レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ジョウゼフ・アンドルーズ

2011-10-16 05:33:23 | 
『ジョウゼフ・アンドルーズ』 岩波文庫上下巻
 18世紀の英国のヘンリ・フィールディングの小説。新刊というわけでもないけどこれをいま読んだことにたいした理由はない。同じ時代のリチャードソンの名前は、『クラリッサ・ハーロウ』『パミラ』で有名・・・少なくとも私は小説論の講義で引用されていてきいたし、ものの例えで「クラリッサの二の舞」なんて言いまわしは文学作品でも目にしてきた。こちらは読んでいないけど、薬で眠らされててごめにされて自殺する女であるらしい。逆に『パミラ』は、金持ちのドラ息子に誘惑されるけどそれを毅然とはねつけて、ゆくゆくはその男を感化して改心させて玉の輿にのるという話であるらしい。「淑徳の報い」という副題がついていて、これのしめくくり部分、編集者の語りで、小説の目的は教訓を与えること云々と書いていある。これと、本居宣長が述べた、物語とは「もののあはれ」を描くものであり、それに教訓を求めることは、花をめでるべき桜を切って薪に使うようなものだという論と対比させて紹介されていた。
 --フィールディングの『ジョウゼフ・アンドルーズ』は、それへの対抗意識で書かれたということで、主人公はパミラの弟という設定になっている。
 ジョウゼフは、庶民の身だけど心がけの良い青年。おまけに見目形もいいので、奉公する屋敷の奥様にも目をつけられる。夫が死んで寡婦になった奥方が誘いをかけてくるのを拒絶したので、逆恨みでクビになる。(旧約聖書のヨセフは当然重なっている) 彼には故郷に結婚の約束をした娘ファニーがおり、彼女に会いに行くまでのトラブル、再会してからのトラブル。懲りない奥方からの横槍。ファニーが実はジョウゼフの妹?疑惑が生じて、--事実、ファニーはジョウゼフの家から誘拐された子だったけど、その代わりにおいていかれた子がジョウゼフで、さらに彼はいい家からさらわれた身の上であったことが判明して大団円。
 けっこう短い間の出来事のはずだけど、次々事件が起こるし、作者が読者に意見陳述するし(昔の小説にはありがち)、出生の秘密なんてベタな展開まで出てきて、古風な楽しさがけっこうあった。
 ファニーもやたらと男に狙われてトラブルのもとになるけど、小説のキャラとしてはあまり面白みがない。それよりは、ジョウゼフに懸想する奥様や女中のほうが精彩が感じられた。 
 それにしても、男が貞操を守ろうとする状況ってやはりどこか喜劇的になるものだなと再び思った。『ネロの都の物語』では、主人公カエソが継母やネロの毒牙から逃れようとしたことが、本人や周囲の人々の死につながって悲劇だった。あれに対しては、おまえがおとなしく食われていれば誰も死なずにすんだんだろうが!と言いたくなったのだけど。--いや、「据え膳食わぬは~」なんて言葉を主張する気はぜんぜんないし、男が操立てしたり女をふったりすることはれっきとした権利だと思っているけどね。それなのに、退けた男が恨まれるのは当然みたいな描かれ方をするのは不当だろ。

 これより先に『パミラ』を読むほうが正しい順番だったけど、まあしかたあるまい。
 図書館にある『パミラ』は、筑摩の「世界文学大系」の中で、大きい重い本で、別の作品もかなりの比重を占めているようだ。『トリストラム・シャンディ』というのもよく目にするタイトルで、借りたならばこれも読みたいけど時間かかりそう・・・。

 時間かかるといえば、まえに新聞の書評で見て興味を持った『ウルフ・ホール』という小説、ヘンリー8世の時代を扱った長編、図書館に入ったら読もうと思った。それを思い出したので検索したら入ってるので予約した。しかし、上下巻でそれぞれ500ページくらいあるのだ。「セット予約」にしたのだけど、上巻が予約順番が「9人」で下巻が「7人」なのはなぜだろう。いっぺんにまわってきたら読めるかどうか心配なのでまず上巻だけにした人がいるということか? 私も上巻だけにしておいたほうが無難かなぁ・・・。
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