goo

Tennyson, "Claribel"

アルフレッド・テニソン (1809-1892)
「クラリベル--歌--」

1
クラリベルが深く眠るところ、
そよ風は止まり、死ぬ。
薔薇の花びらも落ちる。
厳かな樫の木はため息をつく。
葉を茂らせ、香りを放ち、
遠い昔の歌、
内なる激痛の歌を口ずさみつつ。
クラリベルが深く眠るところで。

2
夕暮れに甲虫(かぶとむし)が音を立てて飛ぶ、
誰もいない茂みを横切って。
真昼に野の蜂が音を立てて飛ぶ、
苔の生えた墓石のまわりを。
真夜中に月が来て、
ただひとり見おろす。
鶸(ひわ)の歌はしだいに大きくなり、
鶫(つぐみ)も透んだ声で歌い、
毛の生えそろわないその雛(ひな)も舌足らずに歌い、
眠たげな波が流れ出し、
小川は泡立ち、渦巻き、
誰もいない洞穴も応えて歌う。
クラリベルが深く眠るところで。

* * *
Alfred Tennyson
"Claribel: A Melody"

1
Where Claribel low-lieth
The breezes pause and die,
Letting the rose-leaves fall:
But the solemn oak-tree sigheth,
Thick-leaved, ambrosial,
With an ancient melody
Of an inward agony,
Where Claribel low-lieth.

2
At eve the beetle boometh
Athwart the thicket lone:
At noon the wild bee hummeth
About the moss'd headstone:
At midnight the moon cometh,
And looketh down alone.
Her song the lintwhite swelleth,
The clear-voiced mavis dwelleth,
The callow throstle lispeth,
The slumbrous wave outwelleth,
The babbling runnel crispeth,
The hollow grot replieth
Where Claribel low-lieth.

* * *
森のなかのクラリベルの墓。そのまわりの草木、
虫、鳥、川など、自然界のものたち。

ワーズワースの(「心が眠り、封印されていた」)とは
別のかたちで、死んだ人間と自然の関係を歌う。

このワーズワースの詩が描くのは、死んで動かない
人が地球上の石や木などとともにまわるようす=
人と自然が一体化しているようす。

「クラリベル」の場合、樫の木のため息までは
ひとり静かに眠る彼女にそのまま重なるが、
それ以降は、正反対に動的で音が響く描写と
なっている。その結果、クラリベルと自然の関係に
ついていろいろな連想がかきたてられることに。

自然=クラリベルの内なる激痛、など。

* * *
内容に加えて、この詩のポイントは、リズムと音。

ブレイク、バイロン、シェリー以降のストレス・ミーター
(四拍子)の詩は、各行のストレスの配置や母音・子音の
並びを操作して、独特の雰囲気をつくろうとするようになる。
(ベン・ジョンソンのような歌のつくり方への回帰。)

そこから、さらにテニソンは、あえて四拍子が
感じられないところまでリズムを崩しはじめる。



拍子B(= Beat)を二段にわけて記した行については、
上の段が一定の早さの四拍子にのせた読み方。
これに対し、実際に口に出して読んだときの印象は、
下の段のようになるはず。もはや四拍子ではなく、
ただ独特のリズム・雰囲気をもつ散文のように聞こえる。
カタカナで書いたときの「ポエム」のような。

そんな詩をあえて "A Melody" と呼ぶところにテニソンの
自信と自負が読みとれる。

* * *
英語テクストは、The Early Poems of Alfred
Lord Tennysonより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8601

* * *
https://drive.google.com/file/d/17HiT0A8XD2-k7ePZwMrrczZs0wgjBCAi/view?usp=sharing
GT: 曲、ギター、声
M: 曲、ピアノ

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )
« 上野公園 (4... 上野公園 (5... »