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Carew, "The Spring"

トマス・ケアリ
「春」

冬が去り、大地が着ていた
白雪のコートはとけて消える。もう霜が
草を砂糖づけにすることもなく、凍ったクリームを
銀の湖や水晶の川に投げかけることもない。
あたたかい太陽が麻痺していた大地をとかして
やわらかくする。死んでいた神の鳥の燕も
生まれ変わり、木の穴のなかで寝ぼけていた
郭公(かっこう)や丸花蜂も目をさます。
ちゅんちゅん鳴く合唱団が率いる
凱旋行進のなか、若さあふれる春がやってくる。
谷も丘も森もきれいな服を着て、
ずっと待っていた〈五月〉を歓迎している。
みんなほほえんでいる……でも、ぼくの恋はうつむいている。
熱い真昼の太陽でも
とかせない。あの人の心を包んでいる凍った
大理石はとかせない。だからあの人はかたくなで冷たい。
このあいだまでは飛ぶように小屋に逃げ帰ってきていた
牛たちも、今では野原でのんびり
寝そべっている。さっきまで暖炉のそばで
イチャイチャしていたのに、今、アミンタスと
クロリスは涼しい楓の木陰で
寝ている。すべてのものがみな
春にリズムをあわせていて、あの人の目も
六月のように美しい。でも、心だけはまだ一月。

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Thomas Carew
"The Spring"

NOW that the winter's gone, the earth hath lost
Her snow-white robes; and now no more the frost
Candies the grass, or casts an icy cream
Upon the silver lake or crystal stream :
But the warm sun thaws the benumbed earth,
And makes it tender; gives a sacred birth
To the dead swallow; wakes in hollow tree
The drowsy cuckoo and the humble-bee.
Now do a choir of chirping minstrels bring,
In triumph to the world, the youthful spring:
The valleys, hills, and woods in rich array
Welcome the coming of the long'd-for May.
Now all things smile: only my love doth lower,
Nor hath the scalding noon-day sun the power
To melt that marble ice, which still doth hold
Her heart congeal'd, and makes her pity cold.
The ox, which lately did for shelter fly
Into the stall, doth now securely lie
In open fields; and love no more is made
By the fire-side, but in the cooler shade
Amyntas now doth with his Chloris sleep
Under a sycamore, and all things keep
Time with the season: only she doth carry
June in her eyes, in her heart January.

http://www.luminarium.org/sevenlit/carew/spring.htm

*****
ホラティウスのオード1巻4番および9番と、ロンサールの『恋愛詩集』
2巻38番("Vous mesprisez nature")をあわせて翻案した作品。

ホラティウスの1.4は、ダウスンの「人生は短いから……」
の下敷きになっている作品。
Dowson, "Vitae summa brevis. . . . "

1.9については、次を参照。
Fanshawe (tr.), Horace, Ode I.9
Dryden (tr.), Horace, Ode I.9

ロンサールの詩は、1841年の選集では「マリーへの恋の歌」6番
https://books.google.co.jp/books?id=0yM6AAAAcAAJ

その他、Martindale and Hopkins, eds., Horace Made New
pp. 68-69に少し解説あり。

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