ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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民主対専制7~直接民主制と間接民主制、形式的と実質的

2021-12-29 10:26:52 | 国際関係
●民主主義の諸相(続き)

・直接民主制と間接民主制
 民衆の政治参加には、直接参加する直接民主制と代表者を通じて間接的に参加する間接民主制がある。
 古代ギリシャの都市国家(ポリス)における民主主義は、市民による直接民主制だった。近代西欧の民主主義は、代表制による間接民主制である。17世紀イギリスでピューリタン革命、名誉革命を通じて実現した。これに対し、フランスのジャン・ジャック・ルソーは、代表制を否定し、直接民主制を主張した。だが、直接民主制は、構成員の少ない集団でのみ可能である。一定規模の人口を持つ国家では、国政に直接民主制を取ることは不可能であり、基本的に間接民主制が採られている。そこに国民投票・住民投票等の限定的な形で直接民主制の要素を採り入れている例がある。
 間接民主制において、政治参加の重要な方法に選挙がある。選挙においては、有権者が自由に立候補できる参政権と自由に投票できる選挙権が保障されねばならない。また投票には、権力による妨害や不正があってはならない。民主主義を標榜する国家であっても、自由な参政権と公正な選挙が行われていない国家は、自由主義的な民主主義の国家ではない。

・形式的民主主義と実質的民主主義
 近代民主主義は、選挙の他に憲法・議会、併せて3つを最低限の要素として持つ。いずれもイギリスで発達した。憲法は、君主の権力を規制するために、君主と貴族や庶民の間で結ばれた約束が法規範となったものである。議会は、君主と貴族の話し合いの場だったところに庶民も参加するようになった。選挙は、有権者が代表者を選ぶ方法として発達した。
 以後、君主制の国家の多くでは、民衆の政治参加を求める運動を抑えきれなくなると、憲法・議会・選挙を制度として採り入れた。その過程で、民衆の運動が過激化した国では、君主制が打倒され、共和制に移った。その結果、現在の世界では、君主制か共和制か、また民主主義か専制主義かに関わらず、ほとんどの国が憲法・議会・選挙を政治制度の要素としている。
 だが、憲法・議会・選挙は、民主主義の形式面である。その形式に実質が伴っているかどうかが重要である。民主主義には、形式的民主主義と実質的民主主義がある。制度として憲法・議会・選挙が存在するだけでは、十分ではない。民衆の政治参加が実質的に実現しているかどうかに、民主化の度合いの違いが現れる。
 民主主義が機能するために不可欠なのは、国民の自由と権利の保障である。西欧における市民革命は、信教の自由を守ることから始まった。宗教的信仰の自由は、思想・良心の自由と関連する精神的自由であり、それが保障されるところに民主主義が発達する。また、表現の自由すなわち言論・集会・結社・出版その他の自由が重要である。表現・言論の自由が抑圧されて政権への批判が許されず、国民に情報を伝える報道が規制されている状態では、民主主義は実質的に機能しない。また、集会・結社の自由が抑圧されて、集団的な話し合いを行うことが出来ず、意思表示(デモ等)が禁止されている状態でも、民主主義は実質的に機能しない。中国・北朝鮮等の国は、民主主義を標榜していても、言論・集会・結社・出版等の自由が抑圧されており、真の民主主義とは言えない。
 特に議会の役割が重要である。憲法に議会の設置が規定され、議員が選挙で選ばれて、議会が運営されているだけでは、形式的である。議会において自由な討議が行われるかどうかで、単に政治への形式的な参加による形式的民主主義と、政治への実質的な参加を伴った実質的民主主義であるかが分かれる。討議においては、政権への批判が許されねばならない。政権への批判を含む「討議による統治」を実現する場が、議会である。
 議会における自由な討議を経たうえで、集団としての意思決定をする際には、多数決を原理とする。一般に発達した民主主義の体制においては、多数者による合意を実現するとともに、少数派の意思への配慮が求められる。ただし、少数者の意見の尊重が行き過ぎて、多数者の権利が侵害される事態になると、民主主義は機能しない。組織として意思決定の出来ない集団になってしまうか、少数者による独裁という逆転現象が起こってしまう。

 次回に続く。

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