ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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COP26~人類は気候変動を生き延びられるか4

2021-11-16 11:19:26 | 地球環境
●合意文書「グラスゴー気候協定」を採択

2021.11.16
 COP26は11月12日までの予定でしたが、交渉は難航。会期を1日延長して議論を続け、11月13日、合意文書「グラスゴー気候協定」を採択して閉幕しました。
 文書の採択を受け、議長国・英国のジョンソン首相は「大きな前進」と表明し、「私たちは石炭(火力発電)を段階的に削減する史上初の国際合意と、(産業革命前と比べた気温上昇を)1.5度に抑える行程表を手にすることができた」と評価しました。
 ブルームバーグの記事は「1.5度に抑えるパリ協定の努力目標を辛うじて踏襲する内容となった」が、「最大の争点の解決は将来に持ち越された」と伝えました。

 以下、各種報道の内容を整理したもの。

◆合意点

・世界の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるという「パリ協定」の努力目標に関して、「努力を追求する」と明記した。議長国・英国の当初案は「努力する」だったが、「努力を追求する」と修正して合意されたもの。
・石炭火力については、議長国・英国が「段階的な廃止(phase-out)」の表記を盛り込むことを目指していた。だが、表現を弱め、「段階的な削減(phase-down)」に変更された。
 採択の直前にインドが、「途上国は貧困撲滅などに取り組まねばならないのに、なぜ石炭を段階的に廃止する約束ができるのか」と当初の文書案に疑問を突き付けた。これに世界最大の温室効果ガス排出国であり、「途上国代表」を自任する中国が同調したことで流れが変わった。
・先進国が技術支援などを通して途上国の温室効果ガスの排出量を減らした場合、その削減量を先進国の削減分として計上できる「市場メカニズム」について合意した。市場メカニズムは、途上国の温暖化対策を促進する狙いがあるが、パリ協定以後、運用ルールが定まっていなかった。6年越しの交渉が決着した。
・先進国から途上国への資金支援では、2020年までに年間1000億ドル(約11兆円)を支出するとした目標が未達成であることについて、途上国側から「約束違反だ」との不満が上がった。文書では「深い遺憾」を表明。先進国が早期に実現することを改めて約束した。背後で中国が途上国に働きかけた。先進国と途上国の対立に中国がつけ込むいびつな構造は、今後の気候変動対策の足かせになると予想される。

◆批判と不満

・今回の合意は中国や米国、インドなど温室効果ガスの主要排出国が向こう数十年かけて約束を守るという前提に依存している。だが、約束を守らなかった場合の罰則はない。
・石炭使用の「段階的な廃止」が「段階的な削減」に変更され内容が後退したことに代表らから反発の声が出た。欧州連合(EU)やスイス、島しょ国の閣僚らが「表現の変更に失望した」と表明した。だが、採択には反対しなかった。
・日本の石炭火力発電の技術は、環境への負荷の少なさで世界最高水準。どうしてわが国は日本の石炭火力発電の技術をCOP26で大いにアピールし、議長国イギリスに有効性を理解させ、米国・中国・インド等に活用を求めなかったのか。
・環境活動家からは、途上国のクリーンエネルギー移行や気候変動対策を富裕国が財務面で支援する取り組みが十分ではないという批判の声がある。極左の活動家は中国共産党と連携していると見られ、中国の姿勢を批判していない。

◆今後の予定

・2022年のCOP27はエジプト、23年のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)で開くことが固まった。

◆COP26の期間の上記以外の動き

・英国などは11月2日、2030年までに温室効果ガスの吸収源となる森林の減少を食い止めるとの共同宣言を発表。参加した100カ国超は世界全体の森林面積の約85%を占める。
・英国は11月10日、全世界の新車販売を40年までに電気自動車(EV)などに切り替えるとの宣言を公表したが、2大市場である米中のほか、日本やドイツも賛同しなかった。

◆1.5度目標達成への見通し

・COP26の合意文書「グラスゴー気候協定」の採択を受け、シャルマ議長は1,5度目標の達成に「望みを残せた」と述べた。だが、達成への道筋はまだ描き切れていない。合意文書は2030年の削減目標を2022年末までに再検討するよう各国に求めたが、「必要に応じて」とのただし書きが付いた。目標達成には、排出量を2030年までに2010年比で45%削減する必要があるとされる。だが、国連の最新分析によれば、各国が掲げる削減目標では30年の排出量は10年比で13.7%増えてしまうという見通しである。
・このまま2030年に至った時は、以後、1,5度目標の達成は極めて困難になるだろう。中国・米国・インド・ロシア等の排出量の多い国が大きく政策を転換し、また先進国と途上国が生存のために協力し合うとともに、脱炭素化を飛躍的に推進する技術の開発・普及なくして、人類が気候変動を生き延びることはできなくなるだろう。

関連掲示
・拙稿「『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』の衝撃」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09o.htm

※本稿を含む「COP26~人類は気候変動を生き延びられるか」の全文を下記に掲示しています。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09.htm
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