ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米中が競う東南アジアと日本の外交5

2013-01-15 10:05:39 | 国際関係
●再選されたオバマの対東南アジア外交

 平成24年(2012)11月6日、オバマ大統領は再選された。大統領はタイ、ミャンマー、カンボジアの3カ国を、再選後初の外遊先に選んだ。このことは、2期目もアジア太平洋重視の方針を堅持することを示したものである。
 オバマ氏は、11月17日~20日の日程でタイ、ミャンマー、カンボジアを訪問した。18日、最初の訪問先となるタイでは、インラック首相と両国関係の強化を確認した。この日オバマ大統領は、記者会見でミャンマーについて触れ、「ビルマ(註 ミャンマーの英語名)が民主主義を達成し、求められているところに到達したという幻想は、誰も抱いていないと思う」「しかし、完全な民主主義を達成するまで待つのは、途方もなく長い時間待つことになるのではないか、と思う」と述べ、「今回の訪問の目的の一つは、これまで成された進展を強調し、将来、一段の大いなる進展が必要と表明することだ」と語った。
 翌19日、オバマ氏は現職の米大統領として初めてミャンマーを訪問した。オバマ氏は、スー・チー氏を自宅に訪ねて会談した。スー・チー氏の肩を抱いて微笑むオバマ氏の写真は、ミャンマーの民主化と米国の関与を強烈に印象付けた。オバマ氏はまたテイン・セイン大統領と会談し、テイン・セイン大統領が進める一連の改革を支持し、改革継続への支援を表明した。また今後2年間で1億7千万ドル(約138億円)の援助を行うことを表明した。援助は、民主主義の促進や教育、人材育成といった分野に重点を置くとした。一方で、少数民族を巡る問題や人権状況の改善についても一層の取り組みを求めた。市民との対話の機会も持ち、米国がミャンマーの民主化を一層後押しする方針を伝えた。オバマ氏のミャンマー訪問は、ミャンマーを中国から引き離し、自由民主主義の勢力の側に引き付ける外交をさらに大きく前進させるものとなった。
 続いてオバマ大統領は、カンボジアを訪問した。カンボジアも、現職の米大統領が訪問するのは、初めてだった。プノンペンでは、東アジアサミット(EAS)を含むASEAN関連首脳会議が開催された。EASに出席したオバマ氏は、中国と東南アジア諸国が争う南シナ海の領有権問題に関し、「航行の自由」を強調しつつ、海洋安全保障の「行動規範」の確立を働きかけた。
 この時の一連のASEAN関連首脳会議で、東南アジアにおける米中の対立が一段と鮮明になった。南シナ海問題について、オバマ大統領は「多国間の枠組みでの解決」を主張した。日本は米国と連携し、野田佳彦首相(当時)が「国際法の順守」を訴えた。一方、中国の温家宝首相は「あくまで2国間で解決すべきだ」と従来の姿勢を繰り返した。中国は多国間協議を拒否し、個別撃破の政略を取っている。中国の反対により、南シナ海の紛争回避に向けた「行動規範」の策定協議入りは先送りされた。
 今後も、東南アジアで米中の競争は続く。その焦点の一つはミャンマーである。わが国はミャンマーへの支援で米国と連携している。野田氏は「500億円規模の円借款を来年(註 25年)に実施する」と直接、テイン・セイン大統領に伝えた。日米が経済支援を通じて、ミャンマーをより一層中国から離れさせ、日米等の自由民主主義の側に引き込んでいく意義は大きい。中国の東南アジアでの覇権主義を制し、押し返すものとなるからである。

 次回に続く。