開戦となった際に作戦の全局にわたる計画を準備することは不可能であるが、我が作戦が成功するために不可欠な基地機能や物的準備を事前に整えていること。
(9)作戦の構想については彼我の戦争の目的、敵の特性、地域の状況、また作戦で使用し得る戦力、戦争に介入する恐れがある国家の能力などが考慮されること。
(10)国家の財政状況を戦争状態に適応させること。

 クラウゼヴィッツが戦争と政治の関係を述べたことは一般常識にまでなっているが、ジョミニが軍事と政策の関係を考察したことは、あまり知られていない。

◆影響

 ジョミニの軍事思想は、陸軍戦略だけでなく、海軍戦略にも大きな影響を与えた。例えば、アメリカの海軍戦略家アルフレッド・セイヤー・マハンは、内線の優越性等の幾何学的な原理は海戦術にも認められると主張した。

註 この項目は、次のサイトに多くを負っている。
https://militarywardiplomacy.blogspot.com/2016/11/blog-post_52.html

 次回に続く。

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