昨日(7/7)の朝、何とはなしにNHKのTVを見ていたら、「サキどり」という番組で、「お得で快適軽キャンパーの旅」というのが放映されていた。丁度自分たちとは一回りほど若いと思われるご夫妻が、軽自動車のキャンピングカー(本来はモーターホームというべき旅車)で手軽な旅を楽しんでおられるのが取り上げられていた。恐らく旅を始められたばかりで、丁度今はその面白さと楽しさの味わいの真っ只中におられると思われ、何とも微笑ましく拝見したのだった。引き続いて見ていると、終り近くになって、くるま旅の拠点としての「RVパーク」が取り上げられ、その例として山口県萩市下田万の道の駅:ゆとりパークたまがわが紹介されていた。この紹介に合わせて知人の町田編集長が登場されたので驚いた。町田さんは、以前から何かとお世話になっているお方だったからである。このRVパークについても、何年か前に、同じ意見を話し合った間柄でもあった。そのお方がこのテーマの番組でコメンテーターの役割をなさっておられるのは、真に正鵠を射た人選であり、さすがNHKだなと嬉しく思った。自分は、RV界やくるま旅に関する過去・現在・未来について、我が国でこの方ほどたくさんの情報と知見を持たれておられる方はいないように思っており、昨日のRVパークに対するコメントも大いに首肯できるものだった。
ところで、自分自身もくるま旅くらしの提唱者を自認しており、そのインフラの整備については、多大の関心を持っている。7年ほど前に「くるま旅くらし心得帖」を書いたのもその一つであり、リタイア後の人生を豊かにするための手だてとして、くるま旅くらしが有用であることを紹介したかったからである。しかし、これは出版社が倒産してしまい、初志は些か凋んでしまっている。現在もたくさんのガイド誌などが発行されているけど、くるま旅のハード面の紹介を中心に表面的な興味関心にとらわれた内容のものが多く、旅する者の内面を豊かにし、旅の質を高めて行くという切り口からの書誌が少ないのを残念に思っている。売り上げを伸ばすためにはやむを得ないのかもしれない。
旅というのは、観光などを中心とした単なる遊びの手段に過ぎないのかもしれないけど、自分の十数年来の経験としては、遊びというよりは学びという側面の方がはるかに大きいと思っている。そして学びという受け止め方からは、その内容を工夫し成長させてゆくことが大切ではないかと思っている。観光旅行の繰り返しでもそれなりの価値は大いにあるのだけど、それに一工夫加えることで、人生はもっともっと豊かになるのである。
さて、そのくるま旅のインフラなのだけど、これは本来、国が力を入れて整備すべき事項ではないかと思っている。何年か前、国交省観光庁の人が我が国の観光立国について語るのを聴いたことがある。それによると国の観光収入はかなりの有用性があり、特に隣国の中国からの観光客の来訪に大きな期待を寄せているという話があった。十三億超の人口を抱える中国からの来訪者は、政治の影響があるとはいえ、次第にその数を増しており、それらを受け入れる設備として宿泊施設の不足などの話をされていた。確かにそれもあるけど、自分の旅での実感としては、中国からの来訪者がレンタカーを使って移動しているのを散見している。あれが増え出したら、レンタカーがキャンピングカーのようなものに代わったなら、この日本国は一体どうなるのだろうかと思って、ぞっとしたのだった。日本国のくるま旅のインフラとしての宿泊機能は、道の駅と高速道のSA、PA以外は何もないのである。中国人だってより少ないコストでより多くの観光をしたいと考えるに違いない。とすれば、大勢の中国人がやって来た時、道の駅もSA・PAもパンクすることは必定だ。その前にマナーの問題など、きれいごとでは済まされなくなるに違いない。国の当局者は、世界全体がくるま社会になっていることの認識が少ないように思えてならない。観光バスに乗って、団体さんとしてガイドの旗を頼りに観光する人間ばかりが観光客ではない時代が直ぐ傍まで来ているのである。それなのにインフラの方は殆ど手着かずなのである。くるま旅は一部のマイナーな存在から、その姿を変えつつあると考えるべきではないか。
今回のRVパークは、その意味において大へん意義のあるチャレンジだと思う。国ではなく、地方行政と民間が力を合わせての取り組みだけど、大いなるエールを送りたいし、自分自身も是非萩を訪れてみたい。取り敢えず全国に9カ所、そして今年中に30カ所ほどに増えると聞いたけど、自分的には現在1000カ所近くある道の駅の、少なくともその半分くらいがRVパークを併設しているようになって欲しいと願っているし、更にRVパークの内容が利用者のみならず経営側にとってもよりレベルアップして行くことを希望したい。
ここで、5年ほど前に自分が全国の道の駅に向けてお願いしてみようとまとめた提言書を紹介させて頂きたい。この提言書の中では、RVパークではなく、モーターホームポート(=MHP)と呼んでいる。この提言書は、結局は送付しなかった。というのは、内容が利用者サイドからの一方的なものであり、道の駅サイドからの利点に触れていなかったからである。そして利点に触れるためには、基本的には個別に対処しなければならず、それは無理だと考えたからである。(道の駅の関係者の方の心に留めて頂ければ幸甚です)
<道の駅向けの提言書>
道の駅構内の有料簡易宿泊専用駐車場(MHP)の設置について
1.提言の主旨
わが国に車社会が到来してから久しい時間が過ぎようとしています。流通における物品輸送の核としてのトラック等の自動車を始め、経済活動に係わる各種の自動車はもとより、私的な目的での自動車の使用も日常的で必要欠くべからざるものとなっております。
これらの自動車の休息、或いは地域交流・活性化の拠点として、「道の駅」の設置が全国的に進んでおりますが、その意義は車社会においては極めて大きいものと考えます。もしこのような施設が設けられなかったならば、恐らく車社会の歪のような問題現象がより多く発生していると思われ、真に当を得た施策であると考えます。
ところで、この道の駅の活用に関して、現在はその目的に沿って無料の駐車スペースが提供されておりますが、これに加えて新たに有料の簡易宿泊専用の駐車スペースを設置頂きたく、提案いたします。
現在の道の駅の駐車スペースは、休憩や交流のための一時駐車用の他に、仮眠用としても活用されておりますが、現代の車社会においては、トラック等の運送業者のみならず、トラック以外の自動車を用いた商業従事者や自家用車を用いての旅(=くるま旅)をする者等が、宿泊場所として利用している実態があり、これらは漸次増加の傾向にあると考えます。
特に下名は、くるま旅を提唱する者でありますが、近年いわゆる団塊の世代と称される人々の大量の定年退職の時期を迎え、現役時代にはできなかった車を用いての旅のニーズが富に高まっていると思料いたします。これらの世代は、車社会が当然のものとして現役時代を過ごして来た人たちであり、今まで現役時代に果たせなかったくるま旅の夢を、時間的にフリーになったこれからの暮らしの中で実現しようと考える人は少なくないと思われます。
ところがいざ旅に出ますと、現状では、これら旅車を受け入れる宿泊環境(旅する者のくらしのベースは、年金を頼りとする場合が多いと思われ、よりコストのかからない安全な場所を希求)が見当たらず、多くの人が道の駅等に頼っている状況があります。しかし道の駅は、元々これらの人々を対象として設けられたものではなく、夜間は主としてトラック等運送業者の仮眠利用場所として想定されてつくられている向きがあり、旅の者の車は、騒音、排気ガス等で困惑する実態にあります。
また、くるま旅の者は、宿泊を前提としているため、一部の不心得者の中には、駐車場の長期使用やキャンプ様の使い方をしたり、洗面所を汚損させたりして、他の利用者に対して迷惑をかけている状況も散見されます。単なるマナーの問題だけではなく、無料の公共施設を使うことに対する安易感によるところもあるように思われます。
このような状況からくるま旅を目指す者にとっては、その宿泊受け入れ環境は極めて厳しい状況にあります。欧米諸国においては、くるま旅は旅の一手段として世の認知するところであり、それに相応しい受け入れ環境も整備されていると聞きますが、わが国においては、未だその考え方は一般化に至っておらず、一部の者の道楽的な所業の如くの理解に止まっている感じがします。
これからの世の中が、車社会を抜きにしては考えられないことを思えば、くるま旅という旅のスタイルは、我が国においても、欧米並みに一般化する可能性は高く、そのためのインフラ整備は不可欠ではないかと考えます。もし現状のままであれば、道の駅等公共施設での不具合事項の発生は後を絶たないものと思料いたします。
ところで、我が国の現状においては、新たな簡易宿泊専用の駐車スペースを確保することは、土地の確保においても或いは財政的な面においても困難性の高いものと思われます。それらの状況を乗り越えてその実現を図る方法として、先ずは既存の道の駅構内への併設を実現させて頂きたいと願うものであります。その具体的な展開に当たっては、道の駅の個々の状況に合わせて可能性を検討し、可否を判断することが必要と考えます。
簡易宿泊専用の駐車スペースを有料とするについては、宿泊のために必要な電源設備等を具備する必要があり、これら諸設備の維持管理のためのコストは、受益者が負担するのが当然と考えるからです。
尚、この提案では、有料簡易宿泊専用駐車場をMHP(Motor Home Port)と呼ばせて頂くことにします。以下にその提案の概要等について述べます。
2.MHPの必要性の背景
くるま旅とは、基本的には自動車を用いて、車内宿泊をしながらその目的を達しようとする行為を意味すると考えますが、それは、①業務用目的での車内宿泊と②私的目的での車内宿泊、とに大別されると思います。
①については、その代表的なものがトラック等輸送業に係わる人たちであり、トラック以外にも商業用の自動車を用いて移動を続けるケースが該当すると思います。これらのニーズについては、ある程度社会的に認知されているところでありますが、その実態としては、単に所定駐車場に留めた車の中で眠るに止まり、宿泊環境としては、かなり課題の多いものとなっています。すなわち、トラック等は仮眠用のスペースが車内に設けられてはいるものの、冷暖房等のため常時エンジンを駆けっぱなしの車が放置されている状況にあり、騒音と排気ガスの問題は、時と場所によっては、諸規制を上回る公害をもたらしている様にも思われます。
また、商業用の車の場合も大同小異であり、エンジンをかけたまま狭い車内で一夜を明かす旅の連続を強いられていることが多いようです。もちろん、然るべき宿泊施設を利用することが第一でありますが、経済的理由等でそれが叶わぬケースに対しては、何らかの快適性を備えた施設があっても良いのではないかと考えます。
②については、このところいわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちの大量定年退職の時期を迎え、そのリタイア後の過ごし方の一つとして、車を用いての旅を企画する人たちが急増しているという実態があります。この世代の人たちは、車社会を当然のものとして受け止めて現役時代を過ごした人たちであり、現役時には果たせなかった旅の夢を、時間に余裕ができたこれから、車を用いての旅として実現させてゆこうと考えています。これらの人たちの要望に応えるべく、それに適う旅車の製造も急増の傾向にあります。又、これらのくるま旅指向の人たちの多くは、年金暮らしを余儀なくされており、できるだけ少ないコストでより豊かな旅を経験したいと願っている様に思われます。
然るに旅の実際では、本来活用すべきオートキャンプ場等の専門宿泊施設は、料 金が高額に設定されているため、なかなか利用できない状況にあり、そのため無料の宿泊場所として、道の駅や高速道のサービスエリアなどに依存することを余儀なくされています。しかし、これらの場所の駐車スペースは、あくまでも休息と仮眠レベルで設置されており、くるま旅などを考慮したものではありません。
この様な現状から、①②の道の駅の利用者のために、有料ではあってもより車での宿泊に適った駐車スペースを設けることが、これからの車社会のニーズに応えるものと思料します。
3.MHPの要件
有料簡易宿泊専用駐車場の設置に当たっては、以下のような要件を満たす必要があります。この要件は、あくまでもトラックを除く自動車を用いての宿泊に関するものであり、有料スペースの利用を必要としない場合には、現行の仮眠レベルで支障はないと考えます。
①低料金(千円以下/1泊を目途)であること
ある程度の利便性と安全・安心を確保するためには、コストが必要であり、受益者負担の原則に当てはめる必要がありますが、収益性よりも公共性を重視するのが妥当と考え、1泊あたりの料金として千円以下を目途に設定されることを希望します。
②給排水施設(共同使用)があること
宿泊に関しては、給排水が不可欠であり、これが可能となるように設備を設置する必要があります。現行の施設に若干の手直しを加えれば十分可能と考えます。
③トイレ・手洗い所(共同使用)があること
これについては、現行の道の駅においては既に完備されており、新たな設置は不要と考えます。
④電源の供給設備があること
現代では、電気は如何なる場面でも暮らしには必要不可欠となっており、これに応えるために、有料で個別に料金の支払いができる設備を設ける必要があります。コイン等を投下することで必要な時間だけ電気を供給できる設備を、各駐車スペース毎に設置する必要があります。
⑤ゴミ処理施設(有料)があること
ゴミ処理の問題は、長期間の旅をする者にとって、かなりの関心事であり、適切な処理が望まれるところです。現状では不法な処理が多く見られ、各関係者を困惑させる状況が多発しています。利用者のマナーの悪さを議論してもさほどの効果は期待できず、MHPにおいては、有料にてゴミ処理を受付け、対処することが肝要と考えます。
⑥専用宿泊スペースとして必要な広さが確保されていること
これは基本的には旅車を対象とする場合の要件ですが、旅車にはオーニング(日除け)等の設備が付帯しており、これらのある程度の使用を容認する程度のスペースを、車の大きさに合わせて複数種類確保することが必要と考えます。
⑦共同炊事場(可能であれば)
②の給排水設備に併せて、共同で使用できる小規模の炊事場があれば極めて有用と考えます。くるま旅をする者の多くは、食事を外食に依存することなく、自車の中で調理して対処しています。この場合、炊事場がないと不心得の者はトイレ・洗面所等にて洗浄等を行い、一般の人たちに迷惑をかけているケースが散見されます。簡易炊事場が望まれる所以です。
⑧その他
*MHPのスペース全体を他の駐車場から差別するため、フェンス等で囲む必要がある。
*MHPへの車の入出庫は、無人の自動管理システムを取り入れ、省人化を図るものとする。
*個別の駐車帯については、その仕切りを線引きではなく、低い金網等の柵で行うようにする必要がある。
4.MHPのイメージとモデル
MHPの設置の可否や規模・形状は、現在の道の駅の夫々の状況によって全て異なるものであり、決め手となるようなモデルを示すことは困難ですが、基本的な要件を備えたものとして、取りあえずレイアウトと管理要領およびイメージ図を別添します。 (ここに掲載するのは省略しました)