7月1日(水)
大人がみんな「情けない」というわけではありません。一定の見識を持ってしっかりと生きている人もたくさんいるのですから。
とはいえ、世の上に立つ人、特に、国・地方に関係なく選挙で選ばれた人の中に、首を傾げたくなる人間のなんと多いことか。
来年から選挙権の年齢が二才引き下げられ、政治家の言動に関心を持つ若者が増える状況です。有権者の投票で選ばれる人間は、若者にもっとしっかりとした生き方を示さなければならないと痛感します。
こちら兵庫県。県会議員の「政務活動費」の話が浮上し、泣いたりわめいたり逃げ回ったりの醜態をさらしたのは一年前のことでした。いったいあの問題は、今どうなっているのでしょうか。おそらく根本的な解決はしていないように思います。
先日の、安倍首相の取り巻きの議員たちによる勉強会での言論封殺の発言。名称は「文化芸術懇話会」とか。全く論評にも値しない子どもっぽさです。
首相は若手議員の至らなさということで、距離を置こうとしているようですが、会に招かれ、「沖縄の新聞を潰せ」と息巻き拍手喝采を受けた講師の作家先生とやら、総理と仲の良い、現政権の応援団長的存在とか。
その応援団長と仲が良いとかいう安倍首相も、一度注意を受けて陳謝していたにも関わらず、再度質問者に野次を飛ばすというお粗末ぶり。
まあ、いい大人なのに、状況や場をわきまえず、子どもっぽくホンネを広言してくれるので、政権与党の政治家が何を考えているのかがわかりやすくて、もしかすると、若者の政治参加には好都合なのかもしれませんが、こんなんでいいのかと心配になります。
どうも、日本人は全体的におとなしくて、その意識の中に、選挙に立候補する人はそれなりの見識を持っているという性善説が潜んでいるのかもしれません。でも、もしそうなら、そんな意識はそろそろ拭い去らないと大変なことになるかもしれません。
さて、現状。
本当は、昨年の総選挙の争点はいろいろとあったのです。
「憲法改正(とりあえず集団的自衛権の正当化)」や「原発問題」等々。しかし、政府自民党はそういう反対の多そうな問題は争点の脇に目立たぬように置いて、有権者の最大の関心事である「景気回復」を前面に打ち出して圧勝しました。
たしかに株価も上昇し景気は回復傾向のように見えますが、それが今後、庶民の暮らしにまで及ぶのかどうかは、いまだにはっきりとはしていません。
その一方で、やっぱりという感じで、選挙戦ではあまり表面には出なかったいわゆる「安保法制」の改定に向けて、圧倒的な議席数を後ろ楯に一直線の感。どう見ても暴走の感が否めません。
スローガンは「日本国民の安全と平和を守るため」と、なかなかもっともなのですが。
数年前から話題になっている「尖閣・竹島問題」や、最近さかんに報じられる「中国の南沙諸島進出」。そんなニュースを前にして、今や、多くの国民が何とかしないとと不安になっているのも事実です。さらに、「対イスラムテロ対策」「化石エネルギーの安定確保」のためにと言われると、ふつうの人は「今の自衛隊のままでは・・・」と思うのも仕方ないのかもしれません。
もちろん、野党は政府自民党に抵抗していまが、その姿勢、ちょっと納得できないのです。きちんと反対するなら、上のような、今直面している問題に対して、軍事的な力によらない具体的な解決策を示さなくてはならないのにと。
いったい野党はどういうふうに反対しているのか。国会中継を見ていると、
「いきなり閣議決定するのは国会軽視」
「先にアメリカへ行って約束して来るとはなにごと」
「学者も言っているように憲法解釈上無理がある」
「自衛隊員の安全の確保が難しい」
これ、真正面から反対する姿勢だと思いますか。相手のやり方・進め方をいくら責めても、これでは、与党側の主張によって生まれている国民の不安の解消にはなりません。
相手の言い分を真っ向から否定しきれないのか、議席数から最終的に押し切られることを覚悟しているのか、本当にわが国と国民の将来を心配しているのか疑わしくなってしまいます。
大事なのは、
「無理やりに憲法をねじ曲げて解釈しなくても、自衛権などと声高に叫ばなくても、憲法九条の理念のままに、『こうして日本の平和と安全は確立できる』ということ(対中、対韓関係の改善策・化石燃料に偏らないエネルギー政策の具体的方向性等)」をきちんと国民の前に提示し、与党と論戦することなのです。
そして、もしその主張に対する支持が広がって、国民の信を問うという状況に持っていけば、それが野党本来の姿だと思うのですが。
しかし、野党といっても、自衛隊自体を違憲とする政党から集団的自衛権を確立するには改憲した上でという政党まで幅が広く、上のような前提についても、まず改憲という勢力は、今の憲法ではちょっとということなのでしょうが、それがどの部分なのかはっきりとさせず、もう一方は、憲法を守るなんて当たり前でそんな議論はいまさらということなのでしょうか、その辺の主張や姿勢が庶民に伝わってこないのです。
そんな中で、開かれた例の「文化芸術懇話会」なる勉強会。現政権を強く支持する保守派?の作家が、日本の国を愛するあまり何を主張しようと、それも言論の自由なのかもしれませんが、どうも、その方々には「米軍基地があるから中国が攻めて来ないという現実を沖縄の人はわかっていない」という考えがあるようで、報道によると、「沖縄のどこかの島が中国に取られてしまえば、目を覚ますんじゃないか」との発言も出たとか。
仲間内での単なるジョークということにしましょうか。実はこの前、春先の公園で日向ぼっこをしている時に、隣のベンチで談笑していた爺さまたちも同じ内容の話をして肯き合っていました。これも仲間うちの談笑ということで済ませましょう、言論は自由ですから。
でも、少々気が滅入ります。このような発言に対して、話にならない、取るに足らないと無視するのは簡単ですが、このおじいちゃんたちも立派な有権者なのです。そして、昨今のニュースを目に耳にしながら、対中や対韓関係について疑念や不安を抱いているのは、このおじいちゃんたちだけではなさそうなのです。
真剣に憲法九条を守るなら、護憲を掲げる政党を中心に、まずそういう不安を払拭する努力が必要で、その辺からしっかり説明しないと、「集団的自衛権に頼らなくても日本の平和と安全は守ることができると」いう主張に説得力が生まれません。
でも、今の野党にそんな期待が持てるでしょうか。やっぱり気が滅入ります。国会の会期が9月まで延長されたものの、結果、どうも期待外れの表面的な議論に終始し、国民の多くが抱く疑念と不安はそのままに、最後は政府与党が押し切って行くとしか思えないからです。
梅雨寒や文化芸術見くびらる 弁人
大人がみんな「情けない」というわけではありません。一定の見識を持ってしっかりと生きている人もたくさんいるのですから。
とはいえ、世の上に立つ人、特に、国・地方に関係なく選挙で選ばれた人の中に、首を傾げたくなる人間のなんと多いことか。
来年から選挙権の年齢が二才引き下げられ、政治家の言動に関心を持つ若者が増える状況です。有権者の投票で選ばれる人間は、若者にもっとしっかりとした生き方を示さなければならないと痛感します。
こちら兵庫県。県会議員の「政務活動費」の話が浮上し、泣いたりわめいたり逃げ回ったりの醜態をさらしたのは一年前のことでした。いったいあの問題は、今どうなっているのでしょうか。おそらく根本的な解決はしていないように思います。
先日の、安倍首相の取り巻きの議員たちによる勉強会での言論封殺の発言。名称は「文化芸術懇話会」とか。全く論評にも値しない子どもっぽさです。
首相は若手議員の至らなさということで、距離を置こうとしているようですが、会に招かれ、「沖縄の新聞を潰せ」と息巻き拍手喝采を受けた講師の作家先生とやら、総理と仲の良い、現政権の応援団長的存在とか。
その応援団長と仲が良いとかいう安倍首相も、一度注意を受けて陳謝していたにも関わらず、再度質問者に野次を飛ばすというお粗末ぶり。
まあ、いい大人なのに、状況や場をわきまえず、子どもっぽくホンネを広言してくれるので、政権与党の政治家が何を考えているのかがわかりやすくて、もしかすると、若者の政治参加には好都合なのかもしれませんが、こんなんでいいのかと心配になります。
どうも、日本人は全体的におとなしくて、その意識の中に、選挙に立候補する人はそれなりの見識を持っているという性善説が潜んでいるのかもしれません。でも、もしそうなら、そんな意識はそろそろ拭い去らないと大変なことになるかもしれません。
さて、現状。
本当は、昨年の総選挙の争点はいろいろとあったのです。
「憲法改正(とりあえず集団的自衛権の正当化)」や「原発問題」等々。しかし、政府自民党はそういう反対の多そうな問題は争点の脇に目立たぬように置いて、有権者の最大の関心事である「景気回復」を前面に打ち出して圧勝しました。
たしかに株価も上昇し景気は回復傾向のように見えますが、それが今後、庶民の暮らしにまで及ぶのかどうかは、いまだにはっきりとはしていません。
その一方で、やっぱりという感じで、選挙戦ではあまり表面には出なかったいわゆる「安保法制」の改定に向けて、圧倒的な議席数を後ろ楯に一直線の感。どう見ても暴走の感が否めません。
スローガンは「日本国民の安全と平和を守るため」と、なかなかもっともなのですが。
数年前から話題になっている「尖閣・竹島問題」や、最近さかんに報じられる「中国の南沙諸島進出」。そんなニュースを前にして、今や、多くの国民が何とかしないとと不安になっているのも事実です。さらに、「対イスラムテロ対策」「化石エネルギーの安定確保」のためにと言われると、ふつうの人は「今の自衛隊のままでは・・・」と思うのも仕方ないのかもしれません。
もちろん、野党は政府自民党に抵抗していまが、その姿勢、ちょっと納得できないのです。きちんと反対するなら、上のような、今直面している問題に対して、軍事的な力によらない具体的な解決策を示さなくてはならないのにと。
いったい野党はどういうふうに反対しているのか。国会中継を見ていると、
「いきなり閣議決定するのは国会軽視」
「先にアメリカへ行って約束して来るとはなにごと」
「学者も言っているように憲法解釈上無理がある」
「自衛隊員の安全の確保が難しい」
これ、真正面から反対する姿勢だと思いますか。相手のやり方・進め方をいくら責めても、これでは、与党側の主張によって生まれている国民の不安の解消にはなりません。
相手の言い分を真っ向から否定しきれないのか、議席数から最終的に押し切られることを覚悟しているのか、本当にわが国と国民の将来を心配しているのか疑わしくなってしまいます。
大事なのは、
「無理やりに憲法をねじ曲げて解釈しなくても、自衛権などと声高に叫ばなくても、憲法九条の理念のままに、『こうして日本の平和と安全は確立できる』ということ(対中、対韓関係の改善策・化石燃料に偏らないエネルギー政策の具体的方向性等)」をきちんと国民の前に提示し、与党と論戦することなのです。
そして、もしその主張に対する支持が広がって、国民の信を問うという状況に持っていけば、それが野党本来の姿だと思うのですが。
しかし、野党といっても、自衛隊自体を違憲とする政党から集団的自衛権を確立するには改憲した上でという政党まで幅が広く、上のような前提についても、まず改憲という勢力は、今の憲法ではちょっとということなのでしょうが、それがどの部分なのかはっきりとさせず、もう一方は、憲法を守るなんて当たり前でそんな議論はいまさらということなのでしょうか、その辺の主張や姿勢が庶民に伝わってこないのです。
そんな中で、開かれた例の「文化芸術懇話会」なる勉強会。現政権を強く支持する保守派?の作家が、日本の国を愛するあまり何を主張しようと、それも言論の自由なのかもしれませんが、どうも、その方々には「米軍基地があるから中国が攻めて来ないという現実を沖縄の人はわかっていない」という考えがあるようで、報道によると、「沖縄のどこかの島が中国に取られてしまえば、目を覚ますんじゃないか」との発言も出たとか。
仲間内での単なるジョークということにしましょうか。実はこの前、春先の公園で日向ぼっこをしている時に、隣のベンチで談笑していた爺さまたちも同じ内容の話をして肯き合っていました。これも仲間うちの談笑ということで済ませましょう、言論は自由ですから。
でも、少々気が滅入ります。このような発言に対して、話にならない、取るに足らないと無視するのは簡単ですが、このおじいちゃんたちも立派な有権者なのです。そして、昨今のニュースを目に耳にしながら、対中や対韓関係について疑念や不安を抱いているのは、このおじいちゃんたちだけではなさそうなのです。
真剣に憲法九条を守るなら、護憲を掲げる政党を中心に、まずそういう不安を払拭する努力が必要で、その辺からしっかり説明しないと、「集団的自衛権に頼らなくても日本の平和と安全は守ることができると」いう主張に説得力が生まれません。
でも、今の野党にそんな期待が持てるでしょうか。やっぱり気が滅入ります。国会の会期が9月まで延長されたものの、結果、どうも期待外れの表面的な議論に終始し、国民の多くが抱く疑念と不安はそのままに、最後は政府与党が押し切って行くとしか思えないからです。
梅雨寒や文化芸術見くびらる 弁人