世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

白漆喰の土蔵造りの酒蔵に混じって真っ白の洋館も建っている佐川です

2011-05-15 08:00:00 | 日本の町並み
 京都の南の桃山丘陵を源とする名水と公家の食文化が発達した消費地を背後に持つ銘酒の産地が伏見でしたが、お魚が美味しくって酒豪が多いといわれる高知という消費地の近くで酒造が栄えた町が佐川です。今回は、高知から西へ列車で30分ほどの小さな町に、造り酒屋の酒蔵が連なる佐川町を紹介します。

 
 佐川町は高知市の西20kmほど、太平洋には面していない内陸の町です。町の中心を高知から伸びる土讃線が北東から南に横切り中心に佐川駅があります。ところが高知から西に向かって走る列車が佐川駅に止まると、方向を180度誤認してしまいます。進行方向を西と思うのですが、路線がアラビア数字の5のような形を描き、高知からの列車は東を向いて停車します。酒蔵が軒を連ねるのは、この東を向いた駅の南側を西に行ったあたりになります。

 伏見の酒蔵は、上部に白壁を少し見せ大部分を板張りとした作りですが、佐川の酒蔵の大部分は、漆喰の塗り込めの壁に水きり瓦がある土蔵造りです。伏見の町並みからは柔らかい感じを受けるのと比べて、佐川のものは、そっけなくって、人を寄せ付けない威圧感を受けます。同じように酒蔵が並んでいても、ずいぶんと町の印象が違うように思います。


 
 ただ、酒蔵の並ぶ通りの一郭にある造り酒屋の店舗はなまこ壁がある建物で、親しみを感じますし、重文の武村家住宅は土蔵造りでも伏見と似て下部に板を配し柔らかい感じの建物になっています。

  土蔵造りの建物に混じって、下見板張りの洋館がぽつんと建っています。旧青山文庫の建物で、明治期に警察署として建てられたものだそうですが、真っ白のしゃれた建物です。周りの重量感のある壁を見てきた目には、軽やかな、さわやかさを感じます。現在は、建物が元あった土地に移設復元され、民具館として利用されるようですが、訪れた時にはお雛飾りがなされていました。

 駅から酒蔵の町並みを抜けたあたりの空き地に牧野富太郎先生生誕地という石碑が立っています。日本を代表する植物学者は、佐川の酒蔵の息子として生まれたのですが、その酒蔵はその後に没落して潰れてしまいました。植物学者と酒屋との二足わらじは無理だったのでしょうか。石碑の建つ空き地は、かつては他と同様の酒蔵が建っていたのでしょう。この石碑のそばに、佐川出身の有名人の一覧があり、それによると佐川を代表する酒蔵の従弟に当たるのが漫画家の黒鉄ヒロシ氏だそうで、お酒の酵母は一芸に秀でた人物をも作り出すのでしょうか。

 阪神淡路大震災の時には、灘の酒蔵がずいぶんと被害に遭いました。建物は再建されましたが、酒蔵に住み着いていた蔵つき酵母は失われてしまい、お酒の味が変わってしまったそうです。かつての酒造りは、寒仕込みとして醸造期間が限定されていましたが、現在では温度コントロールを始め自動化が進んで、年中同じ品質のお酒ができるようになっているようです。ただ、pHや糖度などのセンサー技術は進んでも、最終的な「こく」や「うまみ」それに香りなど、お酒が総合的にかもし出す個性はIT技術ではなく杜氏の技術に依存するように思います。


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