ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

イスラム過激組織のテロから日本を守れ8

2015-02-26 08:48:33 | 現代世界史
●テロ対策のための課題

 日本国民は、深刻さを増しつつある中東情勢を踏まえつつ、1月20日のISILによるテロ攻撃宣言に対し、早急に具体的な対応課題への取り組みを進めなければならない。
 最初に有識者の意見を紹介し、その後、私見を書く。
 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、日本国民に対し、ISILとの戦いに勝たなければならないと説いている。
 「かつてソ連共産党が結成したコミンテルンは世界中の共産党を支部と位置づけ、全世界で共産主義革命を起こそうとしていた。イスラム国も同じだ。日本にもドイツにも、フランスにもイスラム国の支持者がいる。それが緩やかなネットワークでつながり、それぞれの国内でテロを起こさせ、世界イスラム革命を起こすことが彼らの目的となっている。
 日本とイスラム国との戦争はすでに始まっており、敵は日本国内にもいる。昨年にはイスラム国の戦闘員に加わろうとシリア渡航を企てたとして、北海道大学の男子学生らが家宅捜索を受けた。こうした法規違反に関し、日本政府は厳正に対処していくべきだ。
 日本国民は勝つか、消し去られるかという戦争をしている。この戦争には勝たないといけない。今回の事件にひるむことなく、中東支援を続け、イスラム国の壊滅に向けた行動を続けていくべきだろう」と。
 佐藤氏は「戦争」という語で何を意味しているか不明である。現在、わが国はISILと武力行使による国家間の闘争という狭義の戦争を行っていない。また、現代世界におけるテロとの戦いを広義の戦争と呼ぶとしても、それを「勝つか、消し去られるかという戦争」ととらえるのは、過剰反応だろう。私は、過剰反応に陥ることなく、世界的なテロの横行の時代における安全保障体制の強化を図るべきだと思う。
 そうした方向での意見として、まず初代内閣安全保障室長・佐々淳行氏は、首相直属の内閣情報宣伝局(仮称)の創設が必要だと説いている。
 「安倍晋三首相のテロへの際立って毅然とした陣頭指揮は高く評価される。オバマ米大統領をはじめとする先進諸国首脳との電話会談など、危機管理宰相として頼もしい限りだ。『極めて卑劣な行為であり、強い憤りを覚える』と怒りを露わにし、テロに屈しない国家であることを強く主張してきた」。
 「『飛耳長目』とは、松下村塾の吉田松陰が大切にしていた言葉と聞く。山口は安倍首相の故郷である。遠く離れた地の情報を見聞きして収集するという意味の言葉で、内外の情報を収集する機関を表現するのにぴったりの言葉だ。
 しかし現実の日本には、首相直属の積極的情報機関がない。高度な情報能力を有する米CIAや英MI6、独BND、仏DGSE、イスラエル・モサドなどの情報機関に全面的にいつまでも頼っていてはいけない。今回の事件とアルジェリア事件で、首相直属の内閣情報宣伝局(仮称)の創設の必要性を思い知らされた」と。
 次に、元外交官で現在キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏は、セキュリティの強化、国際レベルの情報分析能力を備えた対外情報機関の創設、国家安全保障会議(NSC)と危機管理の分業体制の構築を提案する。
 「今、日本人が考えるべきことは、この事件を政争の具とするのではなく、事件から正しい教訓を汲み取り、さらなる人質事件発生を未然に防ぐためにも、長年の懸案であった“宿題”を処理することではないか」
 「第1は、先に述べたテロのグローバル化現象を踏まえ、日本内外の日本人・日本企業の安全確保について今一度再点検することだろう。今回の事件はシリア国内で起きたが、将来、これが東南アジアや日本国内で起きないとはもはや言えなくなったからだ。
 第2は、国際レベルの情報分析能力を備えた対外情報機関を、既存の官僚組織の枠の外に、早急に設置することだ。現在の外務・警察の官僚的発想だけでは、国際的に通用するインテリジェンス・サービスなど到底作れないと思う。
 第3は、国家安全保障会議(NSC)と危機管理の分業体制を改めて構築することではないか。今回のように邦人保護・危機管理と、国家安全保障が幾層にも交錯する事件こそ、オペレーションと政策立案実施を分けて立体的に実務を処理すべきだからだ」と。
 次に、帝京大学教授・志方俊之氏は、安全保障法制の整備を提案する。
 「国家としての危機管理事案は、個人の拉致・監禁だけではない。集団として拘束され、関係国が軍事的に協力して救出する事案も考えておかなければならない」「自衛隊法には「在外邦人等の輸送(84条3)」という任務がある。輸送の任務に限って自衛隊の艦艇、輸送機、ヘリコプター、車両を派遣することができる」「現地には日本人だけで構成されている企業体などほとんどない。緊急退去を要するのは多くの国籍を持つ人たちである。港湾地区へ通ずる経路が3本あったとして、自衛隊がその1本の経路を警護して輸送し、他の経路を2つの関係国の軍隊が警護するケースは十分に起こり得る。集団的自衛権の行使が限定的にすら許されていない現行の法解釈では、自衛隊員の武器使用の『行動基準(ROE)』は極めて限られている。現場の自衛隊員は入隊時に宣誓した日本国憲法第9条を反芻しながら銃の引き金を引くことになる。国連平和維持活動(PKO)における『駆け付け警護』も同質の問題が起きる。二言目には『文民統制』と言う日本の政治は、今回の事件を機に明確な安全保障法制の整備をすべきだ」と。
 以上の各氏の意見に私は賛成である。

 次回に続く。

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