ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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COP26~人類は気候変動を生き延びられるか5

2021-11-24 10:17:01 | 地球環境
 COP26について、杉山大志氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)が、産経新聞11月22日付に大局的な見方を書きました。「中国は何一つ譲らず、完全に独り勝ち」「先進各国は脱炭素で自滅する」という見方です。氏の専門は、温暖化問題およびエネルギー政策です。

産経新聞 2021.11.22付けより
 「COP26のポイントは2つある。まず、中国は何一つ譲らず、完全に独り勝ちだったということだ。2030年まで石炭火力も作り続ける一方、脱炭素化の目標は先進国が50年としたのに対し、中国は60年とするなど結局、所期のポジションから一歩も引かなかった。
 もう一つは、先進各国は50年の脱炭素をCOPの場でも宣言しただけでなく、毎年、進捗をチェックすると自分たちから言い出したことだ。これは勝手に自分たちの首を絞めているようなものだ。先進国は、二酸化炭素(CO2)を減らし、開発途上国にも多大な資金援助をすると約束したが、米国を筆頭に、各国国内で議会の承認を得られる見込みは低い。来年のCOPで早速、進捗を確認するとしたが、ほぼ間違いなく言行不一致で猛烈に糾弾されるのではないか。(略)
 COP26では石炭火力の議論が特に注目されたが、最終的には「段階的な削減努力」との文言にとどまった。英国政府や環境団体は「石炭は終焉」と言いはやして回ったが、そんなことはない。日本政府は、一定割合の石炭火力を堅持する方針だが、それに変更を迫るようなものではない。これは重要な点だ。
 原子力の存在も重要だ。COP26ではあまり話題にならなかったが、フランスや東欧を筆頭に、本当に脱炭素を進めるならば原子力が大事だ、というのが世界的な流れになっている。日本も原発の再稼働はもちろん、新増設や新技術の開発などに乗り出すべきだ。
 現在、世界的にエネルギー価格が高騰し、再生可能エネルギー優先の脱炭素政策は早くも問題が露呈した。現実的に脱炭素を目指すならば、再エネ最優先の考え方を今からでも見直し、原子力のさらなる利用を考えるべきだ」

 杉山氏は、同じ趣旨の記事「COP26閉幕:脱炭素で自滅する先進国を尻目に中国は高笑い」を11月15日付のDaily WiLL オンラインにも書いています。
https://web-willmagazine.com/energy-environment/1C2hs?fbclid=IwAR0whvn9NAN6FEaSz_Ak6eXmgUD7D0U_1oRTYrKDuqEQ92ovQtJnf-1eJSU
 
 私は、杉山氏の「中国は何一つ譲らず、完全に独り勝ち」「先進各国は脱炭素で自滅する」という見方、及び石炭火力と原子力の活用が必要という意見に賛同します。
 ところで、地球環境問題に関する政治家や専門家の見解には、重大な点が欠けています。杉山氏も同様です。中国の環境政策を世界戦略とリンクしてとらえていないことです。中国は、2030年まで石炭火力も作り続ける一方、脱炭素化の目標を2060年としていますが、この環境政策のスケジュールと、世界的な覇権奪取のスケジュールを重ね合わせてとらえなければいけません。
 中国は、「中華民族の偉大な復興」の下に「人類運命共同体」を構築するとして、2035年までに西太平洋の軍事的覇権を握り、2049年の中華人民共和国創設100周年までに世界覇権を握るという方針を打ち出しています。また、この方針のもとに世界最強の軍隊を保有する計画を進めています。特に海軍の増強に力を入れており、中国は既に海軍の艦船の数で米国を抜き、世界最大の海軍を持つに至っています。また、急速に核弾頭保有数を増やし、従来の「最小限の抑止力」の核戦略を変えて核戦力の急速な拡大を図っています。
 ここで中国の地球環境政策のスケジュールと世界的な覇権奪取のスケジュールを重ね合わせると、次のようになります。

・2030年まで石炭火力も作り続ける
・2035年までに西太平洋の軍事的覇権を握る
・2049年までに世界覇権を握る
・2060年に脱炭素化の目標を実現する

 もしこのスケジュール通りに進んだら、2050年の地球は、中国の非協力によって地球温暖化を抑えられず、気候変動による環境の破壊が進む中で、米国をはじめとする先進国は衰退を続け、中国が軍事的・経済的に支配する世界となるでしょう。それを共産党政府は「人類運命共同体」の実現と称し、「中華民族」の繁栄のために、他の国民・民族を利用・搾取し、また生存の危機にさらす恐るべき社会となるでしょう。

関連掲示
・拙稿「『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』の衝撃」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09o.htm

※本稿を含む「COP26~人類は気候変動を生き延びられるか」の全文を下記に掲示しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09.htm
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