山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

旅車の契機は大雪から

2014-02-08 11:41:38 | 宵宵妄話

  予報通り、朝起きて見ると雪が降っていた。まだ大して積もってはおらず、車の屋根に2センチ足らずの高さに過ぎない。しかし、今夜の真夜中まで降り続けるというから、明日の朝は大変なことになるのかもしれない。関東平野の真ん中辺りに位置する守谷市辺りは、滅多に雪が降ることも積もることもない。積もっても、数日の内に吹きだまりや日陰の場所を除いては、消え去ってしまう。しかし、今日の雪はそのようないつもの在り様を飛び越えてしまいそうな予感がする。

 予報では、20年ぶりの大雪になるとのこと。20年ぶりとは、いつのことだったのか。そのような記憶を思い出そうなどとは思わないこの頃の暮らしぶりなのだが、ふと気になって振り返ってみた。20年前といえば、平成6年(1994年)のことである。家内に「あの時の雪だね」と言われて、思い出した。とんでもない事件ともいうべき出来事を。その時のことは、今でもかなり強く自分の人生の記憶に残っている。なぜなら、くるま旅くらしなどを始めるようになったきっかけが、あの大雪にあるからである。今日は一日中家の中に閉じ込められそうなので、その辺ことを書いて見たい。

 平成6年の2月12日、その前日が建国記念の日だった。12日は土曜日、3連休を利用して久しぶりに郷里の常陸大宮市(当時は大宮町)の実家を訪ねたのだった。勿論まだ現役であり、両親も健在だった。当時は川崎市の登戸近くの中之島という所の高層マンションに住んでいた。東京を横切って、車での帰省(このことばが相応しいかどうかは判らないけど、自分的には親の家に帰るというのはやっぱり帰省なのだと思っている)だった。偶々車を新しくしたばかりだったので、遠乗りがしたいという気持ちも手伝って帰省を考えたのかもしれない。動機には親孝行だけではなく、不純なものも混ざっていたように思う。

 さて、前日に十二分に(?)親孝行をして、翌日は帰宅することにしていた。朝起き出して外を見たら、何と雪が降っているではないか。しかもかなりの激しい降り方なのである。昨日の好天からは予想もできないほどの天気の急変だった。朝食もそこそこに帰途に就くことにした。まさか高速道が閉鎖になることもあるまいと、タカをくくって出発したのだったが、途中から雪はますます酷くなって、高速道の入口に近づく頃には、ラジオのニュースで常磐道が閉鎖されたということを知った。明日は日曜だけど、高速道が再開される保証は無いと思い、実家に戻ることは止めて、とにかくこのまま一般道を家に帰ることにしたのだった。水戸から国道6号線に入ったのだが、そこから先は、早や渋滞が始まり出しており、あと、100km以上もあるというのに、長い渋滞が果てしなく続いているという状態となっていた。雪はますます酷い降り様になってきており、灰色の空からは、大粒の煤が果てしなく舞い降りて来るのだった。

 実家を8時過ぎに出発してから、3時間経っても中間点の土浦市には程遠いという進行ぶりだった。脇道に入ることもできず、ただノロノロと前の車の後を辿るだけだった。途中コンビニなどに寄りながら飲み物や食べるものを調達したりしたけど、狭い車の中では鬱憤を晴らす方法は無く、ただラジオと、カーステレオの音楽などを聴くだけだったが、それらも限界に近付いている感じがした。途中で、チエーンだけは付けておこうと一応は用意していたのを取り付けたりしながら、ようやく東京の中心部辺りに到着したのは、早や深夜は22時を過ぎていた。雪は20cmを超えて積もっており、道路脇の土手の吹きだまりには、足を入れると付け根までも潜ってしまうほどの雪の量だった。

 深夜近くになる頃から、今まで営業していたファミリーレストランやコンビニなどが、大雪のために営業を止めて店を閉めだしたのだった。そうなると、困るのはトイレである。自分の方は何とかなるとしても、家内の方はそうはゆかず、何処か営業している店がないかと、本道を逸れて脇道に入ってそれを探す必要を感じたほどだった。こんな時に、トイレつきの車があったらどんなに助かることだろうと思った。

 そのようなことを思いながらノロノロと進行していると、突然車がエンストしてしまった。何だろうと、懸命にキーを回すのだが、エンジンがかからない。よりによってこんな時にエンストとは!原因不明のエンストに困惑は極まるばかりだった。とにかくまだ入会もしていなかったJAFに連絡して、車を見て貰うことにした。ところが、到着までに1時間以上かかるという。開いている店もない中で、そんなに待つというのは厳しい話なのだが、車の中で待つしかない。暖房もラジオもステレオも完全ストップなのである。ようやくJAFの人が来てくれて、何と原因はバッテリー上がりだという。新車だったし、エンジンを掛けながら来たのだから、まさかバッテリーが上がるなんて考えもしなかったのだが、説明では、暖房の他にラジオやステレオを掛け過ぎて発電容量よりも使用量が上回ってしまっていたのだとのこと。もはや、やけくその気分だった。

 ようやく都心を抜けて、多摩川を渡り、自宅に着いたのは翌日の早朝の4時近くだった。雪など降らなければ、どんなに渋滞していても4時間もあれば着くはずの距離なのに、その時は何と18時間もかかったのである。後での公表では、東京都の降雪は23cmということだったが、自分の実感としては30cmを上回っていたのではないか。とにかくとんでもない大雪だった。それが、今日の雪は、それを超えるほどになるのかもしれないという。ま、今はどこへ出かけることもないので、どれだけ積もっても溶けるのを待つだけの話だけど、あの時の思い出は、まあ、忘れることはできない。

 さて、ここからは旅車の話となるのだけど、この雪に痛めつけられた体験はなかなか拭うことが出来ず、やがて突然の旅車の購入となったのである。住まいの近くに旅車の展示場があり、何となく興味を注がれるようになって、時々覗いていたのだが、この雪の体験を経たある時、気まぐれにそこへ寄った時に「そうだ、このような車なら、雪などに閉じ込められても大丈夫ではないか!」と思ったのだった。しかし、図体がでかいのでは、マンション住まいの今では置き場所がなく、扱いに困るというという問題があった。そこで、駐車場に収まる大きさで、普段の買い物などにも使うことが出来、トイレも使える車を探すことにした。はじめは本気ではなかったのだけど、何回か展示場を見ている内に、バンコンタイプ(マツダボンゴベース)の条件に叶う車を見つけ、購入を決断したのである。

この車は、長さが4m98cmで、天井に簡易ベッドが作られているもので、後部に小さなシンク(調理用流し台)がついていた。後部の座席を倒してベッドとして使用するタイプのもので、トイレはポータブルタイプで、それを使うスペースも用意されていた。必要最小限の条件を満たすものだった。これだと、借りている駐車場にも収まり、買い物などに出掛けても駐車に苦労することは無い。天井が少し高いので、目立つけど、それは仕方がない。ということで、普段の暮らしの中で使い始めたのだった。

 この車を使い始めて少し経って、気づいたのだが、この車をただ普通に使うだけで、あの大雪のような事態に備えるというだけでは、能が無いなと思ったのである。勿論、近所への遠出には、それなりの利便性を感じて活用してはいたのだけど、泊まりがけで出掛けるところまでは思い至らなかった。つまり、車で旅をするということまでは考え及ばなかったのである。何しろまだ現役で、数年後には定年を控えており、仕事には全力を傾注しようという考えも大きかった。自分なりに考えていた仕事の大きな課題もあったのである。

 それが、少し変わり出したのは、仕事の面で思いもしなかった部署に転勤を命じられ、その仕事に嫌気がさし、退職を考えるようになった頃からだった。組織の中にいる以上、自分で自在に職場を選ぶことは出来ないのだから、普通は素直に従うべきなのだろうけど、これから一大決心をして課題に取り掛かろうとしていた矢先のことだったので、無性に腹が立ち、だったら職を辞すべきと思ったのである。それで、上司にその旨を申し出たのだが、「石の上にも三年」などと言い包められて、結局退職は少し遅れることとなった。ま、そのことはくるま旅にも少し係わる話ではある。

 その頃から少し遠出の旅を考えるようになった。五月の連休などには、1週間ほどのくるま旅にも挑戦するようになったのである。そして、そこでの様々な出会いの体験が、自分の人生の新たな道を拓かせてくれたように思う。6年ほどそのバンコンでの旅を経験して、くるま旅への思いはますます広がり、そして深まっていった。そして仕事から解放された時には、くるま旅は我が終生の生きる術(すべ)の主柱となったのである。その後、なけなしの退職金を叩いて買った2代目の旅車も、早や12年目を過ぎようとしている。この車は気に入っており、終生の友としてどちらかがこの世の暮らしを終えるまで、一緒に生きてゆこうと思っている。

 思えば、我がくるま旅くらしの始まりの源は、20年前の2月の大雪にあったのである。今、窓の外に降り積もる雪を見ながら、人生などというものは、何がきっかけで道が変化するのか、しれたものではないなと思うのである。これを書いている間にも雪は降り続いている。これじゃあ、筑波山に登るのも暫くお預けだなと思いながら、雪国の人たちのご苦労を思ったりしている。

コメント
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