yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

縦に書いて 縦に考えよう

2012-06-05 05:04:04 | 文化
古来、東洋人は文字を縦に書き、紙の中に「天と地と正中線を持つ、一つの独立した世界」を見出してきました。
手紙、葉書、賞状、正式文書、公文書、辞書、六法全書はすべて縦書きであり、新聞もそうです。ただし、ビジネスの世界では、パソコンが普及したためか、横書きが縦書きを席巻しています。

表題の意味について訝しく思った読者がおられることと思います。早い話、90度回転するだけで縦は横になり、横は縦になりますので 本質的には「縦も横も変わらない」という考え方もあります。しかし、実際には、縦を90度回転させても横にはなりません。印刷活字で一般的な明朝体をよく見ると縦画は太くて横は細いのです。清の時代に卓越した書論を遺した笪重光(だつちょうこう)は、「筆の執使は横画に在り。字の立体は堅(縦)画に在り。」、「筆の運用による文字のバリエーションは横画が作る。それに対し、縦画は文字を立ち上げる」、「文字の横画と縦画は役割が違う」と言っています。縦と横では言葉が喚起するイメージも違います。「横槍」「横恋慕」「横取り」など、横にまつわる言葉は負のイメージを喚起させます。それに対し、縦にまつわる言葉はあまりありません。このように、縦と横は違うと考えられています。
では縦と横はどのように違うのでしょうか。縦とは、天地を結ぶ方向です。天がない所に縦はあり得ません。そして横とは縦に直角に横切る方向です。天地が意識されて初めて縦ができ、そして横ができるのです。縦書きとは「天地に働く重力を受け止めること」、「天を意識すること」、「天との対話」を意味します。「縦書きで書く時、私達は必然的に天を意識せざるを得なくなり、気が重くなります。そこに緊張感が生まれるのです。」
若い人の話でも「縦は気が重い。しかし縦は文章がまとまる。横は気楽に書ける。しかし、収拾がつかない。」とありました。
東アジアの言葉は基本的に、「縦に書き、縦に話す」という構造を持ちます。我々にもこれが自然なのでしょう。
かく言う私のブログは横書きですので、首尾一貫しておりませんが、パソコンを使った現代の文章の慣習に従って横書きを採用させていただいています。

石川九陽「縦に書け 縦に考えよ」 学士會報
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