毎週の出来事をお伝えします
電話室便り
どうぶつたちのおかいもの
2012-06-20 / 本
傑作! と思います。
『 どうぶつたちのおかいもの 』 タイトルどおり、ちーた、しまうま、やぎ、ろば、
ぞう、いのしし、わに、かば、あひる、くま、らいおん、が、「 にぎやかな まち 」
でお買い物をするのです。
ちーたは ようひんてんで、ねくたいを。
しまうまは ぼうしやで、ぼうしを。
やぎは かみやで、ちよがみを。
ろばは、おせんべいやで、いろいろ つめあわせを。
ぞうは でんきやで、とらんじすたー・らじおを。
いのししは かめらやで、かめらを。
わには こまものやで、ぶらしとくしを。
かばは あかちゃんようひんのみせで、よよだれかけを。
あひるは くすりやで、のりものよいの くすりを。
くまは ぱんやで、おおきな けーきを。
らいおんは はなやで、おおきな はなたばを。
このお話の、まず第一の愉しさは、買い物をしている動物たちのそれぞれの様子、店内の
様子なんです。
かつては当たり前に活気があり、繁盛していたであろう「 にぎやかな まち 」 の
商店街。それが今や、衰えさびれて、その中でかろうじて生き残っているお店は
” レトロな ” という形容詞がくっつく貴重なものになってしまっておりますが、
この絵本は、そのレトロな商店街がもっともイキイキしていた時代を描いているのです。
日本の昔ながらの店、当時の最先端をいくオシャレの店、現在ではかなり貴重な路面店の
カメラ屋、大きなガラスのショウケースの、パンと” 純フランス菓子 ”( 懐かしくも
どっしりとした本格派の洋菓子、っていうのが伝わるのです。” スウィーツ ” じゃこ
うはいかないゾ )の店・・・・細部まで美しく描かれていて、興味しんしんです。
さらに、お買い物をする動物たちのしぐさ( 二本足で立ってます )や表情、受け応えす
る店員さんたちが、オッカシイのっ!!
動物と人間が当たり前にやり取りする物語世界ならではの楽しさですね。
それは例えば、こんな感じ。
ようひんてんでの ちーたですよ。
「 くろと きいろの しまもようの ちょうねくたいが、おにあいで ございますよ 」
ぼうしやでのしまうまサン。
「 はねの ついた むらさきいろの ぼうしが おにあいでございますよ 」 と、
おみせの ひとに接客されております。
かみや での やぎさん。
「 ちよがみの せっとを くださいな 」。
おせんべいや では ろばさんが、
「 しおせんべいに、のりまきせんべいに、かたやきせんべいに、かきのたねなど、いろ
いろ つめあわせてくださいな 」。
夢のようなお店の数々。全くもって、良い時代だったのだなあ、とちょっと溜息をつく
のです。時代は知らない間に、こんなにも流れている、とかね。
第二の愉しさは、筋立てです。
さてさて、動物たちは、どうしてみんなしてこんなにお買い物をしているの?
お買い物を無事終えた動物たちは、動物園行きのバスに乗り込みます ( 表紙の絵 )。
つまり、おうちへ戻るわけなのです。
ページをめくるたびに募るナゾは最後5ページで、スコンと大満足大納得いたします。
思わず顔がニッコリと。みぞおちあたりから 「 いやあ〜、そうでしたかっ!!いいね
え!! 」ってにやけてきます。
少しのブレもない物語の筋運び。童話の中で、明快な言葉、美しく精巧かつユーモラスな
絵で、送る・贈る真心を伝えるのでした。
作者は、おさるのジョージの、かもさんおとうりの、すばらしいときの、スモールさん
の、そしてじぷたの、まだまだたっくさんの素晴らしい翻訳と創作絵本を残された
渡辺茂男。絵は、90歳を超えて今も活躍中の太田大八。
最後の最後の裏表紙まで、心憎いのです。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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立ってますよー、どうぶつたち。日本足で。
買い物のあとは、パーティーをするのです。
そして、親子で飛行機にのりこむ動物もいるんです。
絵本の世界はすばらしいですね。フフフ。
なお枯れない表現の情熱!
この絵はやっつけ仕事で描けるものではないです。
何か、今の自分に
そういうものが
猛烈に欲しくなってしまいました。
ぜひ、読んでみたいです。
お便りありがとうございます、おひさしぶりです!!
太田大八さんは、今なお現役でいらっしゃるほどです
から沢山たくさんの絵本作品を残されていらっしゃる
のですが、私はそのほんの一部しか知らないのです。
ただ、なんとなく、日本の昔話の、和のタッチの作風
と、とてもヨーロッパ的な作風があるような気がしま
す。今回の「 どうぶつたちのおかいもの 」 は、
どちらかというと 洋風、でしょうか。
この作品が描かれたのは1976か1978年か、
なんです。なので、商店街のイキイキした雰囲気は
その当時そのままでありましょう。
ぜひ観てみてくださいね。
ちなみに、福音館から出ている 『 だいちゃんと
うみ 』 という一冊もとてもオススメです。
日本の夏の情緒、さもありなん・・・溜息ものです
よ!