世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

新しい道路のために人の流れが変わって村全体が昔のまま冷凍保存されたような板井原です

2011-08-21 08:00:00 | 日本の町並み
 北海道札幌の郊外にある江別は、森林公園などのある野幌に市の中心部が移ってしまい、かつての町の中心だったJR江別駅周辺は人通りの少ない寂しい町になっていました。一方、峠越えの旧街道沿いに、江戸から明治期にかけて炭焼きや養蚕で栄えた板井原は、40年ほど前に出来た道路が峠をトンネルで抜けてしまったため、急激に過疎化が進んで人の気配のしない村落になっていました。今回は、平家の落人伝説もある伝統的建物群保存地区に指定される智頭町の板井原を紹介します。

 板井原のある智頭町は鳥取県の東南部に位置していて、山陽と山陰をショートカットする3セクの智頭急行の鳥取側の起点でJR因美線との接続駅のある所です。板井原は智頭駅から、車の行き違いも難しいような山道を5kmほど登って、さらに村落の入り口の駐車場から、川沿いの道を歩いて500mほど遡上したところにあります。村内には100棟余りの民家が残されていて、茅葺や杉皮で葺かれたものなど、かつては日本の何処にでもあったような山村の風景を見ることが出来ます。

 茅葺の山村風景は、このブログでも紹介した京都の美山や長野の青鬼集落が有名ですが、これらの集落の周辺にはかなりの平地が存在しています。青鬼集落の観光写真では、北アルプスをバックにした水田の風景が広がっています。ところが、板井原集落は、家とその庭以外にはほとんど平地が無く、村内の道路も六尺道という狭さです。両側を山に挟まれて押しつぶされてしまいそうな感じがします。

 

  
 こんなに人を見かけない村落ですが、古民家を利用したお食事どころと喫茶店とがあるようで、結構繁盛しているのだそうです。これだけ人が減ってしまうと、産業としては観光客相手の観光業なのかもしれませんが、ずいぶんと控えめの感じもします。多くの観光地で見られるように、通りに沿った家並みのほとんどすべてが、お土産屋や食べ物屋に変身してしまっている観光地とは趣が違っているようです。

 
 日本の原風景が冷凍保存されたような、そこの場所の時間だけが止まってしまったような板井原は、どこかの家が重要文化財だとか、温泉があるとかといった目玉のポイントはありませんが、集落を訪れたついでに寄って見るといいところを2箇所ほど紹介します。一つは集落から石段で登ったところの向山神社で、ここに登ると集落の様子が良く眺められます。もう一つは、集落の入り口付近にある六地蔵で、六地蔵自体は何処でもよく見かけるものですが、このような山奥で見ると、なぜかけなげな感じがします。

 携帯電話は日本全国何処でも使えるように思いますが、山奥に行くと意外と使えない所も多いようです。以前に大内宿に向かう山道で圏外になったこともありました。通話可能範囲を人口カバー率で定義して各社で競う携帯電話の世界では、過疎地に高価なアンテナを建ててもコストに見合う効果が得られないのでしょう。全国の何処でも同じ品質のサービスを提供するというのは、平等かもしれませんが、公平ではないのかもしれません。


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