世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

山岳鉄道なのにラックレールを使わないで上ったり下りたりのレーテッシュ鉄道(スイス/イタリア)

2008-07-13 16:47:20 | 世界遺産
 2008年の世界遺産委員会はカナダのケベックで開催され、日本からエントリーされていた平泉は残念ながら登録延期となりました。新規登録は27件ありましたが、今回はそれらの中から、レーテッシュ鉄道を紹介します。レーテッシュ鉄道は、起点の一つのティラーノがイタリア領に属していますが、ティラーノからサンモリッツ、クールなどを結ぶ路線の大部分はスイスを走る山岳鉄道です。

 世界遺産に登録されている鉄道は、オーストリアのゼメリング鉄道、インドのダージリンなどの山岳鉄道群それに指定地域の拡大によるハンガリーのブダペストの地下鉄に続いて4件目の指定になります。

スイスを走る山岳鉄道は、急勾配を克服するためにラックレールを使ったものが多いのですが、レーテッシュ鉄道は、勾配を最大70パーミル(1,000m走って70m登る/降りる)に抑えて、粘着方式で走っています。日本の箱根登山鉄道の最大勾配が80パーミルですから、それより少し穏やかということです。標高2,253mの高さまで、標高差にして1,824mをこの勾配に抑えて上り下りするため、とにかくぐるぐると左へ右へとよく回ります。特に有名なものはブルージオのオープンループ線で、平地に石造りのループ橋が作られています。

ループ橋のアーチの下を越えて、左に270度廻ると、さっき走ってきた線路が真下に見えます。

 頻繁に曲がって進む列車は、どちらに向かって走っているのか、まるで解らなくなります。高みの車窓から眺めると、標高の違うところに走ってきた線路が2本以上も見えることも珍しくありません。

 ティラーノにある駅は、イタリア領の中にあり、すぐ近くにはイタリア国鉄のティラーノ駅もあります。しかし、駅の構内はスイス領扱いで、駅に入る時にパスポートコントロールがあります。ややこしいことに、スイスのルガーノからティラーノまではスイスのバスが走っていて、下車するときにパスポートコントロールは無かったように思います。ティラーノをでた列車はしばらくの間、道路との併用軌道を走りますが、長大な列車が道路の上を走るのは、1両か2両の路面電車が走るのとは違った奇妙さがあります。

 スイスの列車では、レーテッシュ鉄道のサンモリッツとマッターホルン・ゴッタルド鉄道のツエルマットを結ぶ氷河急行が有名ですが、この氷河急行は路線が変わって氷河が見られなくなった氷河急行なのです。かつてはフルカ峠を越える時に、ローヌ氷河の一部が見られましたが、通年運行のためにフルカ峠をトンネルで抜けるようになり、氷河は見えなくなってしまいました。ティラーノを起点とする、レーティッシュ鉄道のベルニナ線では、最も高い地点では森林限界を超え、モルテラッチュ、カンブレナ、パリューの3箇所の氷河を間近に見られます。

これらの景色を楽しむために、氷河急行と同様に窓の大きなベルニナ急行が走っていますが、現在ではこのベルニナ急行こそが氷河急行と呼ばれるべきでしょう。

 日本人観光客には、氷河急行ばかりが有名になり、ベルニナ急行はあまり知られていませんが、クールへ下っていく途中には、有名なランドバッサー橋も渡ります。ただ、列車に乗っていると、トンネルを出て、あっという間通り過ぎてしまい、橋を渡る列車の姿はあまりはっきりとは見られません。

 ヨーロッパの鉄道は、よほどのハイシーズンでもなければ、座席が無いということは珍しいのですが、夏のスイスの名物列車は、予約は必須のようです。筆者が訪問したときには、列車ダイヤを調べるのはWebを利用しましたが、予約はエージェントを使った記憶があります。現在では、予約を含めてネットを使って行えるようになっていると思いますが、国によっていろんなレベルがあるようです。カードで決済をして、乗車後に予約のコードを通知すれよいイタリア、決済後のフォームを印字し、そのバーコードを駅の発券機に読み込ませるカナダなど便利になりました。ただ、乗車駅で手書きの切符しか手に入らない国や、コンピュータ印字された乗車券ではあるものの、乗車駅でしか発券されず、高い手数料を払ってエージェントに手配を頼まねばならない国なども存在します。Webカメラによって、いろいろな場所の映像を見られたり、旅行記を読んだりで、ネットを使った仮想的な旅行は簡単になりましたが、実空間を移動する旅行では、地球の隅々までをインターネットで手配できる仕組みはまだまだ時間がかかりそうです。

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