山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

収穫の秋から

2010-10-17 02:20:46 | 宵宵妄話

 

 実りの秋は収穫の秋でもあります。このところ雨の降らない限りは、毎週1泊2日で我が家からは50kmほど離れた石岡市の八郷地区にあるRVランドの農園に農作業のボランティアに出かけています。これが実に楽しみで、毎回旅に出かけるような気分なのです。ボランティアを開始したのは5月の連休明けからでしたが、7月下旬から8月一杯は旅に出ていて農事のことからは離れていましたが、戻ってからは暑さの酷い時は避けて、最近は安定的に通えています。

 5月の時に何種類かの野菜などを植えたりしましたが、それらの幾つかは酷暑に耐え切れずに姿を消してしまったものがあり、ちょっぴり残念に思っています。しかし猛暑を力にして育った作物もあって、旅から戻った9月ごろには花オクラが全盛期でした。オクラと言えば花が咲いた後の実を食べるのが普通ですが、花オクラは花を食べるのです。農場には農場主のAさんも常駐というわけではないため、花オクラの大半は一夜花として食に使われることもなく、畑の一角を見事な大輪で飾るだけでした。何しろ20株ほどもあるので、積んだ花を一時に全部食べるというのは難しい状況で、泊りの日にはAさんと二人で贅沢な花のご馳走を満喫したという次第です。

 
花オクラの咲いている様子。右は摘んだ花の様子。オクラの花よりもかなり大きく美しい。このようなものを食べてしまうのが許されるのか?心配後無用です。先ずは食べてみることです。はい。

 
ところで、花オクラというのはどうやって食べるの?と言う疑問が、まだ食べたことがない方には浮かぶことかと思います。ちょっと紹介しましょう。概して我が国では(外国のことは知りませんが)花をもろに食べるという発想は少ないようです。董立ち(=蕾から花になりかけた状態)した頃を食べる野菜はありますが、花びらそのものを食べるというのは少ないと思います。思いつくのは食用菊くらいのものです。さてその花オクラですが、先ず巨大な花びらを茎の所から摘んで、花の元の部分を千切って、花びらをバラバラにします。花の中には小さな蟻が花の蜜を求めて入っていることが多いので、注意してそれらを取り除きます。集めた花びら(数十枚ほど)を包丁でざく切りにした後、更に細かく切ってから、俎板の上でトントンと切り刻みます。しばらく同じ作業を続けていますと、オクラと同じ様にぬめりがでてきます。これを包丁で寝返しながら数回トントンを続けます。するとぬめりの塊のようなものが出来上がります。これでOKです。この塊を小丼にとって、ポン酢や白だし醤油にちょっぴり酢をたらすなどして食するのです。また、花びらをサッと湯がいてもオクラと同じ味が出てきますので、ポン酢や白ダシで食べるといいでしょう。基本的にはオクラと同じものですから、形が花となっているだけで、食味はそれほど変わらないといって良いと思います。花オクラを売っている店は都会ではなかなか見つからないと思いますが、もしお目にかかったときには是非試してみては如何でしょうか。

 少し回り道をしてしまいました。今回の秋の収穫の本命はサツマイモでした。その話をします。サツマイモは3種類を植えました。私が用意した苗は、ベニアズマとムラサキサカリの2種、そしてもう1種はIさんによれば案納芋ということでした。ベニアズマというのは食用のサツマイモの代表的な品種で、黄色のホクホクとした食感の芋です。ムラサキサカリはまだ食べたことはありませんが、紫芋の一種で、身が濃い紫色をしているとのことです。又安納芋は、本場種子島などのプレミアム付の有名品種で、良く手に入ったものだと内心驚いたのでした。Iさんはその苗を知人から大量に分けて頂いたとの話でした。

 サツマイモは暑さに強い作物です。ヒルガオと同じ仲間だといいますが、その花を見るまではとても同じ仲間だとは思えないほどです。ハマヒルガオなどは砂地に根を張って頑張って咲いていますから、サツマイモも元々痩せた土地などの厳しい環境でも育つ頑健な作物なのではないかと思います。今年程度の暑さには十二分に耐える力を持っているに違いありません。ということで、旅から戻ってみてみると、どの畝もしっかりと蔓を伸ばし、葉を繁らせていました。

 
ツマイモの花。右は北海道は浜頓別町のベニヤ原生花園のハマヒルガオ 。親戚だけあってさすがよく似ている。しかし根の育ち方は随分と違うようだ。

ツマイモの収穫は、子供の頃の感覚ではいつも中秋の名月にダンゴと一緒に初掘りのものをお供えするのが我が家の慣わしだったように記憶しており、先月下旬に3品種それぞれ1株ずつ試し掘りをして見ました。そしてそれらを何本か一緒に茹でて食べてみました。ムラサキサカリの紫色は強烈で、外の芋たちの色合いを脅かす存在でした。ベニアズマはまあまあの実り具合でしたが、安納芋と呼ばれる奴はどうもそれらしくない出来栄えで、まだ未熟の感じがしました。やはりもう少しそのままに置いておく方が良かろうということで、今月の今まで延ばしていたわけです。

 9月の彼岸過ぎから暑さが一段落すると、畑の多くの作物に虫が多量に発生して、サツマイモの葉もかなり虫に食い荒らされる状況となりました。虫たちもあまりの暑さに食欲を無くしていたのか、或いは増殖を休んでいたのか、とにかくあっという間に葉が蝕まれてゆくのです。自然界の生物の鬩(せめ)ぎ合いの凄まじさを見る思いがします。それで、まだ少し早いかなとは思いつつ、本格的な収穫作業を開始したというわけです。

 蔓を払って、一株ごとに丁寧に掘り起こしましたが、どの株も思った以上に順調に育っており、満足できる状況でした。先ずはめでたしめでたしという感じです。しかし実際に食べていないと、本当にいい出来具合かどうかは分りません。それで今度は紫色の侵略を避けるために、各品種毎に大きく輪切りにして蒸かして食べることにしました。その結果は上々でした。先ずムラサキサカリは今まで食べたどのムラサキ芋よりもホクホクして、冷めても食感は抜群でした。ベニアズマはこれはもう何の問題もありません。形も収量も満足できるものでした。ところがもう一つの安納芋は、どうやらムラサキ芋の一種だったらしくて、前回の試し掘りの時は未成熟で中途半端な色でちょっぴり疑問を抱いていたのですが、今回成熟したのを食べてみたら、何と普通のムラサキ芋ではないですか!安納芋なら橙色で、糖度も抜群のはずなのですが、そのような気配は全く見られず、どう見ても只のムラサキ芋そのものだったのです。Iさんが聞き間違えられたのか、或いは分けてくれた知人の方が勘違いをしておられたのか、その真因は判りません。安納芋には大いに期待していたのでちょっぴり残念ですが、そう簡単にこの地で出来るはずがないと思えば、不当な欲をかくことは禁物なのかも知れません。安納芋は幻でいいのだと自分に言い聞かせた次第です。

 というわけで、我が家では我一人がこのところ連日サツマイモを主食にしています。子供の頃にあまりにも毎日サツマイモを食べさせられた記憶が残っていて、大人になってからは、その反動なのか殆ど食べることがなかったのですが、この歳になって再びサツマイモ攻めに甘んじているのは、我ながら不思議だなと思っています。家内も倅もほんの少し食べればそれでもういいというので、残ったものの処理は自分が一手に引き受けているという状況です。

それにしても、しみじみ思うのは、サツマイモの味がその昔とはとんでもないほど上等になっていることです。焼き芋屋の客寄せ文句に「九里(栗)より美味い十三里半」(九里+四里=十三里+α)などとありますが、今のサツマイモには、栗を超えた紫色のホクホクのものが現われたりしていて、子供の頃の品質レベルとは格段に違っていることに驚かされます。そのことに感謝する一方で、食味の殆どが甘さの方に向かってしまって良いのかなとの心配を覚えながら、且つ昔のあの不味さをもう一度味わってみたいなどとも思うのです。老いて来た証なのかもしれません。収穫の秋の断片所感でした。

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