山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

八犬伝めぐりへの挑戦

2010-02-08 00:54:57 | くるま旅くらしの話

「南総里見八犬伝」といえば、曲亭馬琴(=滝沢馬琴)が27年の歳月をかけて書き上げた、江戸時代を代表する読み本の一つです。馬琴はこれを48歳の時に書き始め、75歳で上梓を見たということです。しかも途中両眼を失明するという大変な事態となりながら、嫁に口述しながら完成させたというのですから、その執念たるや尋常なものではなく、もはや己の描く物語の執念に動かされての取り組みだったのだと思います。

早春の花咲く南房総は、真に以ってその八犬伝の舞台なのでした。南総里見八犬伝は大変ややこしいストーリーで、最初から最後まで読み切るのが難しい読み物です。小学生の頃少年倶楽部だったか譚海だったかよく覚えていませんが、友達から借りたそのような雑誌か何かで、初めて読んだような気がします。ストーリーが混み入っていて、よく覚えていなかったのですが、数年前に家内がどういう風の吹き回しなのか、この本を買ってきて読んでいるのを、珍しげな顔をして黙って見物していたのですが、昨年それを取り出して、もう一度読んでみようと思ったのでした。現在の私の読書の仕方といえば、特別の本でない限り、いつも寝る前の眠り薬の代わりに読むことにしていますので、この八犬伝もそのような読み方をしたわけです。現在読んでいる坂の上の雲も読み始めて一ヶ月近くになって、ようやく第6巻の終わりにかかっているところですが、この八犬伝もものすごく時間がかかって、読み終えるまでに3ヶ月くらいかかってしまったと思います。

読み出すと直ぐに眠くなってしまうことが多く、眠りから醒めて気が付いたら本をしっかり握ったままだったということが何回かあります。普通ですと、力が抜けて本を取り落とすのだと思いますが、私の場合はどういうわけなのか、眠っていても律義にしっかり握ったままなのです。そのようなわけで、事前に読んだ内容を殆ど覚えていないものですから、もう一度ちゃんと覚えている箇所に戻って読み直しをしなければならず、いつ果てるとも知らない感じで何度も読み続けたのでした。結局つなぎ足しばかりの読み方でしたので、未だ釈然としないというのが正直な読後感なのです。

南総里見八犬伝は、曲亭馬琴が中国の4大奇書の一つの水滸伝をモデルに構想を練って書き上げたものといわれていますが、あの水滸伝も読むには苦労しました。4大奇書の西遊記、金瓶梅、三国志の全部を一応は読んでいますが、何しろいずれも超長編なものですから、読み終わるまでに時間がかかりすぎて、メモでも取りながら読まないと全体を見失う感じのものばかりです。それらの本に比べれば八犬伝は短いといえますが、それでもかなりのややこしさがあります。

この物語は勿論作り話であり、今では八犬伝めぐりなどという観光コースが作られていますが、本気になってこれを見て回るなどという考えは勿論ありません。でも今回は冷やかし半分で、途中にある縁(ゆかり)の地というのを覗いてみようと思ったのでした。今までにも何回かそれらしき案内板を見かけていたのですが、その気になったのは今回が初めてなのです。

大山千枚田を堪能したあと、県道を適当に通って館山の方に向かい、途中にある旧三芳村(現南房総市)の道の駅:鄙の里で休憩するつもりでコースを選んだのでした。山の中をしばらく走って、小さな川(平久里川?)沿いに広がる狭い盆地に出ると、犬掛という地名のエリアに「八房伝説の地」というのがあると案内図にあり、そこを訪ねることにしました。

ところが案内図と現地とには大きなギャップがあって、現地の案内板は古くなっていたり、小さかったりしていて、うっかり見落としてしまうようなものでした。たちまちそれに引っかかり、疑問を抱きながらもう一度戻って、ようやく入口を探し当てたのでした。ところが車で入って行くと、たちまち行き止まりのような細道となり、慌てて車をUターンさせて、少し広めの道幅の道脇に停め、そこからは歩いて行かなければなりませんでした。

どんな所かと行ってみると、八房というのは犬の名前で、物語の初めに登場する里見城主義実の愛娘伏姫の愛犬となるのですが、その八房の生まれたのがこの地だということです。この犬は生まれてまもなく親や兄弟を狼に襲われて亡くし、生き残ったものをどう育てるかと飼い主の百姓技平が案じていたところ、仔犬はその後も丸々と太って育っているのを不思議に思い、ある夜そっと覗くと、何と老いた狸がやって来て乳を与えているのを知ったということです。それで狸に育てられた犬ということで有名になったのを聞きつけて、城主の義実がこれを貰い受けて伏姫の愛犬にしたということです。

   

名犬八房とそれを育てた狸の物語の像。何犬なのか、日本犬には違いない。(千葉犬などと洒落てはイケマセン)凛々しい風貌で、よく出来ていると感心した。

直ぐ傍に春日神社という小さな社があり、その鳥居の近くに八房伝説の由来を書いた案内板があました。その脇に名犬八房とそれを育てた狸の銅像が建てられていました。この地が犬掛(昔は犬懸と書いたそうな)と呼ばれているのも、何か八房伝説と関わりがあるのかもしれません。作り話なのか、本当にあったことなのか、現地でそれらを眺めていると、どちらでも良いような気持ちになってくるのが不思議です。

その後は、八房の銅像とは反対側にある里見氏の墓というのへ参詣することにしました。戦国時代このあたりで里見氏の身内同士で合戦が行なわれたということです。犬掛の古戦場というわけですが、今は山脇に小さな田んぼが幾つか広がるだけの静かな場所であり、その山裾に里見氏の墓というのがありました。里見氏というのは、豊臣時代に栄華を誇ったようですが、江戸になって外様の憂き目を喰らって、安房の領地を没収され、倉吉(鳥取県)に国替えされたということです。近年になってから、その倉吉の有志が育てた桜が寄進されて、墓に連なる土手に里見桜と名付けられて何本か植えられて育っていました。春になったら、もう一度その桜を見に来たいなと思いました。

   

里見義通、義豊の墓。明治になってからここに移されたとのこと。古戦場の傍にありまさに「兵者(つわもの)共が夢のあと」の感じがする。

次はメイン県道に戻って、すぐ近くにある滝田城跡へ行ってみることにしました。滝田城は八犬伝の中では城主里見義実の居城だったとされる所です。ここは何度も通ってその案内板などに気づいているのですが、まだ一度も停まって、きちんと読んでいませんし、城跡へも行ったことがありませんでした。滝田の郵便局のお許しを得て駐車場に車を入れ、歩いて城跡を目指したのですが、かなりの急勾配続きで、ようやく木立を抜けてそれらしき所まで辿り着いたのでしたが、県道の方から見上げた平になっているように見えた箇所が城跡ではないかと登って行ったのですが、実はそこは馬場の跡であって、城はそのずっと上の方に造られていたのでした。更に厳しい登り坂が続いており、足元にお城への入口と書かれた札が建っていました。重い身体をふうふう言いながらやっとの思いで登ってきた家内は、それを見ると即座にその先の坂を登ることは断念したようで、「あなた一人で行って来たら」の一言でした。

山城というのは、平城とは異なり、天険の地を利用して造られているため、楽々と本丸まで観光気分で行けるというような所は少なく、必ず途中で汗をかかなければならないというのが殆どです。この滝田城も例に漏れるものではなく、やっと辿り着いた登り口から先は、あとどれくらい時間がかかるのか見当もつかず、それほど入れ込んで城跡に立ってみたいというわけでもありませんので、自分も今回は登るのを止めることにしました。

家内にはもう少し身の軽さを実感できるレベルまで身体を何とかして欲しいなと思いました。あとで知ったのですが、どうやら一番きついのを選んだらしく、もっと楽なコースがあるのを知り、そこへ行こうとしたのですが、道が判らず諦めました。でも、いずれ仕切り直してチャレンジしたいと思っています。

今回は、結局先の二箇所だけの巡りの成果だけとなりました。道の駅で休んだ後、館山の博物館に行けば何か参考になるものがあるのではないかと思い、そこへ行こうとしたのですが、その後行く道を間違えたため、面倒くさくなって今回の訪問を止めてしまったのでした。真にいい加減な八犬伝めぐりの始まりでした。でも、この程度でいいのだと思っています。房総にはこれからも何度も行く機会がありますので、順次発見の楽しみを実現してゆきたいと思っています。

 

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この度、前著「くるま旅くらし心得帖」の続編として、自作による「山本馬骨のくるま旅くらし読本」を刊行しました。副題を「60歳からのくるま旅くらしの楽しみ方」として、くるま旅くらしの意義、考え方、楽しみ方の理屈や事例などを紹介することにしました。又付録として、くるま旅くらしに関する何でもQ&Aを付加しました。これからくるま旅くらしを始めようとされる方には、これ一冊で旅の要領の凡そがお解かり頂けると思います。手作りですので、初版は20冊です。1冊1000円(送料・振込手数料込み)でお頒けいたします。

ご希望の方は、メール(pdl-taku.9930@themis.ocn.ne.jp)にて〒、住所、氏名、冊数をご記入の上お申し込み下さい。お支払いは、同封の振込用紙にて最寄の郵便局にてお振込下さい。メールのPdllはLの小文字です。

※より詳しく内容をお知りになりたい方は、私のホームページ「山本馬骨のくるま旅くらし元帳」にアクセスしてご覧下さい。アクセスはこのブログの右側にあるブックマーク欄から出来ます。

 

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