ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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現代世界史42~日本から共存共栄の道を広める

2014-09-15 10:30:39 | 現代世界史
●日本から共存共栄の道を広める

 現代の人類は、共存共栄の世界を実現することを課題の一つとしている。共存共栄とは、自然の法則と調和して、個人と個人、国家と国家、民族と民族が共存調和して、共に繁栄することである。
 だが、現代世界で最も強い影響力を持っている価値観は、自己本位で利己的な傾向を持っている。それが、西欧発の文明において形成されたアングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観である。アングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観は、資本主義を生み出した。資本主義は合理的かつ組織的な生産を実現し、人類の欲望を解放した。またこの価値観は、グローバリズムすなわち地球統一主義または地球覇権主義の思想を生み出し、米国政府と巨大国際金融資本がこれを推進している。
 アングロ=サクソン・ユダヤ的な価値観が作り出した経済機構を改革しないと、人類は欲望の増大によって地球を食い荒らし、自滅に至るだろう。だが、この経済機構を改革する方法は、資本主義を全く否定することからは生まれない。合理的かつ組織的な生産を実現した資本主義を改善し、現在の経済機構を利己的・部分的ではなく、人類全体を益するように管理する仕組みを創ることが必要である。この仕組みを作るためには、物質的な発展・繁栄だけを追及する価値観ではなく、自然と調和し、また人間が精神的に成長・向上することを追及する価値観が高揚・普及しなければならない。そうした価値観の発達において、日本的な価値観が重要な役割を果たすだろう。そして日本的な価値観が指し示す共存共栄の道こそ、21世紀の世界人類が歩むべき道と私は考える。
 日本に伝わる共存共栄の道を世界に広めるには、まず日本国が独立主権国家としてのあり方を確立し、その上で日本的価値観に基づく外交を積極的かつ戦略的に展開する必要がある。

 わが国は、今日の国際社会で、国家間関係(international relationship)においてだけではなく、文明間関係(inter-civilizational relationship)においても、地球全体のキーポイントとなる立場にある。そこで、日本文明の特長を良く発揮することが、日本人に求められている。
 ハンチントンは、現代世界には、7または8つの文明が存在すると説いたが、世界の諸文明は、単に併存しているのではなく、大きく二つのグループに分けることができる。二つのグループとは、セム系一神教文明群、非セム系自然教文明群の二つである。
 セム系一神教文明群は、ハンチントンのいう西洋文明、東方正教文明、イスラム文明の三つが主要文明である。私はその周辺文明の一つとして、ユダヤ文明を挙げる。セム系一神教文明群の担い手は、超越神によって創造された人間の子孫であり、アブラハムを祖先とすると信じられている。宗教的には、ユダヤ教、キリスト教、イスラムである。その超越神は、観念的な存在であり、神との契約が、これらの宗教の核心にある。地理学的・環境学的には、砂漠に現れた宗教という特徴を持つ。砂漠的な自然が人間心理に影響したものと考えられる。
 これに対し、非セム系自然教文明群とは、ハンチントンのいう日本文明、シナ文明、ヒンズー文明を中心とする。いわゆる東洋文明はこれである。これらの文明では自然が神または原理であり、人間は自然からその一部として生まれた生命体である。文明の担い手は、自然が人間化したものとしての人間である。宗教的には、日本の神道、シナの道教・儒教、インド教、仏教、アニミズム、シャーマニズムである。地理学的・環境学的には、森林に現れた宗教という特徴を持つ。森林的な自然が人間心理に影響したものと考えられる。
 
 世界の不安定の要因の一つである西洋文明とイスラム文明の対立は、同じセム系一神教文明群の中での対立である。イスラエルの建国後、アラブ諸国はイスラエルと数次にわたって戦争を行い、またアメリカと湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争等で戦っている。また東方正教文明の中核国家だった旧ソ連とはアフガン戦争で戦い、今日は旧ソ連圏のイスラム教徒が中央アジア各地で、ロシアと戦っている。これは、イスラエルやロシアを含めたユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラム文明の対立・抗争である。アブラハムの子孫同士の戦いであり、異母兄弟の骨肉の争いである。
 1980年代以降、アメリカの指導層は、イスラエル政府の外交政策を支持する親イスラエル派やシオニストが主流を占めている。キリスト教保守派の多くは、イスラエルを守るべき国とし、キリスト教とユダヤ教の結びつきは強化されている。ブッシュ政権は、9・11以後、「新しい十字軍戦争」を唱導した。これは、アメリカ=イスラエル連合つまりユダヤ=キリスト教とイスラム過激派との戦いであり、セム系一神教文明群の中でのユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラム文明の戦いである。オバマ政権は、アフガニスタンやイラクからの米軍の撤退を進めているが、中東では争いが憎悪を生み、報復が報復を招いて、抜き差しならない状態となっている。そして、現代世界は、イスラエル=パレスチナ紛争を焦点として、ユダヤ教・キリスト教・イスラムのセム系一神教の内部争いによって、修羅場のような状態になっている。
 このような争いの世界を、調和の世界に導くには、どうすればよいのか。私は、非セム系自然教文明群が、あい協力する必要があると思う。中でも日本文明には対立関係に調和を生み出す原理が潜在する。その原理を大いに発動すべき時が来ている。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「ハンチントンの『文明の衝突』と日本文明の役割」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09j.htm

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