「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー」(CHALIE WILSON'S WAR、2007米、101分)
監督:マイク・ニコルズ、原作:ジョージ・クライル、脚本:アーロン・ソーキン
トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス
テキサス選出下院議員のチャーリー・ウイルソン(トム・ハンクス)は女たらしのいい加減な政治家のようであったが、政界で生き抜く上のちょっとした情報、コネクション、金づるには長けていたようで、クラブで女たちとジャクジーで遊んでいる最中、ソ連に抵抗するアフガニスタンを報じているTVニュースに注目する。
そして、キーになるのはアフガニスタン抵抗勢力の武器であり、それを秘密裏に供給するCIA予算の不足だと読む。それからが、テキサスの金持ちセレブの女性(ジュリア・ロバーツ)、呼びつけられたCIAが厄介払いのように派遣したギリシャ系の工作員(フィリップ・シーモア・ホフマン)たちとのどたばたしながらの、しかし考えようによっては周到な工作である。特にチャーリーが工作員と会うときの議員事務所の場面が秀逸で面白い。議員の秘書達はそろって美人の女性ばかりで、いかにもという服装でくねくねと歩く。原作はほぼ実話に基づいているそうで、一説によると女性秘書達は「チャーリーズ・エンジェル」の起源だとか(本当かね?)。
その後、危ない橋はいくつか、それも議員生命に及びかねないスキャンダルもあるのだが、それを笑って何とかしてしまうところが、ドラマとして面白い。
そして、絵に描いたように事はうまくいくが、最後、アフガニスタンのこれから平時の子供達に対する支援予算がうまく取れず、その後のアメリカの失敗を暗示して映画は終わる。
といっても、この最後は最低限のエクスキューズで、映画はアメリカの失敗、暗部をえぐることを追求してはいない。
そう、このおかしな議員の振る舞いがうまくいってしまう社会、そのプラスもマイナスも含めて、見るものにゆだねている。それはよく出来た舞台(ドラマ)のようだ。
実はこの映画を見ようと決めたとき、監督がマイク・ニコルズということは知らなかった。この人、深刻すぎないときの方がいいものになる。そういえばワーキング・ガール(1988)の監督だった。
トム・ハンクスは多少違和感はあるものの、あまりうまく演技しようとしてないといころはいい。我慢もあっただろうが。
フィリップ・シーモア・ホフマンはピタリ適役である。
そして、かなりくせの強い金持ちセレブ役のジュリア・ロバーツ、これほどうまくはまるとは思わなかった。この種の役では、あの「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープの上をいくかもしれない。もっとも傑作「ベスト・フレンズ・ウェディング」の高慢な雑誌記者から10年経っているから、もっともか。
チャーリーと秘書達との、言葉少ないスピーディな会話は、脚本の力だ。