yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

年輪思考

2021-02-19 06:14:16 | 文学
年齢を援用しながら、その年々の行動様式を論考する手法は、「年輪思考」とも呼ばれます。
幕末の儒学者、佐藤一斎の「言志四碌」は味わいのある本です。
「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず。」また、別の言葉もあります。「余自ら視・観・察を翻伝して姑(しばら)く一生に配せんに、三十已下(いか)は、視の時候に似たり。三十より五十に至るまでは、観の時候に似たり。五十より七十に至るまでは、察の時候に似たり。察の時候には当(まさ)に知命・楽天・に達すべし。而して余の年齢今六十六にして、猶ほ未だ深く理路に入る能はず。而るを況(いわん)や知命・楽天に於てをや。余齢幾ばくも無し。自ら励まざる容(べ)からず。

一斎先生は、八十八歳で逝去されましたから、六十六歳で「余命いくばくもない」ということにはなりませんでした。それはともかくとして、人間の判断には、年輪が大きくモノをいうこと、そして一斎先生が老境に達しても絶えず自分のいたらざるところを反省しておられた謙虚な姿勢、この二つのことがよくわかる良い言葉であるにちがいありません。

           小島直記「逆境を愛する男たち」新潮社




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