ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

日本の心32~元寇から日本を守った北条時宗

2021-12-03 10:13:09 | 日本精神
 武士道とは本来、武士の間に形成された道徳です。武士とは、なにより専門の戦闘者です。その直接的な役割は軍事にあります。
 こうした武士の歴史を振り返るとき、彼らの役割が最も大きく発揮されたのが、元寇の時でした。この時、彼らは強大な異民族の侵略から国土と国民を守ろうとして、懸命の努力をしたのでした。
 東北では近年まで、「モッコが来るぞ」という言葉が使われていたそうです。「モッコが来る」と聞くと、泣く子も黙る。それほど恐ろしい「モッコ」とは、蒙古のことでした。13世紀の日本を襲った元寇は、七百年もたった現代まで、恐怖の記憶として伝えられていたのです。
 当時の元は、空前の大帝国でした。世界の3分の2を征服した蒙古は、朝鮮半島を手に治め、次は日本を狙っていました。そして文永5年(1268)、時の鎌倉幕府に使者をよこしてきました。
 幕府は、老齢の北条政村が身を引いて、若い北条時宗が8代目の執権の座についたところでした。この時、時宗は、わずか18歳。日本の運命は、一青年の双肩にかかっていました。
 文永11年(1274)、遂に蒙古軍がやってきました。モンゴルとコリア(高麗)の侵略軍は、対馬・壱岐を攻略し、博多湾から九州に上陸しました。
 彼らは集団戦法のうえに、石火矢や毒矢を使います。日本防衛軍は、源平風の一騎打ちしか知らなかったため苦戦し、多数の犠牲者が出ました。しかし、鎌倉武士は士気を取り戻し、果敢に防戦しました。日本刀による斬り込みを受けた蒙古軍は、夜襲を怖れてか上陸した軍勢をすべて船にもどらせました。
 この夜、不気味な緊張の中で、にわかに暴風雨が起こりました。蒙古軍は多くの船が沈み、行方不明は約1万5千人にのぼりました。結局、コリアの合浦に帰れた船は、九百隻のうち十数隻にすぎなかったといいます。これが世にいう「神風(かみかぜ)」です。
 この後、元のフビライから二度使者が来ましたが、執権時宗は、二度とも使者を斬首しました。このことは武士たちを奮い立たせました。
 若きリーダー・時宗は、超大国・蒙古になんらひるむことなく、毅然としています。 鎌倉にいる時宗の、国の一大事にも微動だにしない豪胆さが、全国の武士の士気を高めたのです。
 蒙古は再びやって来ました。弘安4年(1281)、大軍が日本侵攻に向かって来ました。モンゴルとコリアの軍は、約4万。朝鮮から対馬・壱岐を経て、またも博多湾に上陸します。迎え討つ日本防衛軍は、戦意高く、奮闘を続けました。元軍は半月ほどの後には、博多湾から撤退せざるを得なかったほどです。
 しかし、戦況を変える事態が起こりました。シナから海路で直接日本に向かった約10万の大軍が到着したのです。元軍は、相呼応して博多付近に攻め入り、一気に勝敗をつけようとしました。
 が、作戦開始のまさにその時です。再び台風が起こったのです。その日は、閏(うるう)7月1日、すなわち、太陽暦8月23日のことでした。元軍の艦隊は、鷹島(伊万里湾口にある島)において、台風によって、壊滅的な打撃を受けたのです。「元史」には「十万ノ衆、還リ得タル者ハ三人ノミ」と記されています。二度目の「神風」でした。
 こうして、日本は、外敵から守られました。
 二度とも台風が吹いて、元の侵略から日本が守られたことは、偶然とは言い切れません。このことから、わが国は「神国」であり、国の危機には神風が吹いて国が守られるという観念が、国中に広まりました。しかし、見逃してならないことは、日本防衛軍が元軍の侵攻を防ぎ、2ヶ月近くも上陸を許さなかったということです。時宗以下、日本武士の必死の防衛努力があったからこそ、台風の季節が到来し、絶妙な天の助けを得られたのです。
 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるように、人間が最善の努力をしてこそ、天に通じ、「神風」も吹くのです。
 逆に、道から外れ、正しい努力を怠ったならば、天佑神助を得られるとは限りません。大東亜戦争は、それでありました。
 国難が去ったとたん、時宗は、34歳の若い生涯を閉じてしまいます。まるで蒙古の略奪・支配から、この国を守るためだけに、この世に生まれてきたような時宗でした。
 また、時宗の指揮の下で、日本の武士たちは、武人としての役割を最大限に発揮したのです。
 私たちの国・日本は、多くの先人たちによって守られてきたことに感謝しましょう。そして、武士道に学び、自ら国を守るという精神を取り戻しましょう。

 次回に続く。

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