ほそかわ・かずひこの BLOG

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現代世界史40~環境破壊・エネルギー危機を乗り越える

2014-09-12 08:44:37 | 現代世界史
●環境破壊とエネルギーの危機を乗り越える

 人類全体のために長期的危機の解決を目指すより、現在の私的な利益を追い求める経済活動は、1990年代から増勢し、狂乱の様を呈した。一方、地球温暖化に対処するため、国際的な取り組みが話し合われ、1997年(平成9年)12月に京都議定書が議決された。議定書によって、2008年(平成20年)から二酸化炭素の削減への取り組みが始まった。この年、強欲資本主義はリーマン・ショックによって、壁に激突した。これを機に、従来の物質的・金銭的な基準による成長という考え方への見直しが、ようやく広まった。
 京都議定書には、世界132ヶ国が参加した。だが、先進国のうち、アメリカとオーストラリアは、批准しなかった。なかでもアメリカは、中南米・アフリカ・中東・オーストラリア・日本・アジアのすべてを合計した以上の量の温室効果ガスを排出している。アメリカの人口は世界の5%だが、世界全体の25%近くの温室効果ガスを出している。一人当たりの炭素排出量で見ても、アメリカがずば抜けて多い。こうしたアメリカが、地球温暖化の問題への取り組みにおいて極めて消極的であることは、この取り組みを大きな限界のあるものlにしている。アメリカが変わらなければ、地球の温暖化は止まらない。
 さらに京都議定書では、インドや中国などの大量排出国が規制対象外となった。その他の削減対象になっていない発展途上国からの排出は続き、かつ急速に増加した。そのうえ、カナダは削減目標の達成を断念するなど、多くの問題が発生した。
 京都議定書は、2013年(平成25年)までの5年間に関する協定だった。それ以降の地球温暖化防止の実効的な枠組みを作る必要がある。だが、ポスト京都議定書については、5年間のうちには結論が出ず、また協議や議論の途中であり、合意の目処は立っていない。地球環境問題では、各国の協調よりもエゴの張り合いという様相を呈している。人類全体としての「持続可能な成長」の枠内で、先進国、途上国、それぞれが「持続可能な成長」のあり方を見出せなければ、海面上昇による主要な巨大臨海都市の水没、凶暴化する台風・竜巻の襲来、一層の砂漠化による農地の荒廃、大気・水・土壌の汚染による健康喪失等によって、人類は衰亡へと向かうだろう。

 温室効果ガスの削減を進めるためには、エネルギー政策の転換が急務である。産業革命以降、19世紀までは石炭の時代、20世紀以降は石油の時代だった。だが、化石燃料は埋蔵量に限界がある。1970年代の初めに、人類はエネルギーの危機にあると報告されるようになってから、自然エネルギーの研究が進められてきた。2008年の世界経済危機によって、自然エネルギーの活用は、世界各国の現実的課題となり、活発に進められることになった。アメリカのオバマ大統領はグリーン・ニューディール政策を打ち出し、わが国でもクリーンなエネルギーを活用する新しい政策が推進されている。太陽光・風力・地熱・潮力等の自然エネルギーの活用による「21世紀の産業革命」が、起こりつつある。いわば石油の時代から「太陽の時代」への転換である。この変化は、人類の文明に大きな変化を生み出す出来事である。
 だが、石油に代わる新たなエネルギーが産業と生活全体を支えられるようになるには、時間がかかる。新興国を中心とした経済成長と人口増加によって、世界全体の石油消費は増え続けている。20世紀の後半から21世紀にかけて、石油・天然ガス等の天然資源の争奪が各地で繰り広げられている。天然資源の確保は、新たな国際紛争の重要な要因となっている。資源問題が改善に向かわないと、世界は安定に向かえない。そのうえ、化石燃料の消費で温室効果ガスが増加し、異常気象が恒常化している。北極の氷や氷河が溶け、各地の大河が干上がり、地下水が涸れてきている。砂漠が拡大し、難民や内乱や戦争を誘発している。
 原子力発電は二酸化炭素を少量しか排出しないが、現在の核分裂による発電技術は、安全性が確保されていない。原発の管理や廃棄物処理が難しく、事故やテロや核兵器転用へのリスクもある。核融合による発電技術の開発研究の進展が期待されている。直接石油燃料に替わるものとしては、トウモロコシやサトウキビを原料にしたエタノール燃料が商品化され、それを利用した自動車も走るようになっている。しかし、食用植物を原料とするバイオ燃料は、食糧価格の上昇をもたらすなど、新たな問題を生み出している。
 これらの問題を乗り越えるため、自然エネルギーの活用への転換を急加速しなければならない。

 次回に続く。

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