風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「TRY48」

2023-03-07 | 読書

奇想天外、奇々怪々、抱腹絶倒、阿鼻叫喚
場面設定も突飛なら、ストーリー展開も自由奔放。
登場人物たちも奇怪で、読み初めは大いに面食らった。
なにせ寺山修司や東由多加をはじめ、
お腹や首筋に傷が残る三島由紀夫まで出てくるのだから。

でもね、読み進めるとその裏に重いテーマが横たわっていた。
アイドルデビューしたメンバーたちは
現代社会の底辺で様々な理由で苦悩している人々だし、
ドタバタ劇には隠された意味がある。
最後まで読んでそれらがわかる。

それにしても著者が持つ膨大な知識には心から驚いた。
天井桟敷や状況劇場のエピソードからサリンジャー、ワーグナー、
そしてベンヤミン、藤原定家まで。
特に定家の「存在しないものの美学」には得心。
これって本当に三島由紀夫が書いたの?
最後にはジェンダーの問題を読者に突きつけてくる。
本書はとびきりの奇作だ。

「TRY48」中森明夫:著 新潮社

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コメント
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