英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
Blake, "Clod and Pebble"
ウィリアム・ブレイク(1757-1827)
「土くれときれいな小石」
「愛は、自分をよろこばせようとはしない。
自分のことなど気にしない。
他人に自分の安らぎを与え、
地獄の絶望のなかに天国をつくり出す。」
このように小さな土くれが歌った、
牛たちの足に踏まれながら。
しかし、川のきれいな小石は、
次のようにきれいな歌を、きれいな声で歌った。
「愛は、自分だけをよろこばせようとして、
他人を自分の幸せにしばりつける。
他人の安らぎを奪って、キラキラ輝くように笑い、
天国など気に留めずに地獄をつくる。」
* * *
William Blake
"The Clod and the Pebble"
'Love seeketh not itself to please,
Nor for itself hath any care,
But for another gives its ease,
And builds a heaven in hell’s despair.'
So sung a little clod of clay,
Trodden with the cattle’s feet,
But a pebble of the brook
Warbled out these metres meet:
'Love seeketh only Self to please,
To bind another to its delight,
Joys in another’s loss of ease,
And builds a hell in heaven’s despite.'
* * *
以下、訳注と解釈例。
タイトル
clod
かたまりになっている土--少し「泥」に近い、
きたないイメージの土(OED 3b)。
(聖書的に)土からつくられたものとしての
人間のからだ(OED 4)。
pebble
川などで流されて丸くなった小石(OED 1)。
宝石(無色透明な水晶、メノウなど--
スコットランドでは川の小石に混じっていたり)
(OED 2b-c)。
Wedgwood社が開発した、異なる色の土を
混ぜてつくった陶磁器(OED 2e, 5b[pebble-ware])。
6 cattle
家畜一般(OED II)。特に牛(OED 4c)。集合名詞。
8 warble
声をふるわせて(きれいに)歌う。鳥のように
やさしくきれいに歌う。(OED 2)
8 metre (meter)
詩のリズム。詩、歌(OED 1, 3)。
8 meet
ふさわしい、似つかわしい(OED 3)
10 delight
強いよろこび、楽しみ。Delight > pleasure
(OED, "Delight" 1)。
11 joy
生き生きとしたよろこび、楽しみ(= 名詞のjoy)を感じる。
強さは、joy = delight > pleasure(OED, "Joy" n. 1a)。
名詞のjoyには、生き生きとしたよろこび、楽しみを
感じていることが外見にあらわれているようす、
という意味も(OED 1c)。ということで、上のような
意訳をしてみた。
12 in heaven's despite
= in despite of heaven.
In despite of . . . :
. . . をあざけって
. . . の抵抗や反対にもかかわらず(OED, "despite" 5a, 5 d)。
* * *
いろいろな解釈ができるだろうが、『経験の歌』のなかの
作品ということで、まず、「土くれ」と「小石」、どっちが正しい?
という視点を捨てることが大切と思われる。
つまり、「子どもの(あるいはアダムとイヴの堕落前の)
純粋さ、無垢さを失っている人なら、いろいろ経験して
きた人なら、土くれの話も小石の話も、両方わかるはず」、
という視点で書かれているかと。
* * *
で、以下、私の思うこと。
「土くれ」と「小石」、どちらの主張もわかるけど、
両方とも間違っている。なぜなら・・・・・・
1
どちらも愛について一面的な理解しかしていないから。
2
「愛は自分のためのものであると同時に、他人のための
ものである」というように、二つの主張を総合しても、
そもそも「愛」の定義としてしっくりこないから。
「愛」という言葉で表現されるなんともいえない
心身の状態と、「誰かのため」という理性的で
論理的な思考は、そもそも性質が違うはず。
* * *
英文テクストは、William Blake, Songs of Innocence
and Songs of Experience (1901)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/1934
* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。
「土くれときれいな小石」
「愛は、自分をよろこばせようとはしない。
自分のことなど気にしない。
他人に自分の安らぎを与え、
地獄の絶望のなかに天国をつくり出す。」
このように小さな土くれが歌った、
牛たちの足に踏まれながら。
しかし、川のきれいな小石は、
次のようにきれいな歌を、きれいな声で歌った。
「愛は、自分だけをよろこばせようとして、
他人を自分の幸せにしばりつける。
他人の安らぎを奪って、キラキラ輝くように笑い、
天国など気に留めずに地獄をつくる。」
* * *
William Blake
"The Clod and the Pebble"
'Love seeketh not itself to please,
Nor for itself hath any care,
But for another gives its ease,
And builds a heaven in hell’s despair.'
So sung a little clod of clay,
Trodden with the cattle’s feet,
But a pebble of the brook
Warbled out these metres meet:
'Love seeketh only Self to please,
To bind another to its delight,
Joys in another’s loss of ease,
And builds a hell in heaven’s despite.'
* * *
以下、訳注と解釈例。
タイトル
clod
かたまりになっている土--少し「泥」に近い、
きたないイメージの土(OED 3b)。
(聖書的に)土からつくられたものとしての
人間のからだ(OED 4)。
pebble
川などで流されて丸くなった小石(OED 1)。
宝石(無色透明な水晶、メノウなど--
スコットランドでは川の小石に混じっていたり)
(OED 2b-c)。
Wedgwood社が開発した、異なる色の土を
混ぜてつくった陶磁器(OED 2e, 5b[pebble-ware])。
6 cattle
家畜一般(OED II)。特に牛(OED 4c)。集合名詞。
8 warble
声をふるわせて(きれいに)歌う。鳥のように
やさしくきれいに歌う。(OED 2)
8 metre (meter)
詩のリズム。詩、歌(OED 1, 3)。
8 meet
ふさわしい、似つかわしい(OED 3)
10 delight
強いよろこび、楽しみ。Delight > pleasure
(OED, "Delight" 1)。
11 joy
生き生きとしたよろこび、楽しみ(= 名詞のjoy)を感じる。
強さは、joy = delight > pleasure(OED, "Joy" n. 1a)。
名詞のjoyには、生き生きとしたよろこび、楽しみを
感じていることが外見にあらわれているようす、
という意味も(OED 1c)。ということで、上のような
意訳をしてみた。
12 in heaven's despite
= in despite of heaven.
In despite of . . . :
. . . をあざけって
. . . の抵抗や反対にもかかわらず(OED, "despite" 5a, 5 d)。
* * *
いろいろな解釈ができるだろうが、『経験の歌』のなかの
作品ということで、まず、「土くれ」と「小石」、どっちが正しい?
という視点を捨てることが大切と思われる。
つまり、「子どもの(あるいはアダムとイヴの堕落前の)
純粋さ、無垢さを失っている人なら、いろいろ経験して
きた人なら、土くれの話も小石の話も、両方わかるはず」、
という視点で書かれているかと。
* * *
で、以下、私の思うこと。
「土くれ」と「小石」、どちらの主張もわかるけど、
両方とも間違っている。なぜなら・・・・・・
1
どちらも愛について一面的な理解しかしていないから。
2
「愛は自分のためのものであると同時に、他人のための
ものである」というように、二つの主張を総合しても、
そもそも「愛」の定義としてしっくりこないから。
「愛」という言葉で表現されるなんともいえない
心身の状態と、「誰かのため」という理性的で
論理的な思考は、そもそも性質が違うはず。
* * *
英文テクストは、William Blake, Songs of Innocence
and Songs of Experience (1901)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/1934
* * *
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