世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

エルジェムは世界で3番目の規模の円形闘技場ですが1番のコロッセオより保存が良くって見ごたえがあります(チュニジア)

2022-01-09 08:00:00 | 世界遺産
 万里の長城の西の端近くにある懸壁長城は、険しい峰に向かって稜線を駆け上る、まさしくグレート・ウォールでした。月から見える唯一の人工的なものは万里の長城という方が居ますが、これは認識不足も甚だしい。確かに長城の長さは1,000kmをはるかに超えますが、幅は数メートル、こんなに細い人工物が肉眼で見えるはずはありません。しかし、これだけの建造物を作ったことは驚くべきことです。一方、西に目をやると古代ローマの建築技術がすごくて、版図の方々に巨大な建造物を残しています。これらの建造物の中から、現存円形闘技場としてローマのコロッセオ、ヴェローナのアレーナに次いで世界3位の規模を誇るチュニジアのエルジェムを紹介します。

 



 エルジェムは、チュニジアの中部で首都のチュニスの南100kmほど、地中海から30kmほど内陸に入って所にある人口2万人ほどの小さな町です。チュニスから列車で2~3時間ほどで到着しますが、本数は少なく、日本で調べた時刻と実際の列車の運行とが食い違っていました。人家があるのは駅周辺と、そこから延びる円形闘技場への道の周辺だけです。砂漠の日没と夜明けを見たかったので、4駆の車をチャーターして前日は砂漠のオアシスのクサール・ギレンで泊まり、砂漠を突っ切って半日がかりでエルジェムに移動しました。途中は全く人けのない荒野、砂漠で、エルジェムは少し大きなオアシスのようでした。ただ、エルジェムが完成した当時は、オリーブの茂る緑豊かな街だったのだそうです。

 
 列車の駅から円形闘技場までは500mくらいで、駅からしばらく進むと闘技場が巨大な壁のように立ちはだかって見えてきます。この道を夕方に通ると、昼間とは違った雰囲気に驚きます。チュニジアは緯度的には日本と変わりませんが、熱帯性の気候で昼間は動きたくなくなる暑さです。夕方からは少し涼しくなるので、昼間は閑散としている通りに、椅子を並べて人々が夕涼みに出てきて、通りにくくなるくらい混雑します。イスラム世界ですからアルコールはご法度なので、アルコール以外のものを飲みながら談笑しています。ところが、ここはイスラム世界ですから、全員男性です、カミさんと2人で横切っていくのはちょっと不気味でもありました。





 
 
 
 
 
 さて、円形闘技場ですが3世紀に古代ローマによって作られ、規模はローマのコロッセオより小さいのですが、観客席やその裏にある回廊、さらにはアリーナなどが奇麗な形で残り、観光客に公開されています。さらに17世紀までは、もっと完全な形で存在していたようで、オスマントルコとの戦闘で大砲を撃ち込まれて破壊されたり、モスクなどを建てるために石材の一部が転用されてしまったそうです。駅の方角二当たる東側は連続アーチの建物が残っていて、外から見ると三段のアーチが水道橋のようですが、他の方角は観客席の上方はほとんど残っていないところが多くなっています。逆に連続アーチのある部分は、株にあるはずの観客席が失われているようです。

 
 
 円形闘技場の他に、モザイクを集めた博物館が闘技場から15分ほど南に行った所にあります。1971年に開設され、エルジェムで発掘されたモザイクや大理石の彫像が展示されています。博物館の敷地内にはコダイローマの住居跡もあって、円形闘技場だけでなく寄り道する十分な魅力があります。筆者が訪れた時には、円形闘技場の入場券でそのまま入館できました。

 
 エルジェムでは円形闘技場のライトアップも見られゆっくりできたのは、駅前のホテルに泊まったからでしたが、現在は4つ星の立派なホテルになっているようですが、当時は冷房もなく扇風機だけというホテルでした。それでも、エルジェムで数少ないホテルだったのでしょうか結婚披露宴らしきパーティーが開かれていて、冷房で開け放した部屋では夜遅くまで騒々しくって閉口しました。この披露宴でも、「ここはイスラム世界だ」を感じたのは、パーテイーに参加しているのは新郎と男性ばかり。

 古代ローマの建築技術は驚くばかりの高さで、都市に水を供給した水道の傾斜は平均で1kmあたり5m、フランス南部にある水道橋ではポンヂュガールでは驚くなかれ1kmあたり34cmという傾斜です。当然ながら、当時にレーザによる測量技法は存在しなかったわけです。一方、わが国では、巨大な木造建築は現在の技術では作れないのだそうで、コンピュータなどの技術の粋を駆使してもです。高野山の根本大塔もコンクリート造りで再建され、最大の木造大塔は16世紀に作られた根来寺大塔なのです。技術というものは常に発達しているのではなく、退化している部分があることを思い知ります。


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