レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

雨の季節に読もう『傾ける海』

2014-06-08 20:20:21 | 
 井上靖作品再読中。
「全集一覧 」

 70年代に『井上靖小説全集』32巻が出た。このころ存命だったので、その意味でも「全集」はありえなかった。死後に『井上靖全集』が出て、小説に限らずに詩も戯曲もエッセイも含んでいるが、長編小説74本に関しては半分近くが漏れているのである。リストを見ると、『小説全集』にも『全集』にも入っていない作品は19本ある。『座席は一つあいている』というタイトルだけ初めて見た、あとは全部読んでいる。

 『小説全集』の17巻は『群舞  傾ける海』、『全集』にない二つの長編が収められている。
 前者はーーカメラマンである青年がヒマラヤから帰国したら、自分が雪男の写真を撮ってきたことにされている。否定するが、彼の思いを寄せる人妻がそれで賭けをしており、彼女の身の上が危うくなるという事態になっていたので話が奇妙な方向へーーという話。
 後者はーー去っていった女へ真珠を贈ろうとして志摩へ行ったがそこで台風に巻き込まれ、非常事態で人助けしているうちに憑き物がおち、彼の出会ったワケありの人々も思いがけず人生が変わっていったという話である。
 ユーモラスな味の二作。
 後者は「伊勢湾台風」が背景になっている。これと比べてはおこがましいが、先日、雨の日の電車内で読んだので気分にますます合っていた。

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