中国、古代の殷王朝の創始者の湯王は、洗面盤に、「苟日新、日日新 又日新」「苟(まこと)ニ日ニ新タナリ、日日新タナリ、マタ日ニ新タナリ」という言葉を彫りつけて、毎朝唱えて自戒の言葉にしたといいます。このような「新」への願いは、極東古アジアに共通したものであったかもしれません。四書、五経の一つ、「大学」にも「格致日新」という語があります。「格致日新」とは事物の道理を追求して知識を獲得し、日々新たに向上していくことを言います。この言葉は、会津の藩校「日新館」の命名の由来でもあります。伊勢神宮で20年毎に「遷宮」を行い、社殿を新しい用材で作り換えるのも、「日に新た」を実現したものです。
司馬遼太郎「この国のかたち 五」 文春文庫
司馬遼太郎「この国のかたち 五」 文春文庫