ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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民主対専制8~自由主義的と統制主義的、通常時と非常時

2021-12-31 08:39:06 | 国際関係
●民主主義の諸相(続き)

・自由主義的と統制主義的
 民主主義には、自由主義的な民主主義と統制主義的な民主主義がある。
 自由主義的民主主義は、自由を価値とし、個人の自由を尊重する。個人の権利として政治参加の権利を認める。 自由主義的民主主義の国家では、構成員は基本的に平等の権利を持ち、選挙や投票によって多数決で意思を決定する。ただし、自由主義的民主主義の国家においても、戦時等の緊急事態において一時的に統制を強化する場合がある。
 統制主義的民主主義は、個人の利益より国家や民族等の集団の利益を優先する。そのため、個人の自由と権利に規制をかける傾向がある。統制主義的民主主義な国家では、集団としての統制を重視し、構成員に政治参加の権利はあっても、権利は制限され、選挙は行われないか、民主的と見せかけるための形式的なものとなる傾向がある。また、選挙での不正、投票への妨害などが行われやすい。
 統制主義的な民主主義の思想には、社会主義に親和的な思想と社会主義に反対する思想がある。前者は、社会民主主義と類似的である。
 旧ソ連の共産党は、自由主義国家における民主主義はブルジョワ民主主義であり、資本家による労働者への階級支配の体制だとして批判した。これに対し、社会主義国家における民主主義は、プロレタリア民主主義であり、階級支配をなくすための民主主義だと主張した。またそのためにプロレタリアート独裁を正当化した。
 ウラディミール・レーニンは、プロレタリアート独裁の制度として民主集中制(democratic centralism)を提唱した。民主集中制とは、共産党員による民主主義的な選挙に基づいて選出された指導部を中心として、中央集権主義的に党組織を運営する体制を意味する。民主的中央集権主義ともいう。旧ソ連圏の共産主義政党及び社会主義諸国家は、これを組織原理とした。その実態は、形式的民主主義、統制主義的民主主義、社会民主主義であり、官僚集団が権力を占有する官僚独裁制となった。
 冷戦終焉後、先進国で唯一、共産党という党名を維持し続けている日本共産党は、民主集中制を掲げているが、党の代表である委員長は党員の自由な選挙で選出されてはいない。志位和夫氏は、2000年(平成12年)に日本共産党委員長に就任して以来、21年間、その地位に在任している。この間、共産党以外の政党では、党首や代表が幾度も交代しており、共産党における長期独裁は際立っている。
 中国や北朝鮮は人民民主主義を国名に盛り込んでいる。だが、共産党や労働党が支配する統制主義的民主主義の国家では、党が労働者階級・被支配階級を代表するとして人民の権利を強く制限しており、実態は専制主義と変わらない。

・民主主義国の通常時と非常時
 自由主義的な民主主義の国家は、通常時には、国民による選挙で選ばれた議員が、議会で討論を行って、多数決で意思を決定する。意思決定においては、少数者の意見も尊重される。決定された意思に国民は従う。国民は自由と権利が保障され、様々な形で政治に参加し得る。
 だが、非常時には、権力を一人または少数者に集中して危機を乗り越える。憲法に非常事態の対応を定めてある国がほとんどであり、その規定に基づいて集権体制を採る。国民の私的権利は一定の制限を受ける。非常時が過ぎれば、元の体制に戻す。
 たとえば、戦時には、国家の主権と独立、国民の生命と財産を守るという国家国民の全体の利益のために、戦時挙国内閣に権力を集中して国難に対応する。個人の自由と権利は一定程度、制限される。これは自由への侵害ではなく、自由を守るための措置である。戦争が終結すれば、元の自由主義的な民主主義に基づく政治に戻る。
 また、別の非常時として、内乱・騒擾や経済恐慌、大規模な自然災害等の緊急事態が生じた場合、通常の議会政治を停止して、政府が強い権限を発揮して、事態に対応する。戒厳令を発令する場合もある。
 こうした非常時に一時的に統制を強化する対応の仕方についても、憲法に定め、その規定に則って対応することにしてある国がほとんどである。戦後の日本の憲法には緊急事態条項がなく、世界的に数少ない例外である。憲法に緊急事態条項がないのは民主主義国として大きな欠陥である。非常時に必要な対応が出来ず、混乱に陥る。またもし政府が超法規的な対応をし、非常時の体制を継続するならば、独裁体制になってしまう。最悪の場合、政府が機能しないのを見て、武装勢力がクーデターを起こして政権を掌握して危機突破のための独裁体制を敷く可能性もある。武装勢力の背後に外国勢力がある場合は、外国の影響下に置かれる恐れもある。こうした事態を防ぐには、憲法に緊急事態条項を設けて、非常時の対応を規定しておかねばならない。

 次回に続く。

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