ほそかわ・かずひこの BLOG

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ユダヤ115~戦闘的なシオニスト、ネオコンの活躍

2017-10-17 08:59:15 | ユダヤ的価値観
●戦闘的なシオニスト、ネオコンの活躍
 
 ブッシュ子政権のネオコンは、戦闘的なシオニストである。彼らは、イスラエルを支持し、アラブ諸国を軍事力で押さえ込み、石油・資源を掌中にし、自由とデモクラシーを移植する戦略を推進した。
 ブッシュ子政権におけるネオコンの頭目は、副大統領のディック・チェイニーであり、彼に次ぐのが、国防長官ドナルド・ラムズフェルドだった。ブッシュ大統領やチェイニー、ラムズフェルドをイラクへの先制攻撃の戦略に導いたのは、ユダヤ人のネオコン・グループである。
 この辺は、名著『赤い楯』で知られるわが国のロスチャイルド研究の第一人者・広瀬隆の『アメリカの保守本流』が詳しい。ユダヤ人のネオコン・グループとは、国防副長官ポール・ウォルフォウイッツ、副大統領首席補佐官ルイス・リビー、国防政策会議議長リチャード・パール、国防次官ダグラス・ファイス、ホワイトハウス報道官アリ・フライシャー、大統領のスピーチライターであるデイヴィッド・フラムである。これに保守派の論客ウィリアム・クリストルを加えて、広瀬は「ネオコン7人組」と呼んでいる。彼らは、全員がユダヤ系移民の子孫である。
 「ネオコン7人組」の中心的な存在は、ウィリアム・クリストルである。ウィリアム・クリストルは、1995年創刊の雑誌『ウィークリー・スタンダード』の編集長を務めた。クリストルを中心としたユダヤ人ネオコン・グループはこの雑誌を発信源としていた。彼らはイラクの指導者サダム・フセインを悪の権化とし、アメリカはイラクを攻撃して、米軍がイラクを統治し、中東諸国をすべて民主化しなければならないと主張した。
 ウィリアムの父親であるアーヴィン・クリストルは、ネオコンの創始者ともいわれる。アーヴィンは、1930年代に反スターリン主義の左翼として活動したトロツキスト集団、「ニューヨーク知識人」の一人だった。トロツキズムから反共産主義に転じ、ユダヤ人シオニストとして活動した。1943年(昭和18年)にアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)を創設し、言論活動を行い、若手を育成した。AEIのメンバーには、チェイニーやパールがいる。
 クリストルらのユダヤ人トロツキストに強い影響を与えたのが、ユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントである。アーレントは、ドイツでハイデガーやヤスパースと交友を結んだ。ナチスの迫害を逃れて1941年(昭和16年)、アメリカに亡命した。著書『全体主義の起源』『革命について』等で、アメリカの独立革命は成功、フランス革命・ロシア革命は失敗とし、リベラル・デモクラシーを賞賛して、全体主義との戦いを唱導した。アーレントの共産主義とナチズムへの批判は、ユダヤ人トロツキストにマルクス主義からの脱却を促した。アーヴィン・クリストルは、反共からさらに戦闘的なシオニズムに転じたわけである。
 アーヴィン・クリストルの息子ウィリアムは、1997年(平成9年)にシンクタンク「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」を設立し、会長となった。PNACの設立趣意書には、後のブッシュ子政権の中枢の名前が並んでいた。チェイニー、ラムズフェルド、ウォルフォウイッツらである。
ユダヤ人ネオコン・グループが主催するPNACは、アメリカの軍事革命、及び世界戦略に重大な影響を与えてきた。そして、ネオコンが主導してブッシュ子政権が遂行したアメリカが世界的覇権を確立するための抜本的な戦略転換は、同時にイスラエルの国益に合致し、イスラエルの安全保障をアメリカの富と権力で強化するものだった。ブッシュ子政権の誕生をもって、アメリカ政府をかつてないほどシオニスト化したのである。
 クリストル父子らのユダヤ系アメリカ人は、徐々にWASPの支配層に入り込み、アメリカの政治を大きく左右するほどの影響力を持つに至った。レーガン政権、ブッシュ父政権、クリントン政権を通じて、シオニストのユダヤ系アメリカ人とアメリカの伝統的な支配集団であるWASPとががっちり連携していったと考えられる。
 ユダヤ系ネオコン・グループは、イスラエルの極右政党リクードの党首アリエル・シャロンの政策を支持し、シャロンと密接な関係を持っていた。シャロンは戦闘的なシオニストであり、パレスチナ難民の殺戮を容認し、「ベイルートの虐殺者」と呼ばれる人物である。シャロンは、2001年(平成13年)にイスラエルの首相となった。ここにアメリカ・ブッシュ子政権のネオコン・シオニストとイスラエルの強硬派政府との連携が出来上がった。
 ブッシュ子政権のユダヤ人ネオコン・グループは、アメリカの外交政策をシャロン政権を援護するよう働きかけ、超大国アメリカの軍事力で、イスラエルの安全保障を強化しようとした。アメリカを親イスラエル、親シオニストの国家に変貌させようと図った。アメリカは、イスラエルの安全と繁栄またユダヤ民族の生存と増勢に寄与する国家に変質したのである。
 広瀬隆は、『アメリカの保守本流』に、次のように書いている。「ネオコンがCIAや国務省を無視し、これほどまでにワシントンで力を持つには、誰か大物パトロンからの資金援助がなければならないが、資金はロスチャイルドから出ていた」と。
 ロスチャイルド家とユダヤ人ネオコン・グループを結ぶ人物に、アーウィン・ステルザーがいる。ステルザーは、ニューヨークで投資銀行と金融経済顧問をかねるロスチャイルド社の代表である。彼が経営するロスチャイルド社の親会社は、世界金融界の頂点に立つロンドン・ロスチャイルド銀行である。
 ステルザーは、メディア王ルパート・マードックの「最も重要な資金面の後ろ盾」だと広瀬は言う。オーストラリア生まれのユダヤ人マードックは、猛烈な勢いでイギリスのマスメディアを買収し、さらにアメリカに進出した。有力な新聞・雑誌を押さえ、FOXテレビを創設した。こうしたマードックのメディア買収は、背後にいるロスチャイルド家の対米戦略の一環と考えられる。メディアを使って、自己に有利になるように、アメリカの世論に影響を与えることができるからである。
 ステルザーに話を戻すと、アーヴィン・クリステルらが設立したアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)にステルザーは資金を提供してきた。AEIの後ろには、ロスチャイルド家があるわけである。ステルザーはネオコン・グループの一人、リチャード・パールを、1998年(平成10年)に保守系のシンクタンク、ハドソン研究所の幹部に引き立てた。そして、ブッシュ子政権の国防長官ラムズフェルドの右腕として中枢に送り込んだ。パールは「暗黒の王子」という異名を持ち、サウジの武器商人アドナン・カショーギとの武器売買に暗躍し、ブッシュ子政権をイラク進攻に駆り立てた。「ロスチャイルド子飼いのパールが、ブッシュと米軍を動かしたのである」と広瀬は書いている。
 ステルザーは、ウィリアム・クリストル編集の雑誌『ウィークリー・スタンダード』の編集者を兼ね、同誌を実質支配していたという。広瀬は「世にネオコンと呼ばれる集団は、全員が彼のロスチャイルド人脈だった。これが、好戦的シオニズムとネオコンを結びつけたネットワークである」と述べている。
 ロスチャイルド家がどうして対米戦略を展開し、アメリカの政治に影響力を及ぼそうとするのか。巨大国際金融資本としての事業展開は、当然の目的の一つだろう。それとともに、その行動は、イスラエルという国家の存立と繁栄をめざしたものでもあるはずである。ロスチャイルド家こそ、イスラエルを建国し、支援・擁護してきたユダヤ人一族だからである。イスラエルのシオニストとロスチャイルド家、そしてアメリカのユダヤ人ネオコン・シオニストは、国際的かつ民族的に連携しつつ、超大国アメリカを自らの利益にかなうように、誘導・操作しようとしてきたと見られるのである。

 次回に続く。

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