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太田昌国 『現代日本イデオロギー評註 「ぜんぶコロナのせい」ではないの日記』 その1 「国家を考える」ノオト その17 軍人恩給 空襲被害者 戦争被害受任論 

2021-08-15 16:41:00 | Weblog

1979年にソ連はアフガニスタンに侵攻したが、10年ほどして撤退。そして1991年ソ連崩壊へ。2001年に米国もアフガニスタンに侵攻、20年後の現在、カブール放棄目前。1975年ベトナム戦争敗北、サイゴン撤収の風景にも重なる。これは米国凋落の象徴的な出来事になると思う。

 

『現代日本イデオロギー評註 「ぜんぶコロナのせい」ではないの日記』(太田昌国著 藤田印刷エクセレントブックス 2021年刊) その1 「国家を考える」ノオト その17 軍人恩給 空襲被害者 戦争被害受任論

 

今日の道新朝刊に厚生労働省の『戦没者のご遺族の皆様へ「第十一回特別弔慰金」のご案内』という広告が載った。僕は不勉強で知らなかったのだが、毎年8月15日に各紙が掲載しているということだ。

太田氏の著作(P363を参考)によると、基準日である令和2年4月1日の段階で、「恩給法による公務扶助料」や「戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族年金」(戦没者等の妻や父母)がいない場合、順番を付けて、先順位の遺族一人に25万円支給するというものだ。子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、三親等内の親族(甥、姪)という順位付けがされている。

*ここまででも僕にはわからないことだらけだ。太田氏は昨年(2020.8)の日記に第十一回、今年(2020)の4月1日の段階でと書かれているが、1年たった今日の広告も同じ表現になっている。制度を調べる必要がある。

著作に戻る。「75年前に戦争責任の追及を免れた厚生省官僚は、GHQ占領下では禁止された軍人恩給制度をめぐって、1952年3月「戦傷病者戦没者遺族等援護法」を国会成立させることで復活の礎を築き、同年4月28日のサンフランシスコ講和条約締結の2日後に公布した。」

*ここからは、軍人恩給制度はアジア・太平洋戦争以前からの制度であり、敗戦後の占領下にあって一時的に禁止されていたということが読み取れる。

著作に戻る。「以後70年近くの間、厚生省(現厚労省)・自民党・日本遺族会の3者は入念な協議を重ね、戦傷病者や戦没者、それに近しい人々が次第に亡くなっていく過程で、ヨリ「下位の」者にも「援護」手を差し伸べて、孫子はおろか甥や姪までも受給対象者にして、今日に至っているのである。軍人・軍属関係者への恩給総額は、この70年近くで60兆円を超えている。」

*ここからは、受給対象者が徐々に拡大していったこと、自民党と日本遺族会は強い関係で結ばれていることが見えてくる。毎年8月15日に開催される全国戦没者追悼式へは、まるで甲子園の高校野球のように各地域の遺族会を代表して都道府県単位で参列している。また、それぞれの地域では、様々な形態で慰霊祭が行われており遺族会がその中心にいる。

本書には参考数値が示されている。「全国の遺族会会員125万世帯(1967年)→57万世帯(2019年)、1960年代の活動の中心だった戦没者の妻の平均年齢は現在96歳、1990年代の中心だった遺児は現在79歳。軍人恩給受給者(本人+遺族)261万6千人(1969年)→50万人(2015年)→22万8千人(2020年)。現在の平均受給額は年額72万4千円。

*受給額の72万4千円と広告の25万円の違い、軍人本人と遺族を対象とした制度の違い、制度を調べないとわからないことが多い。また、今日(8月15日)の道新には、「記者の視点」で東京報道センターの竹中達哉氏が「民間人の空襲被害」と題して、「国は直ちに調査と救済を」と主張している。僕も戦争によって亡くなった者、残された者への国の賠償に公平性があるのか疑問を持つ。被爆者の範囲をめぐっての「黒い雨」訴訟、戦争被害受任論を持ち出しての空襲賠償訴訟を退ける国の姿勢、欧州各国における補償内容との格差、未だ収拾できない遺骨など、敗戦後76年が経過してもなお多くの未解決の問題が横たわっている。当事者たちは超高齢化している。残された時間はあまりない。

著者の太田昌国氏は僕と同郷の釧路市生まれ。このブログでは、2020.3『さらば! 検索サイト 太田昌国のぐるっと世界案内』、2016.7『新左翼はなぜ力を亡くしたのか?』、2014.6『【極私的】60年代追憶 精神のリレーのために』、2013.5『テレビに映らない世界を知る方法』、2011.5『新たなグローバリゼーションの時代を生きて』、 2009.9『拉致対論』、2008.6の『拉致異論』を書いてきた。

本書の発行元の「藤田印刷エクセレントブックス」は釧路の会社で昔から良く知っている。社長さんは高校の先輩だと思われる。太田氏が故郷の出版社から著作を刊行したことに異議なしだ。

 

 


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