世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

行く手に立ちふさがる巨大な壁の向こう側はオランジュのローマ劇場です(フランス)

2012-10-07 08:00:00 | 世界遺産
 川の中州全体に数多くの博物館が密集している場所がベルリンの博物館島でした。この博物館島も第2次大戦では連合軍の攻撃を受けて、多くの博物館、美術館も被害を受けました。特に新美術館は外壁しか残らなかったそうです。一方、ローマの遺跡の中で円形劇場はあちこちに残されていますが、外壁がほぼ完全な形で残るのがオランジュの円形劇場です。今回は、南仏プロバンスのオランジュの町を紹介します。

 オランジュは、プロバンスへの拠点になるアヴィニョンの少し北、人口3万足らずのこじんまりとした町です。アヴィニョンから普通列車で20分ほどですが、パリからのTGVは高速新線を経由するので町の西を通り抜けてしまいます。世界遺産のある町として有名ですが、駅からちょっと外れると緑豊かな田舎町です。現在は、このようなひなびた町ですが、12世紀には神聖ローマ帝国の、16世紀から17世紀まではネーデルランド連邦共和国の中の公国でした。オランジュは、フランス語でオランダということで、オランダ王国の皇太子は現在もオラニエ(オランダ語のオランジュに相当)公と呼ばれるそうです。

 
 
 さて世界遺産のローマ劇場と凱旋門ですが、ともにローマ帝国に支配されていた紀元前1世紀から紀元後1世紀にかけての遺構です。まずは、ローマ劇場ですが、駅から1本道を西へ15分ほど、表通りから南に折れると巨大な石の壁が目的のローマ劇場です。地中海沿岸に残されてるローマ劇場の中で、もっとも保存状態の良いものとされ、舞台後方の壁が完全に残っています。壁の中央のくぼみには、1951年に発見されたアウグストゥスの像もはめ込まれています。かなりの高さのある観客席最上段まで上ると、劇場内だけではなく、オランジュの緑豊かな風景の広がりを見ることができます。ただ、このような遺跡が現役の劇場などとして使われるせいか、石の階段席の上に、パイプ椅子のような設備をかぶせているのが無粋です。劇場の西側には遺跡も残されていて、遺跡を借景としたレストランもあるようです。

 
 一方、凱旋門の方は、ローマ劇場から北に曲がってさらに15分ほど歩いて周りの家並みがまばらになった所にあります。自動車道路の延長線上にあって、車は凱旋門の左右を巻いて通っています。できてから2000年以上が経っている門ですが、ガリア人とローマ人の戦闘の模様などを描いた北側のレリーフは、凹凸も深く、角も丸くならず、真新しい印象を残しています。

 
 世界遺産は、この2つしか登録されていませんが、ローマ劇場から凱旋門に行く途中には、伝統的な建物を流用した市役所や、オランジュ・カテドラルなどがあります。カテドラルは、外見は地味な感じですが、ロマネスク様式だと思いますが中はかなり広くて綺麗です。一方の、市庁舎は広場に面した時計台のアル建物で、3万人の人口の役所とは思えない立派さです。以前にも書いたかもしれませんが、日本の役所って味も素っ気も無いコンクリートの巨大な建物ばかりでがっかりします。箱物をたくさん作らないと役人にとっておいしくないのかなとも思ってしまいます。

 オランジュのローマ劇場を使った音楽祭は、真夏にオペラとオーケストラを2プログラムずつ2ステージの8夜だけ催行されるようです。このように屋根の無いオ^プンスペースは、ほとんど残響の無い環境でしょうyから、オーケストラがどんな響きをするのでしょうか。最近のホールでは、模型を使ったりコンピュータを駆使して、目的とする残響時間になるように設計がなされているようです。ただ、目的外と思われる用途で使われ、オーケストラの鳴りが悪く不評で有名な公共放送のホールもあります。マイクで拾った音に遅延を与えるなどして、人工的に残響を作ったり、マイクで拾った雑音と逆位相の音を出して雑音を打ち消したり、自由に音場を作れるようになってきています。けれど、世界的に音が良いと定評のある、劇場はコンピュータの無かった頃に建てられたものが多いのは皮肉でしょうか。


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