ヤミツキさん


先日、ようやくと、『 闇月創房 』 のギャラリー&ショップに伺いました。

オーナー逸見 ( へんみ ) さんが創る真鍮と銅の作品が、

小さな白熱灯の明かりの下で、なんとも柔らかな質感と色味をたたえて

並んでいました。

久しぶりに作品群を見せていただきながら、つくずく、このお方の創るものは、

きれいだなあ、と。 素人芸がまかり通る昨今の手作り市場にあって、

アカ抜けた、プロの仕事、だな、そう感じました。

スペースの関係上でしょう、こちらでは 小さなもののみの展示でしたが、

闇月創房さんは、店舗什器や内装も手がけていらっしゃいます。

パスキューのオーダーテーブルは、何を隠そう、逸見さんに作って頂いているの

です。そうそう、古い丸スツールの座面と鉄筋を組みあわせたリメイクスツールが

作業室の方にありましたが、あれはスタッフ用の備品?なのかなあ、商品かしら?

ちょっと気になりつつ、聞かずに帰ってきてしまいましたが、あれ、いいなあ。

真鍮製のかたつむりのピンブローチをいただきました。

かたつむり、って、あんまりないモチーフだよね、ブローチ好きの私は、

この冬、コートやジャケットの襟元にどうかしらん、うふふ、でした。

どちらかっていうと頑固で無口、( 笑うとかわいい )へんみさん一人でやって

きた『 闇月創房 』、今は、原っぱから摘んできた、というケサランパサラン

( 「 多分、、いやいや、絶対そうだと思う!! 」 とおっしゃってました )や

形がおもしろくて、野性味あふれるツルもの、枝ものがあちこちに活けられていて

この空間に生活の彩り、生きものの生気が満ちています。

これは、奥様のかずえさんの仕事。 うんと入りやすくなってたー!! 

『 闇月創房 』さん、

中央区南1条西15丁目 ルレーヴ大通ビル203号室、です。















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すべて王の臣



人間の脳は一体どのくらいの性能をもっているのでしょう?

心とは何でしょう?、何より どこにあるのでしょう?

人間がこの世に生まれて死ぬまでに、

どれほどの事象に影響を受け、

また、どれほどのもの事と繋がりながら 

その時その時の自分を作り、生きるのでしょうか ・・・・・ ?

計り知れない、その神秘性。


人間が不完全な生き物であること、  しかし、その人間が生きる世界での出来事

は、神の意思による完璧なもの、つまり運命と呼ばれる、

この矛盾。


ロバート・ペン・ウォーレン 『 すべて王の臣 』 は、1930年代のアメリカ

南部のルイジアナ州メイスンシティーの政治の中心人物、ウィリー・スタークと、

その友人であり側近の ジャック・バードン、そして彼らを取り巻く人間関係の

物語です。

政治を舞台装置にしながら、人間の神秘性を、立体的に、この上ない透明感を持つ

比喩を積み重ねながら追求した小説でした。

大変情緒的でありながら、あいまいさの全くない比喩は、

南部で生まれ育ち、南部で暮らす人の視点で切り取られた自然の情景を描ききり、

また、都会人が当たり前に知っている、いろいろな時間帯のなにげない街の様を、

とても特別なシーンであるような気にさせられてしまうように表現するのでした。


南部の白人労働者階級出身の、郡の実直な会計主任 ウィリーは、

市の小学校建設の不正工事を街頭でたった一人で訴え続け、その小学校が、手抜き

工事による倒壊事故で児童が死亡したと同時に、一躍政治の表舞台に躍り出ます。

正義を説き、労働者が力をあわせ、労働者のための街をつくることを説くウィリー

は、己の奥深くに眠っていたパワーとカリスマ性に目覚めてゆくのです。

数年後、州知事にまで登りつめた時には、口下手な田舎者だったウィリーは、今や

「 スターク知事 」となり、絶大な権力を手中におさめ、同時に、あれほど憎み

糾弾していた汚職に手を染め始め、愛人スキャンダルが発覚し始めてしまう。

大胆で粗暴で、理想主義者であるがゆえに、その理想を現実の形にしようと、

真反対の汚泥に足を捕られ、”悪から善を生む ” と言って強引に進もうとする

ウィリーの中に共存する善と悪。

そして、物語全体にダイナミックにかかわりながら、その語り部となり、また

渦巻き融合しながら進んでいくパワーの流れの只中にあって、「 高度に自己を

意識 」 する、つまりこの物語の文学的な奥行きと深みと神秘性を表現する、

登場人物たちの代表 = 主人公 ジャック・バートン。

それぞれに重い問題を抱えながら、それぞれのやりかたで再生を模索する登場人物

達が、人生のある時期に、ウィリー・スタークの元に集結し、

「 その政治家のダイナミックで粗暴ではあるが逆説的には理想主義的な衝動の中

に、身代わりの充足を見いだす事になる 」 のです。


時間を前後させながら、この物語は、” 変化 ” を描き続けます。

どうしようにも止めようのない変化に心揺さぶられ、胸の奥の芯がツーンと痺れ、

デリケートでプライベートな悲しみが甦る中を、私たちは読み進むのです。

ウィリー・スタークという1点で繋がり成り立っていた関係が、クライマックスに

一瞬で崩壊。 その後の、それぞれの ” 変化 ” が、切ない。

分厚い物語の1ページ1ページを見守ってきた曲者の登場人物たちと、私たちも

いよいよお別れ、という気持ちになるのです。 とても寂しい。

これもまた、変化、でしょうか。


ロバート・ペン・ウォーレン の名は、この 『 すべて王の臣 』 で初めて

知りました。 この作品でピューリッツアー賞を受けているそうです。

日本では、ほとんど知られてはいないのでは・・・?

また、1949年と、2006年に映画化されています。

2006年版は、ウィリー・スターク役に、ショーン・ペン、ジャック・バートン

役にジュード・ロウ、なのです。

読み終えたとき、この物語の独特の文学性を、映画で表現できるのか、

とても考えてしまった。 無理なんじゃなあい? と。

ショーン・ペン、ねえ ・・・ うーむ ・・・。

視覚的な限定性が取り払われている分、文学の自由さをとても感じました。

人間の意志と力では、どうすることもできないものことを描き、

そのような現世を生きてゆく意味を問う、日本語版上下二段組524ページ、

翻訳者 鈴木重吉氏の仕事も大変結構なものでした。

























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思うこと


1冊のノート。

1本の鉛筆。

それが、どんなに粗末なものであっても、

それを自分だけで使えて、

学校に行って勉強をし、字を書いたり、絵を描いたりできる。

世界には、国が貧しくて貧しくて、または戦争ばっかりで、

こんな当たり前のことが、なんでもないことが、

もう信じられないくらい嬉しく思う子供がいるのですよね、たくさん・・・・・。

物質的には貧しくはない日本では、ノートを買ってもらっても、

特別嬉しくないかもしれない。

1本の鉛筆をありがたく思うことは、あんまり ないねえ。

1冊のノート それと 1本の鉛筆を、

それは貴重で、大切で、素晴らしいもの、と、大事に大事に、大事に使い、

丁寧に扱い、きちんとしまうであろう、その気持ち。

恵まれている私たちの1000倍くらいはありそうな、

真剣で深くて輝かしく、なによりフレッシュなその感情を

( そうさせている社会的・政治的な状況の悲惨さなどは一切考えないで、の上で

だけれど )、とてもうらやましく思うのです。

自分の環境でも、なんとかそのような気持ちを生み出したいものだ、と、

常日頃、考えます。

でも、すでに、それは、とても難しいことなのでした。

豊かな生活をのうのうと過ごしながら、のんきにそんなことを考えている傲慢さ

を含めて、それは、とても難しいことなのでした。























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ざっくん ! ショベルカー

このおにいさんは、ショベルカーを操縦して、

いろいろな工事現場で働いています。

現場作業員としてそういう会社に所属しているんだと思われます。

大きな車庫には、ショベルカーが3台。

大中小、小さい方から、ショベルカー1号・2号・3号 です。 

どれも同じくステキな黄緑色。

3台は、いつも十分整備されていて、きちんとまっすぐ並んで待機しています。

さて、おにいさん。

歳の頃は、26~28歳くらいかしら。

ちょいと田舎風の、もっさりとした量の多いヘアー( もちろん染めてない )で、

いつもうっすらと口元がほほ笑んでいて、でも、どちらかというと、無口かな。

身長は、173センチくらい、痩せても太ってもいないよ。

彼女いるのかなあ? ( 結婚はしていないな、きっと )

一人暮らしかなあ? ( 長年下宿しているような・・・ )


結構仕事は途切れずにあって、お兄さんは毎日いろんな工事現場に出動します。


月曜日、おにいさんはショベルカー1号と共に、公園に木を植える仕事です。

ショベルカーは、道路を走る事ができません。 ( へー!知らなかったー! )

なので、トラックに乗せて現場へいくのです。

もちろんトラックもおにいさんが運転します。 3号を運ぶ時なんか、とっても

大きいトレーラートラックに乗せるんですが、それもおにいさんが運転。

おにいさんは、特殊車両の免許をたくさん持っているようですね。

公園に着いたショベルカー1号とおにいさん。

1号は、小さいけれど、力が強く、ざっくん、ざっくん、あっという間に

深い穴を掘っちゃいます! ( おにいさん、なかなかかっこいい! )

植木屋さんが、掘った穴に木を植えます。


火曜日は、街で水道工事。


水曜日は、2号と一緒に少し遠くの山に行き、土砂崩れを防ぐ工事。

どんな坂道でも、キャタピラでどんどん登るんです。 ( すっごーい!! )


木曜日の仕事帰りには、いろいろな工事現場で働く、ショベルカーの仲間たちに

出会います。それは、川の泥をすくって流れを良くしているショベルカーとか

伐採した材木をトラックに積み込んでいるショベルカーとか、

鉄を磁石にくっつけて集めるショベルカーとか、なんです。


金曜日、おにいさんは出動前にショベルカー2号の部品を取り替えます。

” ざっくん ” の部品を、” がぶっ ” の部品に交換。 何をするのかな?

おにいさんと2号は、その日、古い倉庫を取り壊す仕事をするのです。

取り替えた部品で、ばりばりと倉庫の古い木の扉や壁を壊していくわけです。


さあ、土曜日、いよいよショベルカー3号の出番です!!

すごいよ、大きいトレーラートラックに乗ったショベルカー3号。

( 見開きいっぱいの大迫力! おにいさんの晴れ姿ー!! ) そしてそして、

駅前の大きな空き地に、工事の車が大集合!です。

大きなビルディングが建つのですって。

ショベルカーも大集結だぞーっ!! ( 俯瞰です、ここのページは。)

おにいさんとショベルカー3号、どこにいるか わかりますか?

いたいたっ、黄緑色の3号が、ざっくんざっくん、やってますっ。


日曜日。

おにいさんは、自転車で川べりの草むらに来ています。

ゆうゆうと流れる川を眺めて、気持ちのいい風に吹かれて、のんびりのんびり。

そして、車庫に並んだショベルカーたちも、

1号・2号・3号、今日はそろって のんびり、のんびり、のんびり。


こうして、おにいさんの1週間は終わります。



なかなか、いいよね。

地味だ。

おしゃれでもなんでもなく、肉体労働である。

が、しかし。 社会といおうか、みんなの毎日の暮らしに直結した仕事だ。

みんなの毎日を、楽しく、うれしく、暮らしやすくする、大事な役目。

このおにいさんは、ほんのうっすらと誇らしげに微笑んで、

普通のおにいさんたちは、だあれも持っていないスゴイ愛車、3台と共に

さくさくと働いているの、週の6日間を。

おにいさんは、こんな自分の毎日をどう思っているのかなあ。

悩んだりすること、あるのかなあ。

でもさ、すんごいお給料じゃなくっても、週休2日じゃなくっても、

長期のバケーションはなかなか難しくてもさあ、

毎日、仕事があって、

毎日、にこにこ健康に働いたお金で、ちゃんと食べていけて、

週に1回、お休みがもらえて。

おにいさんの暮らしぶり、わたし、とっても、いいなあと、そう思う。

地に足が着いている、そういうことです。

あと必要で、あと欲しいものってなにかしら?

そうねえ、おにいさんに、優しくてかわいいお嫁さんがきたら・・・・



ははは、たった1冊の絵本なのでした、なのに、

大人読みしてしまう、悪いクセ、ですね。


案の定やってきた、うちの息子の ” はたらく車ブーム ” 。

私の好みの絵では決してなかったのですが、ブームなので買い与えたところ、

思わぬ 心あたたまるステキな1冊でした。

私の世界もちょっと広げてくれた、『 ざっくん! ショベルカー 』。

同じ作者の ”はたらくくるまシリーズ ” 3冊が我が家にありまして、

息子の熱中ぶり ( 全ページ丸暗記 )に加えて、

密かに私も大好きです。 












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