昨日に続いて、昭和11年発行の『尋常科用 小學國語讀本』から、第十課「縁日」を紹介します。縁日の夜の賑やかな情景が綴られています。
第十 縁日
月の八日は御縁日。
夜のあかりに美しく
並ぶお菓子屋おもちや店
ぴいと鳴るのはゴム風船。
涼しい風にくるくると、
まはる五色の風車。
客を呼ぶ声笑ふ声、
鉢巻しめたバナナ屋の
身ぶり手ぶりもおもしろい。
そこの木かげは金魚売。
横町曲れば植木市、
寄つてくづれる人の波。
人にもまれて送られて、
観音堂に来てみれば、
香の煙がゆらゆらと。
小さい頃の神社の夜店、映画「フーテンの寅さん」の一シーンを思い出させる文章です。そういえば、神社の境内で、バナナのたたき売りやがまの油売りの大道芸を見たこともありました。声に出して読んでみると、その情景がありありと浮かんでくるようでした。