ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国が「旧敵国条項」を悪用する可能性

2012-12-24 08:44:07 | 国際関係
 産経新聞12月12日号に、東京特派員の湯浅博氏が「日米安保は無効? 国連の『敵国条項』かざす中国の危険」という記事を書いた。この記事は、私が長年書いてきた懸念に触れている。戦勝国が、国連憲章の旧敵国条項を悪用する可能性への懸念である。
 「国連=連合国」は、第2次大戦の戦勝国が作った軍事同盟である。設立は日米戦争中から進められた。軍事同盟であるから「敵国」と戦うための同盟である。そこで、「国連憲章=連合国憲章」には、「旧敵国条項」が定められている。
 この条項は、第2次世界大戦中に連合国の敵国であった国々に対し、地域的機関などが、安全保障理事会の許可がなくとも、経済的・軍事的に強制行動を取り得ること等が記載されている条項である。第53条と第107条である。条文には明記されていないが、旧敵国とは、日本、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7か国を指すと考えられてきた。
 わが国は、「国連=連合国」に加入後、その一員として誠実に役割を果たし、経済復興後は、巨額の分担金を払って、組織を支えてきた。しかし、半世紀以上もの間、一貫して「旧敵国」の地位のまま、現時点でも条文の上では、そうである。アメリカも中国も、ロシアもフランスも、いざとなれば自由に日本に攻め入ってもいいということを堂々と決め、それを半世紀以上も、そのままにしてきたのである。
 昭和45年(1970)の第25回国連総会以来、わが国は、たびたび総会などの場で、国連憲章から「旧敵国条項」を削除すべしとの立場を主張してきた。ようやく平成7年(1995)12月、第50回国連総会において憲章特別委員会の検討結果を踏まえて、削除へ向けての憲章改正手続きを開始する決議が採択された。憲章の改定には3分の2以上の賛成が必要なために、決議によって条項を死文化することにしたものである。しかし、そこから17年もたっているが、削除は実行されていない。旧敵国条項は未だ存在している。わが国は、「連合国=国連」に対する旧敵国という地位に置かれたままである。それゆえ、第2次世界大戦の戦勝国が、この条項を悪用して、日本に対する敵対的な外交や武力侵攻を行う可能性があるのであるーーそこに私の懸念がある。
 冒頭に書いた湯浅氏は、その可能性について書いている。習近平主導体制の中国による悪用の可能性である。
 大意を示すと、次のようになる。

 ――中国の習近平総書記は、就任時の11月15日、復古調の「中華民族の復興」を掲げた。習氏の「中華民族の復興」発言は、楊潔●外相が9月の国連総会で述べた異様な罵(ののし)りの演説に通じる。外相は日本による尖閣国有化に関連し、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べた。「この時、中国側が歴史カードを使ったのは、国連そのものが日独を封じる戦勝国クラブとして発足したことに関係する。国連憲章には日本を敵国と見なす「敵国条項」が残されたままである」「中西輝政氏は、中国がこの敵国条項を『日米安保を無効化する“必殺兵器”と考えている可能性が高い』と見る」「国連憲章の53条と107条は、旧敵国が侵略行動や国際秩序の現状を破壊する行動に出たとき、加盟国は安保理の許可なく独自の軍事行動ができることを容認している」「日本の尖閣国有化を憲章の『旧敵国による侵略政策の再現』と見なされるなら、中国の対日武力行使が正当化されてしまう。中国はこの敵国条項を援用して、日米安保条約を発動しようとする米国を上位の法的権威で封じ込めようとする策謀だ」「中国は国際法上、尖閣が日本の領土であることを覆すことが困難とみたか、国連憲章の盲点を突いて武力行使を正当化しようとする」「習新体制が日本に『華夷秩序』を強要しようとするなら、日本は同盟国と結束して中国を断固抑止する決意を固めたい」―――

 私は、中西氏の洞察は、おそらく当たっていると思う。楊外相が国連総会で日本による尖閣国有化について、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べたことは、単に国連総会の場を使ったプロパガンダではない。周到な研究と計画あってのものと見て、わが国は外交的な対抗策を講じるべきである。
 以下は、湯浅氏の記事。

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●産経新聞 平成24年12月12日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/121212/chn12121207530002-n1.htm
【湯浅博の世界読解】
日米安保は無効? 国連の「敵国条項」かざす中国の危険
2012.12.12 07:53

 何げなく聞き流した中国の習近平総書記が発したスローガンと、その後の行動がどうも気にかかる。
 習氏は総書記就任時の11月15日、復古調の「中華民族の復興」を掲げた。かの中華帝国の伝統理念は「華夷秩序」であり、帝国は外縁に向かって序列の低くなる異民族を統治していく。さらに先月29日、政治局常務委員を引き連れ、北京の国家博物館で列強帝国主義の展示を視察した。この時に習氏は「中華民族復興の目標に近づいている」と巻き返しを宣言した。
 その威勢をかって、軍上層部の発言が強硬になってきた。尖閣諸島も日本の総選挙後に危険度が増してこよう。選挙中は自重して、日本の反中勢力を有利にさせないためだ。
 習氏の「中華民族の復興」発言は、楊潔●外相が9月の国連総会で述べた異様な罵(ののし)りの演説に通じる。外相は日本による尖閣国有化に関連し、日清戦争末期に「日本が中国から盗んだ歴史的事実は変えられない」と述べた。しかし、日本が無主の尖閣諸島を領有したのは1895年4月の下関条約より前のことで、清国が日本に割譲した「台湾および澎湖列島」にも尖閣は含まれない。
この時、中国側が歴史カードを使ったのは、国連そのものが日独を封じる戦勝国クラブとして発足したことに関係する。国連憲章には日本を敵国と見なす「敵国条項」が残されたままである。この時の楊外相発言は、主要国に日本が「戦犯国家」だったことを思い出させ、日本たたきの舞台とみていたのではないか。
 ところが、京都大学名誉教授の中西輝政氏はさらに踏み込んで、中国がこの敵国条項を「日米安保を無効化する“必殺兵器”と考えている可能性が高い」と見る。国連憲章の53条と107条は、日独など旧敵国が侵略行動や国際秩序の現状を破壊する行動に出たとき、加盟国は安保理の許可なく独自の軍事行動ができることを容認している。
 日本の尖閣国有化を憲章の「旧敵国による侵略政策の再現」と見なされるなら、中国の対日武力行使が正当化されてしまう。中国はこの敵国条項を援用して、日米安保条約を発動しようとする米国を上位の法的権威で封じ込めようとする策謀だ。
 この敵国条項については1995年12月の国連総会決議で、日独が提出して憲章から削除を求める決議が採択されている。憲章の改定には3分の2以上の賛成が必要なために、決議によって条項を死文化することにした。確かに、この決議はいつの日か憲章を改定するときがあれば「敵国条項を削除すべきだと決意された」のであって、厳密にはいまも残っている。
問題は中国が同床異夢のまま国際法や国連憲章を勝手に解釈していることである。楊外相は9月の国連総会に続く11月6日のアジア欧州会議(ASEM)首脳会議でも「反ファシズム戦争の成果を日本が否定することは許されず、日本は戦後の国際秩序を否定してはならない」と布石を打つ。
 中国は国際法上、尖閣が日本の領土であることを覆すことが困難とみたか、国連憲章の盲点を突いて武力行使を正当化しようとする。恐ろしいほど冷徹な権謀術数ではないか。習新体制が日本に「華夷秩序」を強要しようとするなら、日本は同盟国と結束して中国を断固抑止する決意を固めたい。(東京特派員)

●=簾の广を厂に、兼を虎に
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2 コメント

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早く、日本は独立を取り戻そう! (月光(A.H.))
2016-01-04 14:45:54
世界のすべての弱小国が独立を果たしているのも拘らず、戦後70年を経過しても、まだ 日本は米国の支配から独立していない。 独立できないのではなく、独立しようと していないというのが確かな言い方です。 先進国でありながら、しかも戦前は米英と比肩する国力を有し、一等国であった日本なのに。
 
世界の常識からは有り得ないことなのですが、何故なのでしょうか。 アメリカの戦略でこのような状況下にあることは確かなことですが、実は日本国内に(反日の日本人、反日のメディア・野党)が、日本の独立を妨げているのです。 彼等は個人主義者であり、古来からの日本の歴史を大切にしません。 国内は勿論のこと、対外的にも(天皇)が日本にとって、如何に大切な存在なのかを全く理解していない人達です。 日教組は天皇制を大切にし 君が代・日の丸を尊ぶべきなのですが、それとは真逆の 反日活動をしています。

本来あるべき日本の心と姿を取り戻すためにも、現在の占領憲法(日本人洗脳化憲法)は破棄し、一日も早く日本人が自らの手で、尊厳ある日本国の憲法を成立させなければなりません。
国連憲章に旧敵国条項は 敗戦国の立場を不利にするものですが、正規に国軍の保有を明記した憲法改正が成し遂げられれば、その時点で(真に日本は独立国を取り戻した)と言えるのです。
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>月光(AH)さん (ほそかわ)
2016-01-05 11:25:49
立派なご意見だと思います。おおむね賛成です。「天皇制」という用語は左翼用語ですので、「皇室制度」を使うことをお勧めします。http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/318cc55e5b9c246ca9a14d72154152df
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