世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

蔵王の東側には紅花で栄えた町中が蔵だらけの村田がありました

2019-12-08 08:00:00 | 日本の町並み
 温泉地と城下町と蔵王山への登山基地が混在しているのが山形県の上山温泉でした。蔵王には東からもアクセスでき、こちらは宮城県になります。その麓には遠刈田や鎌先温泉などの温泉地もあります、もう少し仙台寄りに、町中が蔵だらけの村田があります。温泉地でも遠刈田のようにこけしの故郷でもないために、全国的な知名度は下がりますが、土蔵造りがこれだけ集中していることでは数少ない町の一つで重伝建の地域にも指定されています。今回はこの村田の街並みを紹介します。

 
 
 
 
 村田町は仙台の中心街から南西に30kmほど、東北自動車道の村田インタからすぐなので、車で移動の方々には意外となじみの地名かもしれません。公共輸送機関で行くとなると、JRの最寄りの駅が無いので仙台からは蔵王へ行くバスを途中下車して40分ほど、東北本線の大河原から路線ンバスで20分ほどかかります。今でこそ人口1万人ほどの忘れられたような町ですが、江戸時代は伊達氏の城下町として、また紅花の集散地として栄えましたが、鉄道が通らなかったと紅花産業が衰退して、忘れ去られ冷凍保存状態になったようです。現在残る土蔵群は、紅花が盛んなりしころの豪商の店蔵と呼ばれる邸宅の名残です。

 江戸時代の交通のメインは水路と海路、つまり船によるもので、陸路では馬などで運ぶのがせいぜいで、大量に物資を運ぶのは困難で、特に遠距離にたくさんの物資を運ぶ場合は船が主流でした。村田宿の紅花は、江戸には阿武隈川の舟運が使われ、上方の大阪には、山越えで最上川に出た後に西回りで運ばれたそうです。紅花は染料や食用として使われ、原産地はアフリカと言われ、日本には5世紀ごろに伝わったようです。江戸時代の主な生産地が山形であったことから村田がその集散地となったようです。紅花の赤色は口紅などに使うと玉虫のようにメタリックな輝きを持ち、高級な化粧品としてもてはやされたようです。紅花の染料としての成分はアニリンで、化学合成で安く手に入るようになったため、現在では化粧品や紅花染めなどの趣味の世界や、食用油としての用途が細々と残っているにすぎません。

 
  
 紅花ではありませんが、町はずれの白鳥神社の境内には樹齢800年という蛇藤があります。そばにはもっと古い樹齢3,000年以上と言われるケヤキもありましたが、筆者の訪れたのは4月下旬で藤野花には少し早かったようです。藤野花の咲く5月中旬には村田の春祭りがあるそうです。この境内には木だけでなく石造りの見ものがあります。それは狛犬で、神社の手前の石段のところには他の神社などでよく見かけるライオンをイメージした、こわもての狛犬ですが、拝殿の両脇に居る狛犬は、なんともかわいらしい狛犬でした。

 
 
 
 
 村田の土蔵造りは、切妻屋根の切妻側を隣の家と接する、いわゆる平入と呼ばれる家が多く、1階部分が店舗で2階に虫籠窓やなまこ壁などを持つ土蔵造りを多く見かけます。店舗部分は、後に改装されてサッシまで入ったものもありますが、細い格子が入ったものが多く、二階部分の重厚さと対照的に軽やかな印象を与えています。また、多くの家には袖壁を持つ立派な門も残されており、東京近辺にあれば、この門だけでも登録文化財になりそうです。先に冷凍保存と書きましたが、街中でほとんど人を見かけず、したがって見苦しい土産物屋や、見世物風に改造した家も皆無です。ただ、このままだとだんだん無住になって朽ち果ててしまうのでは、と心配です。滅びていくのも、一種の美学かもしれませんが、どうも日本人には古民家の美を理解する人が少なすぎるように感じます。

 江戸時代に紅花で作られた口紅は、小町紅という商標だったそうです。美人の誉れ高い小野小町にあやかった命名だったようです。先日、京都国立博物館(京博)で、佐竹本三十六歌仙絵巻展が開催されました。佐竹藩に伝わった絵巻が100年前にばらばらにされて売却され、100年ぶりに31/37の歌仙絵がそろった展覧会でした。売値が高額なために、一人で購入できる限界を超え、海外流出を恐れた益田鈍翁の発案で37枚に分割され売却されたものでした。三十六歌仙の中には当然小野小町も含まれていて、京博にも展示一覧に載っているのですが、筆者が訪れた時には展示替えの翌日、女流歌人は小大君のみでした。ネットで見る小野小町は、佐竹本も含めて、決まって後ろ姿なんですね。「絵にも描けない美しさ」だったからなのでしょうか。AIを駆使して後ろ姿から、前向きの姿を推定してみたいものです。


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