ぞうのババール


この秋に 『 ぞうのババール 』 を、初めて読みました。

びっくりです!

こんなに楽しくて、とんでもなくて、ぶっ飛んでいるお話だったなんて!!

こと、絵本の世界では、動物の擬人化はあたりまえなんですが、

動物と人間の共存が、これほど当たり前に描かれているお話は、あんまりない。

例えば、こざるのジョージシリーズだって、黄色い帽子のおじさんはジョージと

仲良しだけれど、ジョージを動物園に入れるためにあふりかで捕獲して

つれて来るのでしたし、

うさこちゃんシリーズにも、フランシスシリーズにも、人間はでてこないし、

ピーターラビットのお話では人間は捕まえようとする敵ですし、

『 くるんぱのようちえん 』 だって、象であるぐるんぱのサイズと人間用の

サイズの違いが物語の要になっているわけだし・・・・・。

ところが、『 ぞうのババール 』 では、象という大型動物と人間の間に立ちはだ

かる全ての問題がすとんと、といいましょうか、バッサリと、といいましょうか、

切り落とされているんです!!

無視というよりも、作者の中に最初っからそのような障害など無いのでは?

まるで、生まれた村の違い程度の扱いです。

密猟者にお母さんを殺されたババールが

逃げて逃げて、ある街 ( パリみたいです ) に逃げてきて、

その街並みに驚き、交通機関に驚き、そして彼が一番おもしろかった、というのが

街角でであったふたりの紳士。

このページには、おまわりさんらしき太っちょと、シルクハットにフロックコート

革の手袋にステッキ、といういでたちの髭の紳士が立ち話をしているのを、

そのよこで象のまんまの・・・・つまり、4本足で裸んぼうのババールが眺めて

いる、という図が描かれております。




         「 にんげんって ふくをきて

             すてきだなあ

           ぼくもひとつ あんなのを

             きてみたいもんだ.

        だけど どうしたら かえるかな??? 」



このような独白があって、そしてその次に、



       うまいぐあいに ひとりの おばあさんに であった.

          ぞうにきもちなら なんでもわかる

            大がねもちの おばあさんだ.

      ババールが しゃれたふくを ほしがっていることも

              すぐ わかってくれた.

         おばあさんは ひとを よろこばせるのが

               だいすきだった.

        そこで さっそく ババールに さいふを くれた.


             ババールは おれいをいった.

             「 ありがとう おばあさん 」




そうしてババールはすぐさまデパートへとんでいき、

エレベーターが気に入っておもしろがって10ぺんも上り下りし、

エレベーターボーイに、これはおもちゃではないので、おかいものはあちらで・・

とていねいに注意され ( ここまでババールは裸の象の姿のまんま ) 、

次のページを開くと、

「 さあ かいものだ! 」 という級数アップの大文字の一行があり、

ワイシャツ、カラー、ネクタイ、背広にズボン、それから、しゃれた山高帽、

おしまいに、靴、と、販売員をかしずかせながら買いまくりますが、

デパートにはあたりまえに象サイズのものが揃っているようですし、

販売員はこれっぽっちの疑問もなく象のお客の相手をしているのでした・・・。

お買い物の締めくくりとばかりに、記念写真をバシャッ!!!

その時撮った写真までが、ちゃーんと載ってるのです!!!

そのおしゃれなことといったら、まあ!

以降、ババールは全て着衣 ( いつもオシャレ ) です。

『 ぞうのババール 』 には、副題として小さく 『 こどものころのおはなし 』

とあり、おばあさんとの出会いによって、かなりのリッチな文化生活を送るように

なったババールが、ぞうのくにに戻り、ぞうの王様になるまでの、シリーズの最初

の1冊なのですが、まあ、まあ、

その展開の問答無用の速さといい、

象と人間のあまりの自然な共存具合といい、

サラサラっとしてたよりなげな絵 ( 古きよきフランス的なものがたっぷりの

挿絵で、細部まで描かれていて思わず萌えます!) の素晴らしさといい、

あきれるほどオモシロイ!!!! オモシロすぎーっ!!!

もっと詳しくご紹介したいけど、長くなるのでやめときますが、

どうやら作者は、子供の発想をそのまんま忘れずに大人になった人なのでしょう。

でないと、こんなすごいお話、書けませんよ。

そんなに愛と夢に満ち溢れた世界は描けない。



と、いうわけで、私はこの秋に、ババールと出会い、ジャン・ド・ブリュノフ

( ジャン作は5作までで、刊行されているその後の5作・・もしかしたらもっと

増えているかも・・は、息子のロラン作 ) という鉱脈を見つけたのでした。

また、同時に、矢川澄子という油田も掘り当てました。

矢川澄子の、きりっとした簡潔な訳文は、うさこちゃんシリーズにおける石井桃子

と並び、物語と翻訳者のこの上ない幸福な組み合わせでありましょうし、

ババールシリーズの他の翻訳本のタイトルを眺めるだけで、矢川澄子ものは

必読・必携もの。

ババールのお話は、本国フランスで国宝になったそうですね。

世界中の子供達 ( オトナ達 ) に今も愛を伝え続けるババール王の物語、

退屈している人、落ち込んでいる人、是非手にとってほしいなあ。

わくわくする気持ちがよみがえるよ!























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