チムどんどん「明石通信」&「その後」

初孫との明石暮らしを発信してきましたが、孫の海外移住を機に七年で区切りに。現在は逗子に戻って「その後」編のブログです

播磨にいた記念に「播州そろばん」を

2015-07-25 09:03:48 | 明石風物
7月25日(土)

 電卓なるものを初めて見たのは大学生の頃でした。子どもの頃に珠算二級の検定をパスしていた私は、こんなものに負けてなるものかと、就職してからもしばらく、数字の計算は全てそろばんで済ませていました。
 しかし、時代の流れには逆らえません。40代半ばになると、電卓どころかコンピュータなるものが目の前に現れ、「123」や「エクセル」の表計算ソフトを使うようになってからはとんと御無沙汰。
 7年前、明石へ行く時に書斎を整理していると、使い古したそろばんが二つ出てきました。しかし、二丁とも珠の動きもままならない状態だったこともあって、潔く処分してしまいました。

 そんな昔話はさておき、明石から車で北へ30分ほど、三木市の先にある小野市。その市役所前の駐車場に、

 こんな看板があります。そろばん珠の表示は、どうやら
  西暦の「2015」のよう
  

 そろばんといえば、私なんぞは「ともゑ」「天下一」という商標が浮かんでくるのですが、処分したそろばんがはたしてそんなブランド品だったかどうかは記憶にありません。

 実はそろばん、伝統的には「播州算盤」の兵庫と「雲州算盤」の島根が二大生産地なのです。どちらも生産量日本一をうたっていますが、歴史的にはどうも「播州算盤」のほうが古いようです。

 それはともかく、「播州算盤」の生産地として有名なのがこの小野市で、算盤や金物の伝統工芸都市として知られています。

 さて、播州は明石での暮らしもわずかになりました。この際、記念にひとつ算盤でも買っておこうかと、春以来三回ほど小野市に足を向けました。

 市役所の前にある市民会館の隣に「伝統産業会館」があって、中に入るとすぐ一階に、

 「そろばん博物館」なる
  スペースがあります
  
   

 珠の材質になる木はいろいろありますが、伝統工芸品として作られるものの代表的なのが「樺(かば)」と「柘(つげ)」です。茶色の「樺」のほうが一般的で安価。珠の色もそろばんらしい感じがします。「柘」は黄色に近い明るい色合いで高級感があり値も張ります。それよりも高級なのは真っ黒の「黒檀(こくたん)」ですが、黒い木枠の中に納まっている珠が少し見えづらい感じがします。
 今はプラスチックや新素材を使った安価なものもあるのでしょうが、ここの販売コーナーに置いてあるものは、さすがに手作りのものだけですから、「これは」と思うものは万札一枚でも買えません。

 6月の紫陽花のきれいな頃でした。せっかく播州算盤を手に入れるなら、どこかの工房を訪ねてみようかと小野の算盤職人を調べ向かいました。

 市街地の少し南に天神町という所がありまます。国道175号から100メートルほど西に入った所です。

  公民館があって、
  

 広めの道路の反対側の路地に
  看板を見つけました
  

 ここに、伝統工芸士に認定されている宮本一廣さんという、そろばん作りの職人としては小野で最も有名な方がいるはずです。看板の家のすぐ東に小さな水田がありますが、

 その脇の洗濯物が下がっている所が
  宮本氏の工房でした
  

 気難しい方だったらどうしようかと思っていましたが、とても気さくで話好きのおじいちゃんで、小一時間ほど算盤製作の過程や苦労話などを聞くことができました。テレビでも何回か紹介されたようで、その写真も飾ってあり、何年か前には叙勲を受けたという話もお聞きしました。

 そして、明石にいた記念にほんまもんの播州算盤を手にするのなら、やっぱり「柘」か「黒檀」だろうと、自作の品を数丁並べてくれました。たしかに「黒檀」のほうが重厚な感じがしますが、珠が見づらいのも事実。ということで、

 色鮮やかな柘珠の算盤を購入。
  これぞ「珠玉」の一品?
  

  銘もちゃんと入っています
    

 はたして、この算盤を手にして珠をはじくことがあるのでしょうか。でも、道具ですから箱にしまっておいても意味はありません。明石から引き揚げたら、パソコンデスクを整頓してキーボードの脇に置いておこうと思っています。


   パソコンの脇で算術夏の夜   弁人


 話は変わります。算数も頑張っているKAZU君、ランドセルの中に、単語カードのような「たし算カード」と「ひき算カード」が入っていて、数字の式を見て即座に答えを言う宿題がよく出されます。
 何回も繰り返しているうちに、二つの数字を見ると、まるで暗記したかのように答えを言うようになります。ところが、テストを見ると、時々間違えたりしていて、いったい彼の頭の中で、どういうふうに数の概念ができて行くのか少々不安になって、この前、おはじきを並べてみたりしました。

 「そうか、そろばんがいいかもしれない」と思って、先日、もう一度小野へ出向いて小型のそろばんを一つ買いました。

 そのそろばん、ごく一般的な樺珠のもので、そんなに高くはありませんでしたが、
「子どもが使うそろばんとしては、見劣りすることはないですよね」と念を押したところ、
「そりゃあ、もう、なにしろ手作りの伝統工芸品ですから、この辺りの子ならともかく、こういうのを持ってる子は、ふつうなかなかいないんじゃないですか」というお言葉をいただき大満足。


   餞別の工芸品抱へ夏木立   弁人


 さっそくKAZU君の前で開けてみましたが、やはりまだ早かったようです。おはじきより玉が小さいので興味を示しませんでした。
 とはいえ、そろばんは日本が生んだ文化の一つです。たしかに時代は変わりましたが、今でも三年生くらいになると、算数の授業でそろばんを使ったりするとも聞いています。はたしてオランダの日本人学校で算盤が登場するかどうか、その辺はわかりませんが、どこかで役立つことを祈りつつ、KAZU君への餞別として持たせることにしました。


コメント (4)
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