ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

COP26~人類は気候変動を生き延びられるか2

2021-11-09 10:16:24 | 地球環境
●森林を維持し、メタンの排出を減らす

 COP26は、11月1日から12日までの12日間の日程で行われています。
 11月2日には、首脳級会合を開催しました。100以上の国・地域の首脳が参加し、温暖化対策の強化や途上国への資金支援などを表明。米国や日本など参加した首脳らは、2030年までに温室効果ガスの吸収源となる森林の減少を食い止めるとの共同宣言を発表しました。参加した100カ国超は世界全体の森林面積の約85%を占め、画期的な宣言となります。また、多くの参加国は、二酸化炭素(CO2)より温室効果が高いメタンの排出を30年までに20年比3割削減することで合意したとも発表しました。メタンは温室効果ガスでは二酸化炭素に次ぐ排出量を占め、実現すれば、0.2度の気温上昇を防げる可能性があるとされます。
 首脳級会合の終了後、米国のバイデン大統領は、「私が参加したことで世界がアメリカとそのリーダーシップの役割をどのように見ているかに大きな影響を与えた。率直に言って、中国が姿を見せなかったのは大きな過ちだったと思う」と話しました。COP26に対面式で参加しなかった中国の習近平国家主席を名指しで批判したもの。ただし、軍事力をそう題し続ける中国との関係については、「競争であり、衝突である必要はない」と強調しました。同じく欠席したロシアのプーチン大統領に対しても「世界中の人々やCOP26に参加しているすべての人々に影響を与える力を失った」と批判しました。
 インドのモディ首相は、首脳級会合で演説し、温室効果ガス排出量を2070年までに実質ゼロにする目標を表明。インドが排出ゼロの目標時期を公表するのは初めてです。インドは中国、米国に次いで排出量が世界で3番目に多く、目標の提示は気候変動対策の前進につながります。しかし、日米欧が2050年までに2050年までに実質ゼロにする目標を掲げて取り組んでいるのに対し、インドはその20年先に目標を置くという消極的なもの。世界最大の温室効果ガス排出国である中国やロシアなどは、2060年までとする目標を掲げているので、さらに10年先とするインドの2070年は中露を喜ばせるものです。
 中国・インドは先進国と発展途上国の立場の違いを利用し、自らは発展途上国側に立っています。途上国には、多くの温室効果ガスを排出してきた先進国が温暖化対策でより大きな責任を担うべきだという考えが強くあります。そのため先進国は途上国の対策に資金援助をしています。先進国は2020年までに年間1千億ドル(約11兆円)を拠出し、25年までこの規模を維持すると約束しました。目標は現時点で未達だが、途上国は2026年以降も支援の継続・拡充を求めています。
 COP26で各国が合意した温暖化対策が実行されれば、国際的枠組み「パリ協定」の目標に近づくとした分析結果を、複数の国際機関が公表しました。
 国際エネルギー機関(IEA)の分析結果は、今世紀末までの上昇幅が1.8度になるというもの。ファティ・ビロル事務局長は、この分析結果を「大ニュース」とツイートしつつも、努力目標である1.5度には届いておらず、「もっと(努力が)必要だ」とコメントしました。
 「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)に加わる科学者らの調査機関「クライメート・リソース」の分析結果は、1.9度。パリ協定で「2度を大きく下回る」とした長期目標に近づいたので「歴史的瞬間だ」と評価。ただし、現在の合意だけでは30年頃に上昇幅が1.5度に達するから「道のりは遠い」と指摘しています。

●石炭火力発電をどうするか

 ところで、COP26の議長国・英国は11月4日、40カ国以上が石炭火力発電を段階的に廃止することを目指す声明に賛同したと発表しました。石炭火力が気温上昇の「唯一最大の原因」であり、クリーンエネルギーへの移行を早急に進めるべきだと指摘。先進諸国は2030年代まで、世界全体では40年代までに石炭火力を廃止する方針を盛り込んでいます。既に石炭火力からの撤退を宣言していた英国やフランスなどに加え、ベトナムやポーランドなど23カ国も声明に加わったとのことです。
 ただし、発電コストの安い石炭火力を主要電源とする中国やインド、石炭産業を擁する日本、米国、豪州などは声明に加わっていません。わが国は、2030年度に総発電量の19%を石炭火力でまかなうとしたエネルギー基本計画を10月に閣議決定しました。石油・天然ガスを自国で産出できないわが国は、新たなエネルギー体系に移行するまでの期間、石炭を利用せざるを得ません。わが国は、石炭火力について、環境に配慮した高い技術を持っています。
 以下は、J-Power のサイトよりの要約です。
 石炭が燃焼すると SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、煤塵が発生します。日本は過去40年以上にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行ってきた結果、世界の石炭火力を牽引する存在となりました。日本の石炭火力はSOxやNOxの排出量はきわめて少なく、欧米と比べてもクリーンなレベルを誇っています。
 また、石炭は、同じ電気をつくる場合、燃焼によって発生するCO2は天然ガスと比べると2倍近くになりますが、日本の石炭火力は蒸気タービンの圧力や温度を超々臨界圧という極限まで上昇させる方法で、欧米やアジア諸国に比べ高い発電効率を実現しています。仮に日本のベストプラクティス(最高水準性能)を排出の多い米国、中国、インドに適用した場合には、日本のCO2総排出量より多い約 12億t-CO2の削減効果があると試算されています。
 わが国の石炭火力の継続必要性について各国の理解を得るために、もっとわが国の石炭火力発電の技術の高さをアピールすべきだと思います。

●温室効果ガスの排出削減量取り引きの国際ルールで合意できるか

 COP26は、11月6日で前半が終了し、8日から閣僚級などによる詰めの交渉が始まりました。
 NHKの11月7日のニュースによると、後半は、パリ協定を着実に実施するためのルール作りなどをめぐる交渉が行われます。温室効果ガスの排出削減量を取り引きできる国際ルールや、各国が排出削減の達成状況を国連に報告する共通のフォーマットなどが具体的な論点となるとの見通しです。
 パリ協定第6条は、資金や技術の支援を行って海外の温室効果ガスの排出量を減らした場合、国連の認証を受けて自国の削減分として組み込んだり、政府間や民間で取り引きできるなどの制度を定めました。その制度の実施に向けたルール作りは、2018年のCOP24で議論されましたが、翌年のCOP25でも合意に至らず、パリ協定に基づくほかのルールが合意される中で、パリ協定の「最後のピース」と呼ばれています。
 協議が難航している主な理由は、一部の発展途上国が、京都議定書のもとで認証されていた削減量を、新たな枠組みであるパリ協定のもとでも活用できるよう主張したのに対し、先進国などが新たな削減につながらないとして難色を示し、紛糾したためとされます。また、削減量を支援した国と支援された国で二重に計上しないルールなどもさらなる検討が必要とされてきました。
 このルールが定まれば、企業などが海外での排出削減につながる事業を行うメリットが大きくなって「脱炭素ビジネス」が活性化し、各国の経済成長と気候変動の抑制につながると期待されています。
 COP26で各国が合意点を見いだすことができるのか、パリ協定の「最後のピース」をめぐる交渉は、会期末まで続く見通しと伝えられます。

関連掲示
・拙稿「『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』の衝撃」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09o.htm

 以下、随時掲載。

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