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Shakespeare, ("Under the greenwood tree")

ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)
(緑にしげる森のなか)

緑にしげる森のなか、
わたしと隠れて暮らしたい人、
楽しい歌を
きれいな声の鳥にあわせて歌いたい人、
来て、来て、ここに来て、
ここにはいない、
敵なんて、
冬と、悪い天気以外には。

いけない野心を捨てて、
おひさまの下で、堂々と暮らしたい人、
必要な食べもののみを求め、
手に入るだけのもので満足な人、
来て、来て、ここに来て、
ここにはいない、
敵なんて、
冬と、悪い天気以外には。

* * *

William Shakespeare
("Under the greenwood tree")

Under the greenwood tree
Who loves to lie with me,
And turn his merry note
Unto the sweet bird's throat,
Come hither, come hither, come hither.
Here shall he see
No enemy
But winter and rough weather.

Who doth ambition shun,
And loves to live i' th' sun,
Seeking the food he eats,
And pleas'd with what he gets,
Come hither, come hither, come hither.
Here shall he see
No enemy
But winter and rough weather.

* * *

As You Like Itのなかで、弟によって領地を
追われて森に来た公爵とともいる貴族アミアンズ
Amiensが歌う歌。

* * *

1 greenwood
葉の茂った森。犯罪者、追放された者の住みか、
というニュアンス(OED 1)。劇のなかで公爵たちが
おかれている立場を暗示。

2 Who
先行詞入りの関係代名詞。・・・・・・であるような人。
= Any one that, whoever (OED 6)。

このWho. . . . に対して、Come hither(5行目)と
呼びかけている。(第二スタンザも同じ。9行目の
Who. . . .に対してCome hither.)

2 lie
隠れた状態でいる(OED 4a)。(一時的に)住む、
滞在する、夜を過ごす(OED 5)。もちろん、
横になる、(ベッドなどで)寝る、という意味も。
(Lie with . . . = ・・・・・・とエッチする--
次の注を参照。)

3-4
ここで鳥の歌の話になるから、1-2行目が、
本来の「お尋ね者」的な雰囲気から、「森のなかの
恋人たち」的な感じに見えてくる。2行目のlieも、
「身をひそめる」という意味から「寝る」に移行。

結果として、第一スタンザは、女性視点の
ラヴ・ソングに見えるようになっている。

3-4
ここのturnは、変える(OED 37a)、noteは歌や
メロディ(OED "Note" n2, 3a)、throatは声(OED 3b)。
「自分の楽しげなメロディを[きれいで、さらに
楽しげな]鳥の歌に変える」というのが直訳。

(追記・修正 20121002)
turn: 美しくつくる(OED 5b)。
note: 歌。
unto: ・・・・・・にあわせて(OED V-VI)。

7 enemy
1-2行目にあるように、本来、森に身をひそめる
公爵たちの歌なので、「敵」(公爵の弟たち)の
話が出てくる。

9 ambition
地位上昇などに対する強すぎる野心(OED 1)。非合法的な
手段による王位簒奪とか、そういうニュアンス。弟に地位を
奪われて森に来た公爵たちの立場を暗示。

10 i' th' sun
= in the sun. やましいところや不安がない状態で、
ということ(OED "Sun" 4b)。犯罪者などが隠れるような
森のなかで、「おひさまのもとで、堂々と・・・・・・」と歌う、
という、ちょっとした皮肉。(自虐的に)。

11-12
どちらも分詞構文。Seekingもpleas'd (= pleased)も
9行目のWhoの状態を補足説明。

* * *

リズムについて。


ビートのみチェック。


音節の強弱も重ねてチェック。
(日をあけてスキャンジョンをつくったので、
上下で微妙に異なっている。)

基調はストレス・ミーター(四拍子)。
これは、劇のなかの歌なので当然のこと。

Bのところで手拍子などしながら声に出して読むと、
この歌の雰囲気がわかる。

細かいことだが、工夫してあるのは--

1
ビートが最初の音節に来る1行目と4行目で、
ビートが二番目の音節に来る2-3行目をはさんでいること。
(このスタンザだけ。)

2
上のスキャンジョンにあるように、リズムの点では
もともと一行であるはずの6-7行目を二行にわけて、
歌に変化を加えていること。(二行にわけても
ちゃんとseeとenemyで脚韻をつくっていて。)
リズムの点でも、ここは他の行と雰囲気が違う。

3
Come hitherのくり返しのところ、鳥の鳴き声を
まねしている? (「ころっこひーよー」みたいな
鳥の声と、リズムや音感が重なる。)この直前で、
自分の歌を鳥の歌に変える、といっているので。

* * *

ひびきあう母音/子音(脚韻はのぞく)。

loves - lie
hither - Here - he
he - see
winter - weather

ambition - shun
loves - live
Seeking - eats - pleas'd

* * *

英文テクストは、Shakespeare, As You Like Itより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/1121

* * *

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