あるスキャンダルの覚え書き

先月、蠍座で観ました。



ケイト・ブランシェットが好きなのです、私。

彼女はとっても美しい。 妖精のような女から、はすっぱなネエチャン役まで

見事演じます。 今回もよかった。 



この作品は実際の事件をもとに書かれた英国のベストセラー小説の映画化、とのこと。

実際の ” 事件 ” は 38歳の女教師と13歳の男子生徒の性的関係が発覚した、と

いうものだそうで、教師は彼の子供を産み 児童強姦罪に問われ ・・・・・!!

、と けっこうスゴイもの。

映画では 相手の男子生徒は15歳、最後にはその子の母親が怒鳴り込んできて

TVレポーターがわんさか押しかけてきてその関係はお終いとなるのですが。

騒ぎをおこしたシーバ ( ケイト・ブランシェット )は中産階級の家庭で夫と子供2人

で、一見幸せのように見える。 でも ダウン症の息子の世話、若くして結婚した歳のはな

れた夫、思春期の娘との生活に疲れ、自分では気付かない孤独を抱えている。

対する、シーバの赴任先の高校のベテラン教師、バーバラ ( ジュディー・デンチ )は

そうですねえ、非常にやっかいな人物。 恋人なし、家族なし、レズビアン傾向 大で

体の中に毒が詰まっているようなオールドミス。 深い深い孤独保持者。

この二人が友情を結び、お互いを癒し、めでたしめでたし・・・となるはずはなく、

ドラマはシーバの弱さ、もろさ、バーバラのねじれたどす黒い感情を芸達者な2人の女優

が演じ、息をもつかさずスリリングな展開で終焉へとなだれ込みます。

特にデンチの演技は見せますよー。 ”絶対にお友達になりたくない人物バーバラ ” を

惚れ惚れするくらい見事に演じていて ホント、素晴らしいっ!!!



どんなに恵まれた環境で育っても、どんなに愛に囲まれていても、自分に自信が持てず

心の中にぽっかりあいた穴を持つ、美しいけれどもろいシーバ。

シーバの情事を、弱みにつけこんでその全てを聞き出し、黒い表紙のノートに克明に

記録し、そしてついにはその禁断のスキャンダルをばらしてしまうバーバラ。

今や、容姿も性格も悪く、威厳はあるけれど愛されたことの無いバーバラ ・・・・・。

この映画もやっぱり、” 愛 ” の映画、なんですよねえ。

” 愛 ” というテーマの答えを求めて悩み、苦しみ、過ちをくり返し、永遠に巡り

続ける。 人間の可能性、その心の闇の奥深さよ!



神様が、 無数にある ” 愛 ” のサンプル入りの保存容器から、

「 ふんふん、今回は これ、そして そっちにあるちょっと色の悪いやつを一滴ずつ

混ぜてみようかな 」 なーんて感じで試験管にスポイトから ポタッ、ポタッ。

見る見る間に変色してきて、煙がたって、

今回もかなり強烈な化学反応が起きました、

そんな1本、でした。








 

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いとおしいもの

本来なら店頭には並べられないもの、

ちょっと歪んでいる

ちょっと滲んでいる

版がずれている、

版がうすい、かすれている、

昭和の前半くらいまでの量産ものの茶碗やコップなどにあるのです、よく。

たぶん同じ品番であろうガラスのコップ、並べると背の高さが違います。

ガラスの厚みも均一ではなくて、

しかも少々傾いでいたりもする。

気泡やごみも入っちゃっている。

また、磁器の碗・皿類は 印判の版の継ぎ目がものすごくズレていたり、重なってしま

っていたり。

現代では 不良品としてはねられて廃棄処分されてしまうような品が

なぜかいまだ割れずに はるばるこの小さな店にやってきた不思議。

当時だって きちっとつくられたA品はもちろんあって、

当時だって これらはB品だったのでしょうが。

きちんとラインぴったりにきれいに出来上がっている品はもちろんいいに決まっていて

きちんとすきっと端正で、良い。

”( 出来て )あたりまえ、のプロの仕上がり ” は もっとも尊敬するところ。

でも、なんていうか私はとってもいとおしいのです。

こんなB品達が。



商品、製品ではないものにも 心奪われるすてきなもの ありますねえ。

それは 手作りの品。

お母さんの作った赤ちゃんのよだれかけ とか 小さい女の子のワンピース とか。

手編みのセーター とか。 ハギレで作った自作ポーチ とか、etc. etc. etc.

キューピーにかぎ針編みで服を着せた ( 何故かフラメンコのドレスの様なのが多い )

もの なども いまや ” カワイイ! ” と心から思います。

縫い目はよろけていたり、編む目は不揃いで ゲージもとったのかどうか 。

でも そのよろけた縫い目、とばしちゃった編み目にグッとハートをわしづかみされる。

そこに感じられるのは 作る喜び! 創作の楽しさ!
 

お店をやっていると いろいろなお客様がいろいろな手作りを見せてくれて

その都度 とってもハッピーになって ちょっと刺激も受けたりします。



ゆがみ ずれ にじみ 穴あき よろけ つまり ゆるみ ・・・・・

なぜか この様なありさまの含まれたモノが 好きなんです。








 

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善き人のためのソナタ

先月観ました。

蠍座、満席でした。

驚くのは、この映画の舞台が1984年の東ベルリンだということでした。

” 1984年 ” というと ” まだまだ現在としっかり同じ範疇 ” という感覚で

そりゃあ携帯電話やパソコンやビデオやDVDなんかは存在していないに等しかったけど

そんなに遠い昔、懐かしい昔 ってほどじゃあないような気がしてしまうのですが、

そんな、 ほんのちょっと前、であるはずの1984年の東ベルリンの蓋を開けると

あっけにとられるほど、本当に古い時代そのまんま だったのです。

まるで第二次世界大戦後、くらいの時代感覚でしょうか。

国家保安局 ” シュタージ ”という絶対権力組織に完全に掌握されていた東ドイツ。

恐ろしいです、国家権力。

日本にいて普通に、まあ平和に暮らしていては ” 国家権力 ” なるものに触れる

機会はあんまりないけれど、この映画を観てみると、当時の東ベルリンでは

市井のひとびと全員が 毎日毎時間毎分毎秒 ” 国家権力 ” と一緒に生活していたよう

です。 思わず体に寒気が走ります。 

家中に張り巡らされた盗聴コード。 住民同士の密告 通報。

物語は その管理中枢シュタージの忠実な一員であった男がある盗聴をきっかけに

生きる喜び 人生の美しさ 自由な思想・・・というような ” 善きもの ”の存在に

接していき 彼の内面が変化していき ” 壁 ” 崩壊後も、もし死んでも気付かれない

だろうなあっていうような孤独で地味な暮らしを続けていた彼が、ひっそりと そして

大満足の報いを最後の最後で受け取ったことを 私達観客に静かに深く告げてくれる、

そんなかんじ、のものでした。

あの時男が命がけで守ったもの、 それは ある芸術家の人生、 そして自分自身の魂。

必要以上にしゃべらず、けっして笑わない。

国家に洗脳されていたかのような男が1番最後にみせる、心からのあの表情を観る為だけ

に この1本を観る価値あり! と言ってしまおう。

それくらい素晴らしい演技だった! です。



日本語タイトルの 『 善き人のためのソナタ 』って  でも どうかなあ。

宣伝チラシ、ポスター、こぞって謳っているコピーが

   「 この曲を 本気で聴いた者は 悪人にはなれない 」 。

そして ヘッドホーン姿の主人公 ヴィースラー。 これを目にしたら 10人中10人

が  ” そのソナタに聴き入っている悪人がかった男 ” と自然に想像すると思う。

でもー、聴いているのは ソナタかどうかは ? ですし、

まるで そのソナタを聴いたことがターニングポイントとなって

男が善き人へと変化したいったみたいに思わせるこのタイトル及び宣伝って

いかがなものだろう・・・・・。

映画を観たらわかるけど、ソナタはほんの一瞬で、しかも芸術家が初見で指でピアノを

つまびいてみる、そんなものなんですよお。 ソナタが重要なわけじゃあ全然ないの。

それを ” 善き ” 人、なんていう 昔風の表現を選んでちょっとかっこつけすぎ。

やりすぎ。 くさいぜ。 ( 原題は Das Leben der Anderen , 他の人達の生活、

他人の人生、他の生き方、そんな意味 )

と、まあ ちょっとケチつけてしまいましたが、本編は心にしーんと沁みる佳作でした。



 































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