
7月20日にジェフ・ベゾスが自前のロケットで行う初の宇宙飛行を目前にして、ヴァージン・ギャラクティック社の会長リチャード・ブランソンが自身を含む6名で7月11日に宇宙飛行を行うと発表した。

左からデイブ・マッケイ(チーフパイロット)、コリン・ベネット(リードオペレーションエンジニア)、ベス・モーゼス(チーフ宇宙飛行士インストラクター)、リチャード・ブランソン(ヴァージン・ギャラクティック創設者)、シリシャ・バンドラ(政府問題および研究業務担当副社長)、マイケル・マスッチ(パイロット)(photo: AP)
リチャード・ブランソンが乗り込むスペースシップ2号機「VSS Unity」は2018年12月13日に高度82.7kmに到達して「史上初めて宇宙に到達した民間の乗客を乗せるための宇宙船」と認定された機体である。

2019年2月22日にはパイロット2名の他にベス・モーゼス(チーフ宇宙飛行士インストラクター・初の女性民間宇宙飛行士。上記写真中央)をパッセンジャー・キャビンに乗せて89.9kmへのテスト飛行を成功させた。今年の5月22日には3回目となるテスト飛行で2名のパイロット(Kelly LatimerとMichael Masucci)とキャビンに2名のクルー(CJ SturckowとDave Mackay)を乗せて高度89.23kmに到達した。上記写真は3回目の飛行の様子である。
そして今回はパッセンジャー・キャビンに定員である4名を乗せて行う最終テスト飛行となるが、あえてリチャード・ブランソン自身が乗り込んでブルーオリジンより先に宇宙に行くことはジェフ・ベゾスへの対抗心以外の何物でも無い。
その気持ちは良くわかる。本来、民間宇宙旅行ビジネスをリードしていたのはヴァージン・ギャラクティック社であり、すでに500人を超える予約者が搭乗を待っている状態である。ブルーオリジンに先を越させる訳にはいかないのである。2014年に起きたテスト飛行での墜落事故(パイロット1名死亡)がなければもっと早い時期に商業宇宙旅行が軌道に乗っていたはずなのだから…
7月11日の飛行はLIVE中継を行うと発表があった。出発は日本時間の7月11日22時である。民間宇宙旅行元年である2021年のメインイベントがいよいよ始まる。7月20日にリフトオフするブルーオリジンにもここに来てサプライズの発表があった。
なんと、ジェフ・ベゾスが名誉ゲストとしてウォーリー・ファンク(82歳)を招待したのである。

ブルーオリジンのツイッターより
ウォーリー・ファンクは「マーキュリー13」の一人である。アメリカ初の宇宙飛行士となる「マーキュリー7」の影に女性メンバーで構成された「マーキュリ-13」がいたことは今回初めて知った。
彼女らは厳しいテストに合格して女性宇宙飛行士候補となったが結局女性であるがために宇宙へ行くことは出来なかった。アメリカ初の女性宇宙飛行士は1983年にSTS-7で飛行したサリー・ライド宇宙飛行士であるが、その時はすでに年をとっていたためマーキュリー13の彼女たちが宇宙へ行くことはなかった。しかし、彼女たちから宇宙への情熱が冷めることはなかった。
ウォリー・ファンクは79歳の時に「星に囲まれて浮かぶのが、私の目標」と手が届くはずだった宇宙への思いをいまだに熱く語っている。現在マーキュリ-13で存命しているのはウォリー・ファンクとジーン・ノラ・ジェッセンの2人だけである。ジェッセンは黄斑変性症のためパイロットを引退している。
ウォリー・ファンクは長年の夢を叶えて(みんなが果たせなかった思いも胸に秘めて)7月20日に憧れの宇宙へ出発する。
余談であるが、ウォリー・ファンクは宇宙飛行士テストで伝説の宇宙飛行士ジョン・グレンより高得点を取っていた。そして女性が宇宙飛行士になることを最も反対していたのがジョン・グレンである。今回ジョン・グレンが持っている最高齢宇宙飛行士の記録(77歳)を塗り替えてウォリー・ファンクが最高齢宇宙飛行士(82歳)となるのだから、ジェフ・ベゾスも粋なことをしてくれるものである。