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Rochester (tr.), from Seneca, Troas, act 2

ジョン・ウィルモット、二代ロチェスター伯 (1647-1680) (訳)
セネカ 『トロアス』 第2幕より

死の後には何も残らない。死とは無のことである。
それは、命の境界を示す最後のひとあえぎ。
あつかましくも熱い信仰をもつ者たちは棄てるがいい、
天国の望みなど。そう信じることは、傲慢にすぎない。
奴隷根性をした者たちは、恐れなど棄てるがいい。
気にするのをやめるがいい、この生の後、
魂がどこに飛んでいくか、など。
死んだら、わたしたちは粗大ごみのようになり、
物質の山に掃き集められ、
破壊されたものや、これから生まれるものと、いっしょになるのだ。
命をむさぼり食う〈時〉がわたしたちを丸のみし、
〈死〉の帝王が、からだと魂をごちゃまぜにする。
地獄や、そこで永遠に燃える牢獄を支配する
恐ろしい悪魔などは、
悪党があみ出して、愚か者が怖がるフィクションである。
残虐な地獄の番犬なども、
みな意味のないつくり話、くだらない嘘、
夢、ただの思いつきで、それ以上のものではない。

* * *
John Wilmot, Earl of Rochester (tr.)
From Seneca, Troas, act 2

After Death nothing is, and nothing Death;
The utmost Limits of a Gasp of Breath.
Let the ambitious Zealot lay aside
His Hope of Heav'n; (whose Faith is but his Pride)
Let slavish Souls lay by their Fear,
Nor be concern'd which way, or where,
After this Life they shall be hurl'd:
Dead, we become the Lumber of the World;
And to that Mass of Matter shall be swept,
Where things destroy'd with things unborn are kept;
Devouring Time swallows us whole,
Impartial Death confounds Body and Soul.
For Hell, and the foul Fiend that rules
The everlasting fiery Goals,
Devis'd by Rogues, dreaded by Fools,
With his grim griesly Dog that keeps the Door,
Are senseless Stories, idle Tales,
Dreams, whimsies, and no more.

* * *
というようなことを書き、放蕩乱倫のかぎりをつくした
ロチェスターだが、性病と、水銀を用いるその(誤った)
治療による死に際して、おおいに悔いあらためたという。
自分が書いた作品はみな燃やしてくれ、などといって。

(これが美談・教訓話としてあまりにも広められてきたので、
その事実性を疑う者もいる。)

* * *
最後の二行が妙に繊細に響く。たとえば、
「永遠の愛なんて嘘」という表現と同じように。

* * *
個人的には、キリスト教・仏教などのように、
個人の信仰をこえて、文明・文化の根幹となってきた
宗教について重要なのは、ひとつひとつの細かい教義
ではなく、社会においてはたしてきた教育的・道徳的
役割ではないかと思う。

さまざまに異なる国や文化のなかで、それぞれ
「正しいこと」の存在を保障・保証してきたもの、
善悪の基準を提供してきたもの(のひとつ)が、
宗教、という。

* * *
詩としては、散文的な弱強五歩格と
ストレス・ミーター(四拍子)が混在。
(カウリーのピンダリック的。)

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/eightlit/
rochester/afterdeath.htm

* * *
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