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From Dryden, Palamon and Arcite, bk. 3

ジョン・ドライデン (1631-1700) (翻案)
『パラモンとアーサイト』 第3巻より

言葉ではあらわせません、
ぼくが、心に苦しく、感じていること、
あなた、もっとも愛しく大切なあなたを、思いながら・・・・・・。
あなたに仕えるよう、魂だけ残していきます。
この体が死に、そこから自由になった
ぼくの魂に、あなたのお供をさせてください。見えないものですし、声も立てませんので。
昼間にあなたを恐がらせたりはしません。夜、あなたの眠りを妨げたりもしません。
ただ、お仕えしたいのです。どこにいても、あなたのお供がしたいのです。
本当にあなたが好きでした・・・・・・。うまく話せなくて申し訳ありません。
もう体が弱っていて、しかも、とても痛いのです。
信じてください。ぼくが死にたくないのは、
美しいエミリー、あなたを失いたくないから、それだけです。
天があなたをぼくに与えてくれた、まさにその時に死ぬなんて、
これ以上意地悪な〈運命〉があるでしょうか!
ねたみ深い〈運〉がもたらす、これ以上の呪いがあるでしょうか、
命を得たその瞬間に死ぬなんて!
人間とは愚かなものです。うつろいゆく幸せを求め、
恋に熱くなったりしながら、気がついたら墓のなかで朽ちはてていく。
二度と日の目を見ることもなく!
棺のなか、永遠に暗く湿ったところで、永遠にひとりきり!
これは、誰しも逃れられない運命です。でも、ぼくは
幸せを目の前に死んでいく。幸せを手にすることなく。
さよなら、お元気で・・・・・・。ただ・・・・・・腕に抱いていただけますか?
あなたの美しさを、少しだけでもぼくのものにしたいのです。
あなたの手・・・・・・死なないかぎり、ぼくは、この手を絶対に離さない。
もっと生きたい・・・・・・。生きているかぎり、この手はぼくのものだから!
そろそろ、お別れです。こうして抱いていただいて、
そのまま死ねるなんて、幸せです・・・・・・。

これがアーサイトの最後の言葉だった。すぐに〈死〉がやってきて、
鉄の鎌をふりおろし、彼をわがものとした。
アーサイトはのぼっていく、〈命〉の国に向かって。
感覚が失われていく。〈死〉はふれたものすべてを凍らせるのだから。
しかし、おのずと閉じられてゆくその目を、アーサイトはエミリーから離そうとはしなかった、
少しずつ、彼女は見えなくなっていったのだが・・・・・・。
こうして、何もいうことなく、彼はしばし横たわっていた。
そして、エミリーの手を握る手に力をこめ、ため息とともに、彼は魂を吐き出したのだった。

* * *
John Dryden (trans.)
Palamon and Arcite, bk. 3, ll. 778ff.

No Language can express the smallest part
Of what I feel, and suffer in my Heart,
For you, whom best I love and value most;
But to your Service I bequeath my Ghost;
Which from this mortal Body when unty'd,
Unseen, unheard, shall hover at your Side;
Nor fright you waking, nor your Sleep offend,
But wait officious, and your Steps attend:
How I have lov'd, excuse my faltring Tongue,
My Spirits feeble, and my Pains are strong:
This I may say, I only grieve to die
Because I lose my charming Emily:
To die, when Heav'n had put you in my Pow'r,
Fate could not chuse a more malicious Hour!
What greater Curse cou'd envious Fortune give,
Than just to die, when I began to live!
Vain Men, how vanishing a Bliss we crave,
Now warm in Love, now with'ring in the Grave!
Never, O never more to see the Sun!
Still dark, in a damp Vault, and still alone!
This Fate is common; but I lose my Breath
Near Bliss, and yet not bless'd before my Death.
Farewell; but take me dying in your Arms,
'Tis all I can enjoy of all your Charms:
This Hand I cannot but in Death resign;
Ah, could I live! But while I live 'tis mine.
I feel my End approach, and thus embrac'd,
Am pleas'd to die. . . . . .

This was his last; for Death came on amain,
And exercis'd below, his Iron Reign;
Then upward, to the Seat of Life he goes;
Sense fled before him, what he touch'd he froze:
Yet cou'd he not his closing Eyes withdraw,
Though less and less of Emily he saw:
So, speechless, for a little space he lay;
Then grasp'd the Hand he held, and sigh'd his Soul away.

* * *
チョーサー、『カンタベリー物語』中の「騎士の語」を初期近代の
英語で語り直したもの。上の場面の文脈は以下の通り。

1.
アーサイト(アルシーテ)とパラモンという、たがいに
尊敬しあっていたはずの騎士がエミリー(エミリア)
という女性をめぐって決闘をする。

2.
アーサイトが勝ってエミリーを手に入れるが、その直後に
彼は致命傷を負う。(神々の介入により。)

* * *
英語テクストはFables (1700, Wing D2278) より。
(途中、パラモンについて語るところ--「ぼくのかわりに
パラモンを愛してあげて・・・・・・」--は省略。)

* * *
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