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原武史  『〈女帝〉の日本史』

2017-12-13 15:44:53 | Weblog

富岡八幡宮の跡継ぎを巡り、復権への道を閉ざされた弟が妻とともに、姉を殺めた事件で、自刃した弟の遺書に「私は死後に於いてもこの世に残り、怒霊となり、私の要求に異議を唱えた責任役員とその子孫を永遠に崇り続けます。」とあった。神社は通常願いを祈る場所だが、呪詛をかけるのに適した神社があるのだろうかと思って調べてみたら、ネットで貴船神社が出てきた。縁結びの神社は、逆にマイナスの縁も結ぶということだそうだ。

 

『〈女帝〉の日本史』(原武史著 NHK出版新書 2017年刊) 

著者には、類書として『皇后考』(講談社 2015年刊)がある。(僕は2015.10.7、16、23、25にブログで取り上げた。)著者は、2016.8.8の「天皇陛下のおことば」中の「このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ」という言葉を受けて前近代を含む天皇の歴史を研究する必要性を感じたと言う。

本書は単に歴史的な事実を記した書ではない。現天皇の退位が決まり、今後の天皇制がどのような形態になるのかを考える素材になる。著者は、退位後の天皇は、上皇になるが活動が大幅に制限され摂政にはなれない。しかし上皇后は、皇后時代と変わらない活動、宮中祭祀や公式行啓も続けることができ摂政にもなれる。体調面で不安が残る新皇后の分までカバーすることで、「母」の存在感が増す可能性もある、という。歴史が警鐘を発しているといえる。

僕の天皇制についての考え方。占領軍が統治のために天皇制を残し、かつ昭和天皇を退位させなかったのは、この国における天皇制は、スローガンを唱えるだけで簡単に廃止できるような簡単なものではなく、ずっと深く根を張ったものであると捉えている。しかし、天皇家の祭祀からもわかるが、本質的には天皇は稲作文化を背景に持つ生き神様であることから、水田農業の衰退、コメの消費量の減少と歩みを同じくして、このままではいずれ衰退に向うと考える。

世界に誇る天皇制の価値が「万世一系」すなわち男系による皇位継承、男性天皇の種(たね)による継続が保たれてきたことにあるとしたら、その継承が今最大の危機に立たされている。現在の皇室には皇位を継承できる男子が4人しかいなく、いずれは悠仁親王しかいなくなる事態が想定される。女性宮家の創設は連綿と続いてきた男系男子という原理を根本から否定することになる。大正天皇までは何代かにわたり側室から生まれているが、男子の生まれる可能性を増やすため、側室制度などを導入することは、民主主義国家の手前上難しいのだろう。女性宮家の創設か、一夫一婦制の否定かの隘路に立たされている。容易な打開方法は見つからない。

12.17 ご助言により現天皇という表現に訂正しました。

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