今日はブログの投稿は休もうと、ワールドカップの準決勝戦、スペインとドイツの一戦を見ていました。ワールドカップは日本の活躍があって、帰国したそのメンバーのその後の行く道などが毎日取り沙汰されている状況で、もはや日本国内では今大会は遠い過去のものとなってしまっている感じですが、肝心の本番の方は、これからが頂点を極める戦いが行なわれているのです。毎度のことながら、この国の軽薄なムードに疑問を感じながら、反発心も手伝っての観戦なのでした。
私の予想では、優勝候補の一角だったアルゼンチンを圧倒的な差で葬ったドイツの方が有利ではないかとの見方でした。アルゼンチンとのゲームでは、荒削りなムード主義的雰囲気のある南米アルゼンチンに対してクールで組織的であり、且つ火がつけば怒涛の攻めを実現できるドイツチームのパワーを、これは只者ではないな、やはりヨーロッパに覇を為すことの多かったゲルマン魂の表れなのかと思ったのでした。
スペインは無敵艦隊で世界に覇をなしていたのは有名ですが、やがてはイギリスの艦隊に敗れ、それ以降は尻すぼみ状態で今日に至っている感じがあり、サッカーにおいてもその影響は拭われないのかな、などとド素人の感覚での考え方で、この一戦も最終的にはドイツには敵わないのではないかとの見方でした。
しかしゲームが始まると、不思議なことに攻めているのはスペインの方ばかりで、ドイツといえばまだ点も取っていないのに、力を入れているのは守備の方ばかりで、どうも予想とは違う感じなのでした。確かに守備の方は完璧に近く、スペインの攻めにはかなりの無理があり、シュートは打っても殆どが高い壁に弾き返されており、とても点が入るとは思えませんでした。恐らくこれはドイツチームの作戦であり、後半になってからの攻撃に備えるための戦術を展開しているのではないかと思ったのでした。
でも、観戦している側としては、今一面白くなくて、スペインに応援したい気分が次第に強くなってきました。攻めないでいて点を取れるゲームなどありえず、本物の戦の場合だって、守ってばかり居て偶(たま)の奇襲攻撃だけで勝利を得たなどという話は聞いたことがありません。信長の桶狭間の今川攻めだって、最初から守りの精神など欠片もなかったのですから。「攻撃は最大の防御なり」というのは、私が若い頃に係わったバスケットボールにおいても当然の考えでした。
ま、サッカーはスポーツゲームなのですから、実力があればしっかり守りきって、一気呵成に相手の陣容を崩すという戦術があっても不思議ではないと思います。しかし、私が思うのは、そのような戦術が通用するのは、自分たちの実力が相手のそれを相当に上回っているという場合だけです。しかし、実力というのは実際にゲームをやって見なければ示されないわけですから、単に過信しているだけということになる危険性があるように思うのです。その意味において、守りを核に置くという戦術には、勝つためにはある種の限界を内包しているように思います。日本チームの限界もそこにあったような気がします。
守りを主体とした場合の勝利への危険性は二つあって、その一は攻める相手側が次第に守りを崩すのに慣れてくること。もう一つは守りの意識が攻撃への切り替え意識と動きを弱めるかも知れない、特に切り替えてもなかなか思うようにならない状況の場合に、不要な焦りを引き出すことにつながるということです。
そのような思いを抱きながら観戦していたのですが、前半は懸命に攻めるスペインを軽くいなしながら、シュート数は少なくてもドイツの方に余裕があると感じました。この分だと、作戦は成功への道を辿っているかも知れないなとも思いました。普段のヨーロッパのサッカー界の動きなど私には全くわかりませんので、真に感覚的な見方なのですが、前半のドイツの動きには、それを感じさせるものがあったのです。さて、後半はどうなることだろうかと、前半押さえていたドイツの怒涛の攻撃が見られるのではないかと、期待は大きく膨らんだのでした。
ところが後半が始まっても双方の戦いぶりは一向変わらず、むしろスペインの方が次第にドイツの守備に慣れてきたようで、却って戦いの魂に火がついた感じがしてきました。双方とも実に良く走り、よく守って、組織的な動きも見事なのですが、スペインの方が活力がより上のように感ずるのです。チームメンバーの名前も力も普段サッカーを見ていない私にはさっぱりわかりませんが、トータルとしてみていると、攻めに関してはスペインの方がチャンスが多い感じとなってきているのです。
一度、決定的とも思える場面があって、ドイツはひやりとしながらボールをクリアーしたのでしたが、そのころからもしかしたらこれはスペインが行くのかも知れないぞと思うようになりました。そしてその少しあと、コーナーキックから来たボールを、スペインのメンバーはほぼ一丸となって(勿論その中に得点を挙げた選手が居たわけですが)ゴールにボールを押し込んだのでした。スペインチームのもの凄い情熱を感じました。見事なゴールでした。
もうここまで来ればドイツにはチームを挙げての反撃ラッシュしかありません。さて、どうするのかと見ていたのですが、このチームはあくまでもクールで、蛮勇のような行動をとる選手は見当たらないようでした。理詰めの攻めを繰り返すのですが、相変わらず攻めの精神を忘れないスペインチームは、その後も安易な守りに入ることはなく、ついにその1点を守りきったのです。
なるほど、サッカーというのはこのようなスポーツなのかと、その最高峰のゲームを存分に楽しませて貰いながら思ったのは、勝利というのは計算し過ぎると却って反対の結果が招来するという恐さでした。逆に言えば、計算など弾き返す情熱が最後の勝利を獲得するということかも知れません。観客は好き勝手のコメントができるので、それは結果論だよということになってしまうのでしょうが、この一戦を観ていて、私が思ったのはやはり攻撃は最大の防御であり、勝利には計算式は当て嵌まりきれないということでした。ドイツチームが最初から歯をむき出してゲームの主導権をものにするような作戦をとったなら、結果は変わっていたかもしれません。アルゼンチンには的中した作戦も、あまり計算し過ぎてしまうと、神通力を失うということなのでしょうか。
真に贅沢な世界最高峰のゲームを観戦しながらの感想でした。それにしてもいいゲームだったなあ。