メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

二人の夫とわたしの事情 (サマセット・モーム)

2011-02-14 16:45:29 | 舞台

二人の夫とわたしの事情
原作:サマセット・モーム、演出・上演台本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ、翻訳:徐賀世子
松たか子、段田安則、渡辺徹、新橋耐子、皆川猿時、猪岐英人、西尾まり
2010年5月4日(火)シアターコクーン  2010年7月NHKTV放送の録画
 
サマセット・モームはたくさんの劇場台本を書いていて、読んだことがあるのは「劇場」(1937)だけである。こうして翻訳劇の形であれ、ほかの作品を楽しめるのはいい。もっともこっちは1918年、仲の良かった夫が出征して死亡、夫の意を受けたようにその親友と再婚、しかしどうしたことか死んだはずの夫が帰ってきて、二人の夫と生活することになり、もちろんいろいろなトラブルが続き、そこに戦争中の貧窮事情ゆえか、金持ちの求婚者が現れ、、、という展開で、3幕のコメディである。
 
なんという偶然、先の「兵士の物語」も1918年、そしてなんという対照!
 
戦争ということは別にして、ドラマとしては気楽に見られるものになっている。「劇場」はもっと深刻な面があったけれど。 
 
モーム原作というだけなら、放送を見つけ録画もしなかったかもしれないが、やはりそこは松たか子が主役ということが大きい。映画「告白」を見た後だったし。
 
かなり早口にたくさんの台詞をしゃべるのだが、口跡がいいのか言葉はよくききとれ、しかも変に濃い演技になっていないのがいい。色気も適当、チャーミングで憎めない、男の手をするりと抜けてしまう、という感じを実現しているのが見事。
この人を主役にした時点で、この舞台の成功は決まったようなものだろう。
 
最初の夫の段田安則、二人目の渡辺徹もそれぞれのタイプにはまっていて、演技もやりすぎていない。松たか子の母親役新橋耐子は貫禄。
 
もう一つの注目はケラリーノ・サンドロヴィッチだった。演劇界には疎いから、この人について知っているのはあの傑作TVドラマ「時効警察」シリーズでいくつか脚本を書いていることくらい。だからもっと細かいすべりを期待してしまったのかもしれないが、そこはかなりオーソドックスだった。第3幕の途中は少しくどくで退屈で、端折りがあってもよかったか。
 
でも最後の、夫二人が意気投合したところは、その後の映画などでも似たような感じはあったような気がする。こういうものをベースに、いろんなものが出てきたのだろう。
例えば、大好きな映画「夕なぎ」(1972)でロミー・シュナイダーに振り回されたイヴ・モンタンとサミー・フレイが顔を見合すラスト。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 兵士の物語 (アダム・クーパ... | トップ | 琳派芸術 第2部 転生する美... »

舞台」カテゴリの最新記事